阿修羅(M-ARTS リアル仏像 復元極彩色仕様・廃盤)

これまで仏像ワールドの「リアル仏像」ブランドの阿修羅像を特別Ver.も含めて3体を採り上げて参りました。今回は「リアル仏像」阿修羅のうち、極彩色に彩られた〝赤い阿修羅〟のお話です。

御所内で木箱に入っていた〝赤い阿修羅〟が発見されました。
これまで東松山のロジスティックセンター(旧本社)からたくさんの仏たちを連れ帰ってきましたが、飾り棚のキャパシティーに限界があり、ここ数年は〝箱入り仏〟状態で山積みされています。その〝山〟の中からの発見です。

これまで紹介してきた阿修羅像は飾り棚に常時・展示されていた者たちで、〝赤い阿修羅〟は修理のために外遊を経て、山の中に収まったものです。

何故、木箱に収まっているのかは失念してしまいましたが、通常箱よりも何となく高級感漂う印象でございます。

 

主張し過ぎることの無い、淡い焼き印によるブランド名とシルエット。

 

思い込みかもしれませんが、この「阿修羅」という文字は、あの三面六臂の姿のイメージが想起できる芸術の様に感じます。

この木箱に同梱されている説明書には、リアル仏像「阿修羅」に3つの仕様があることが示されています。

 〈リアル仕様1〉現存の阿修羅の雰囲気を再現した仕様。(破損部分は復元)
 〈リアル仕様2〉現存状態から退色以外の経年劣化を排除した復元モデル。
 〈復元極彩色仕様〉造像当時の鮮やかな極彩色を蘇らせた復元モデル。

これから実物の画像をご覧いただきますが、ネット上では現在具体的かつ正確な情報がほぼ無い

〈復元極彩色仕様〉造像当時の鮮やかな極彩色を蘇らせた復元モデル。

の全貌が、此方です。

阿修羅はペルシャにおいて大地に恵みを与える太陽神でした。しかしインドでは熱さを招いて大地を旱魃干上がらせる太陽神であり、常にインドラ(帝釈天)と戦う悪の戦闘神とされていきます。これが仏教では、釈迦を守護する神に転じています。

大和国興福寺の阿修羅像は、造像当初は真っ赤に塗られていたことが判っています。
全身を覆う朱色(赤)は火焔を象徴するもので、阿修羅が鬼神であったことに由来しています。

                     (右側の画像は「M-ARTS」様HP「阿修羅特集」より)

 

360度、転回させてみましょう。

 

 

2009(平成21)年開催の阿修羅像を契機に、九州国立博物館に設置された文化財専用の大型X線CTスキャナを用い、九州国立博物館などの研究チームがX線CTスキャン画像の解析調査を実施しました。三次元データ解析を行いながら2年前から研究準備を進めてきたそうです。
 ・心木は虫喰い侵食が見られない、良好な状態である。
 ・胸部の亀裂は表面に留まっている。
 ・鎌倉時代と明治時代に実施された修理痕跡の明確に把握できた。
 ・三次元データから塑土原型像を復元できた。
   →像内面の凹凸を反転させ、原型像復元に成功した。
    原型像は厳しい表情をしていたことが判明した。
 ・見えない部分を可視化して観察・理解できる新しい展示品の試作が開始された。
といった成果を得ることができたそうです。

 

阿修羅三面のうちで、正面の少年相が一番年長の段階を表現していると考えられています。
表情としては〝あどけなさ〟が残りながらも、眉を寄せながら遠くを見る凜とした眼差し、そして口髭・顎髭が施されています。

リアル阿修羅・極彩色では眉を〝一発勝負で描く〟様で、これが表情の個性になっています。
目の表現は、彩色職人さんの中でも一部の方が担当されているそうで、こちらも〝個性が際立つ〟箇所になります。
口髭・顎髭も個体差が生じる様で、当家の極彩色は若干細め、HP掲載の見本・極彩色は太めの髭になっています。

           (「M-ARTS」様HP「阿修羅特集」より)

 

折角、正面のアップ画像を観ているので。
ちょっと角度が変わることで、同じ像にもかかわらず表情が別物に見えてしまいます。
正面から観ると、左右の脇面はいずれも真横ではない後方を向いて付けられているため、正面の顔を観ることの妨げにはなっていません。

