イSム様のTanaCOCOROシリーズにおいて、2011(平成23)年11月に発売された「空也上人」のお話です。慶派仏師が手掛けた彫像の製品化が一つの特徴でもあるイSム様において、当時としては初の〝人物肖像〟を対象とした作品でした。有名な彫像ではあるものの、まさかインテリア仏像(仏像?)のラインナップに加わるとはなかなかな衝撃でした。とは言いながらも出来は本物を想わせるリアルな造りで、TanaCOCOROシリーズ(小さいサイズ)ではあっても充分な迫力を有しております。
口から出てくる・・・がとてもリアルに再現されています。
全体像はこの様になっています。
六波羅蜜寺・宝物館に居る「空也上人像」(ほぼ)そのままの姿です。
放っておくと、歩き出してしまいそうな程、生々しさを醸し出している像です。
そんな空也上人に360度、転回してもらいましょう。
空也は903(延喜3)年頃に生まれ、972(天禄3)年9月10日に京都東山の西光寺(さいこうじ)において70歳の生涯を終えた僧侶です。
20~30代にかけては在俗の仏教信者・優婆塞(うばそく)として各地を巡り歩き、人々の為に道路整備や水路築造、野原に打ち棄てられた骸(むくろ)を供養するといった活動をしていたといいます。
20歳を過ぎた頃、尾張国・国分寺において沙弥(しゃみ)として出家し、自ら「空也」と名乗りました。当時の「沙弥」は官許の得度手続きを経ない、民間の出家者を指す呼称でした。〝空〟という仏教における根本概念を表す字を選んだのは、菩薩の道を進む決心をしたものと推測されています。
948(天暦2)年、空也は46歳の時に比叡山延暦寺において正式に得度し、天台座主・延昌のもとで大乗菩薩戒を受戒しました。この際「光勝」の僧名を授かったにもかかわらず、沙弥名・空也を名乗り続けて民間の仏教者としての姿勢・活動を続けました。
「空也上人像」は首から鉦(かね)を下げており、右手に鉦を叩く撞木(しゅもく)を握り、左手に鹿の角を付けた杖を持ち、草鞋を履いて歩いている姿で表現されています。
腹の前にある茶色い部分が「鉦」です。
正面からだと判り辛いので、
ちょいと角度を変えると、「鉦」の形態が判り易いですね。
反対側(左側)から観ると、空也は少々腰が曲がっている様ですね。
正面や右側からだと、しっかり真っ直ぐ立っている様に見えるのですがね。
著者について不明な『打聞集』(うちぎきしゅう)の長承3(1134)年古写本には、蔵人所に藤原伊尹(ふじわらのこれただ)訪ねた折、そこに居合わせた余慶(よけい)の一時間ばかりの加持祈禱を受けて、曲がっていた臂(かいな:肩から肘までの腕)を延ばすことができるようになったという話が記されています。空也は幼い頃に母親の癇癪によって腕に怪我をしたといい、その負傷箇所がやや回復したというのです。
若い頃より各地を巡歴し、また厳しい状況の中での生活・宗教的活動を続けてきたことでしょうから、身体の状態も不調を抱えていたことが推測できます。
決して頑強な体軀ではありませんが、平安京内の市中において仏事と利生の業を行う志の崇高さで大地を踏みしめている姿が見事に表現されています。
空也没後のおおよそ100年ののち、康勝(運慶4男)が六波羅蜜寺に伝わる「空也上人像」を製作することになるのですが、どういった情報に基づいてこの「空也上人像」の造形を定めたのかは、非常に興味深いところです。
左手で握っている〝鹿の角を付けた杖〟について、以下の様な挿話があります。
空也が山城国・貴船山で修行していた際、懐いた鹿がいたそうです。
空也はこの鹿が姿を見せることを楽しみにしていたのですが、ある時から鹿が姿を見せなくなってしまいました。気になって方々を探した空也は鹿の角・皮を手にした狩人と出逢い、事情を話して鹿の角・皮を譲り受け、角は杖の先に装着し、皮は袋として身に付け、いずれも生涯にわたって愛用したといいます。
出典は失念してしまいましたが、空也がこの鹿の為に「南無阿弥陀仏」と唱えたところ、その称名が小さな仏の姿となって飛んでいったといいます。
「南無阿弥陀仏」の6字が小さな「阿弥陀如来」6体に変わった様子を針金で繋ぎ、開いた口から出たかの様に可視化しています。
下から見上げる視点で、小さな阿弥陀如来が飛んでいく様をご覧下さい。
この画像は、まるで目が潤んでいる様に見えます。
この画像も、鹿の為に泣いている様に見えてしまいます。
うぉ、この空也も涙を浮かべていますな。
この姿で「空也上人像」を製作した康勝も凄いのですが、それを忠実に再現するイSム様の技術もまた素晴らしい。
楽しくて、阿弥陀如来が飛んでいく様子の画像をたくさんあげてしまいました。
「コエカタマリン」を使わず、声を物質化できる様に修行をしましょうかね。
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