正面の顔の耳は通常に付いていますが左面の右耳、右面の左耳が省略されているため、三面の調和が整っています。

菩薩や天部に見られる「宝髻」(ほうけい)が、3つの頭部の髪の毛をそれぞれ結い上げて美しくまとまっています。

本物の毛髪は篦(へら)で捻りも加えながら筋を入れており、毛筋に沿って截金(きりかね)をいれているかの様な金色が注されています。リアル阿修羅・極彩色も、この表現をイメージした彩色がなされています。

 

2009(平成21)年に開催された「国宝阿修羅展」の巡回の狭間に、阿修羅像をはじめとする9体の仏像が、文化財用大型X線CTスキャナで撮影されたそうです。
この時の計測から9年後の2018(平成30)年、朝日新聞出版より興福寺中金堂落慶記念として興福寺監修『阿修羅像のひみつ』が発刊されました。
興福寺阿修羅像の研究に携わった8名の研究者の方々による多角的な研究がなされており、また非破壊による文化財の分析結果も興味深いものとなっています。
ご興味をお持ちの方は是非ご一読ください。

リアル阿修羅・極彩色の表情と、朝日選書『阿修羅像のひみつ』掲載の原型CT画像を見比べてみましょう。
我々が〝見慣れている〟阿修羅の正面の顔の下には、「両眉の連なった、一見冷たい表情」がありました(右側の画像)。

右面の表情は目尻をやや吊り上げ、下唇を噛み締める〝怒りの表情〟を浮かべています。
右面は三面の中で一番若い表情と言われ、目尻を吊り上げて〝鬼神の表情〟をまだ残していると考えられています。
仏像は右回りで拝観するのだそうで、左面よりもこちらの右面を先に見ることになるといいます。
リアル阿修羅・極彩色もしっかりと下唇を噛んだ表情になっていますね。

阿修羅の右面の下には、「口の開いた子どもっぽい表情」がありました(右側の画像)。

左面の表情は唇を引き結び、じっと何かに〝耐える表情〟を浮かべています。
「仏像の拝観手順」右回りで右面から後頭部、左面へと視線を移すと〝阿修羅の怒り〟が薄らいでいくかの様です。
阿修羅の左面からは「忍耐」あるいは「慈悲」など複雑な表情を感じ取ることができると言われています。

リアル阿修羅・極彩色は〝お姉さんみたい〟な表情になっていますね。

阿修羅の左面の下には、「眉、眼のつり上がった強い表情」がありました(右側の画像)。

三面いずれも現在の「表の表情」と「下の表情」に著しい相違があることが判りました。
「何故、表情が変更されたのか?」でいろいろな考えが提起されていますが、願主の光明皇后(藤原光明子/安宿媛:あすかべひめ)の好み(考え)・美的感覚ですよ(笑)。

正面の顔からすると〝後頭部〟にあたるところを中心とすれば、
 左側の忍耐の表情、
 右側の威嚇の表情
が対照的に見えます。リアル阿修羅・極彩色でも本物を鑑賞することで得られる印象を感じることができます。この感覚、すっごく楽しいのです。

阿修羅の三面の表情は、観る人によって様々に受け取られており、これがこの像の魅力となっていると評価されています。今回はリアル仏像を扱っていますが、イSム様のインテリア仏像は、擬似的ではありますが身近に仏像の魅力を堪能できる、素晴らしい〝遊び相手〟なのです。

 

ところで、明治時代に撮影された写真では六臂のうち、
 ・左側の第三手(腕)は、肘から先の前腕部・手首が欠損
 ・左側の第一手(腕)は、掌が正中線よりも左側に傾いている
 ・右側の第一手(腕)は、肘から曲がった前腕部の先が欠損
していたことが判っています。

市場に流通している阿修羅像は、だいたい腕が修理された後の姿をモデルにしています。

 

カッコいいので、リアル阿修羅・極彩色の見本版の画像も並べさせていただきました。

                            (「M-ARTS」様HP「阿修羅特集」より)

2009(平成21)年開催「国宝阿修羅展」を契機として、九州国立博物館に設置された文化財専用の大型X線CTスキャナを用い、九州国立博物館などの研究チームがX線CTスキャン画像の解析調査を実施しました。三次元データ解析をおこないながら2年前から研究準備を進めてきたそうです。

・心木は虫喰い侵食が見られない、良好な状態
・胸部の亀裂は表面に留まっている
・鎌倉時代と明治時代に実施された修理痕跡の明確に把握
・三次元データから塑土原型像を復元
  →像内面の凹凸を反転させ、原型像復元に成功。
   原型像は厳しい表情をしていた。
・見えない部分を可視化して観察・理解できる新しい展示品の試作が開始

X線CTスキャン画像の解析および内部の芯木の復元実験により、明治時代の修理(1902~1905:明治35~38)において、両腕を再接合して第一手が合掌手に修復(正面より左寄りで)されたことが判りました。造像時の姿が合掌の姿勢であったことが妥当と推定されています。

興福寺西金堂の八部衆・十大弟子像のうち、ほぼ全身が残存する13体を対象に使用木材の解析が行われました。うち12体の芯木はいずれも檜材(ひのきざい)であったことが判明しました。
CTスキャン調査で得られた芯木内部密度データと、木目の特徴から樹種の特定がなされ、阿修羅だけが檜の他、
 ・腕…杉
 ・最前部の左腕手首から先…桐
であることが判明しました。
腕の先の部分はX線の照射範囲が狭くなってしまい、解析できたのが前側の左手首だけだったそうですが、他の手首5本も桐材が用いられている可能性が推定されています。

 

さて、リアル阿修羅・極彩色の〝腕の付き方・拡がり方〟を観ていきましょう。

まずは左側から。

 

次いで、右側から。

 

左右3本、計「六臂」にはそれぞれ腕釧(わんせん)・臂釧(ひせん)が装着されています。
赤い身体に金色の装飾は見事に映えていますね。

 

正面から「合掌」の腕に注目してみましょう。

当家のリアル阿修羅・極彩色は〝ほぼ中心線〟で合掌している様に見えます。

観る角度を変え、下から見上げてみました。
若干、中心線からズレていますね。まぁ、これも個体差=個性ですな。
んっ?合わせた指の間から、胸飾りの金色が見えていますぞっ。

拡大して観ました。
左手の指がちょっとだけ上になっています。
指を合わせた隙間から、間違いなく胸飾りの金色が見えています。
親指は合わさっているのでしょう。手首はまぁまぁな隙間がありますね。

こうして観ると、掌(てのひら)をピッタリ固定したのではなく、両腕を装着する際に手のひらを合掌させていることが判ります。
角度だけでなく、合掌の形態(手のひらの合わさり具合)も微妙な個体差が生じているのですね。

 

左の第三手には、大要を象った円盤状もしくは半円状の「日輪」(にちりん)を持っていたと推測されています。

 

右の第三手には、月を象った円盤状もしくは半円状の「月輪」(げつりん)を持っていたと推測されています。

因みに、当家のリアル阿修羅・極彩色は2011(平成23)年3月11日の東日本大震災の揺れは乗り越えたのですが、片付け・移動の際の不注意で「右の第三手」を折ってしまい、指は欠損してしまいました。廃盤にはなっていたものの、幸いにも修理は可能であるということで、中国の工房において手首から先を付け替える改造手術を受けてきました。
写真からも見てとれるように、改造していただいた右手の方が艶やかになりました。

 

話を戻しまして、東アジアの阿修羅像はいずれも日・月を持った表現されたているのだそうです。
インドの古代神話において、阿修羅が須弥山の下の大海の神だった時、天上の神だった帝釈天と凄まじい闘争を繰り広げたといいます。その戦闘で阿修羅は両手に太陽と月を掴んで日食・月食を引き起こし、帝釈天に挑んだのだそうです。

左の第二手には弓を持っていたのではないかと推測されています。
各指の細やかな動き、そして爪の表現がリアルです。

右の第二手には矢を持っていたのではないかと推測されています。
こちらも指の動きと爪の描写がリアルです。

鎌倉時代の成立である承久本「北野天神縁起絵巻」に描かれている阿修羅は弓矢を持った姿です。弓矢は武器の代表、戦闘神のシンボルとされています。

 

胸元には金色の瓔珞(ようらく)が輝いています。赤い身体に似合っています。
左肩から右脇下へ斜めに掛けられている帯状の「条帛」(じょうはく)が金で縁取りされた緑色で表現されています。
この条帛に〝枝の付いた花〟が散っている模様が施されていて、幸い本物にはこの模様が少しですが見えているそうです。
リアル阿修羅・極彩色には条帛の襞の中に、しっかりと〝枝の付いた花〟が散らされています。

 

臂釧(ひせん)も、本物を参考にしながら詳細に表現されています。

 

では次にリアル阿修羅・極彩色の背面に廻ってみましょう。

肩に纏っているエメラルド・グリーンの布は、前方に垂れていたと推測されていますが、どのような形態であったのかは判っていません。

条帛(じょうはく)の背中部分にも、金色の縁取りと〝枝の付いた花〟が散らされています。

 

下半身に纏っている「裙」(も)は、裳(も)や腰裳(こしも)とも呼ばれる、巻スカート状の長い布です。
本物でも巻スカート上で、「宝相華」(ほうぞうげ)の模様はハッキリと見えています。
本物を一見すると、巻きスカートは白く見えますが、顔料の残痕状況から赤地であったことが判っています。
宝相華の表現も、表面に残っている顔料に基づいて再現されているそうです。

本物に基づいた模造の製作事業では、光を当てながらルーペを覗いて色の粒子を探索していたのだそうです。最終的に裳の折り返しの模様が一部、どうしても不明だったことを除外すれば、90%に近い復元がなされたと言われています。

 

 

 

リアル阿修羅・極彩色も、本物の模造製作事業で判明したデータに基づいて製作されています。
ウエスト周りの折り返し部分が、風にたなびく軽やかな躍動感を持たせつつ、極めて細やかに模様が表現されています。その造形が心を奪われる様な美しさなので、画像を多めに載せてみました。

「宝相華」の再現具合もこれまた素晴らしいので、臀部から膝のあたりまでの裳を拡大してみました。

本物に基づいた模造の製作事業で行われた、色の粒子を観察したところ、肌の色も、裳の色も同じ様な朱色であったことが判っています。
本物の模造製作では、肌の色は少し沈んだ色を選んで塗られ、裳の色とは区別をつけたといいます。
リアル阿修羅・極彩色では、肌・裳の色は同じ赤色です。

足に履いているのは「板金剛」(いたこんごう)と称されるサンダルです。

こうして見ると何の違和感も無い足元の画像ですが、リアル阿修羅・極彩色の足首にもストーリーがあるのです。
イSム様のメール・マガジンの取材でブランド・マネージャー様がお越しいただいた際、
 「足首にヒビが入っていますよ」
と衝撃の指摘をしてくださいました。
毎日見ていたのに、気付きませんでした。
日を改めて、修理をお願いしました。
どちらの足首だったかはもう失念してしまいましたが、修理が済んで帰ってきたこのリアル阿修羅・極彩色は、暫くすると又しても足首にヒビ割れが生じていたのです。
指の修理も合わせると、再三の修理相談をお願いしました。
ブランド・マネージャー様からは「新しい物に替えちゃいますか?」というご提案をいただいたのですが東日本大震災を乗り越え、2度の中国への渡海(手術)を経ていることもありましたので、「有り難いのですが、2回中国から帰ってきたので〝思い入れ〟があるのです。これを修理してください。」とお願いしたのです。
3度目の修理を終えて戻ってきた時から〝箱入り仏〟の仲間入りをし、今回の紹介のために〝箱入り仏〟の〝山〟の中からの掘り起こしました。
また足首にヒビ割れが生じることを嫌うので、間もなく木箱の中に戻ってもらいます。

足下の洲浜座(すはまざ)は、茶色と緑のコントラストで彩られています。

 

 

今回で「リアル仏像」シリーズの阿修羅の単独記事は最終回となります。
今後は「イSム」ブランドの阿修羅についての検証に取り組んで行きたいと考えています。
阿修羅は人気の造形ですからね、「掌」(TanaCOCOROシリーズ)の阿修羅も数種類、存在しています。時間をみつけて、彼らについても考察を加えていくつもりです。

 

ほら、楽しそうだと思いませんか?

 

 

 

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