これまでイSム様のTanaCOCOROサイズ「制多伽童子」の初版・二版を紹介してきました。〝八大童子がひとりぼっち〟ということで、早く仲間が欲しいと思っていましたら2020(令和2)年9月、遂に「矜羯羅童子」が発売されました。この発売に合わせ、2014(平成26)に販売終了、2017(平成29)年に100体限定再版したところ即時完売となった「制多伽童子」も100体限定でしたが2度目の復刻販売がなされました。
2020(令和2)年の矜羯羅童子発売・制多伽童子再版の前、イSム様のロジスティックセンターを訪れた際に現物を拝見させていただいたことは、以前「活動の覚書」で触れた通りです。
確かに制多伽童子の背が低いのですが、並べ方によってだいぶ2像の身長差が際立ってしまいました。実際にはここまで差はありませんがね。
発売日後に改めて迎えに行った訳ですが、その日から気が付くと1年半程の時間が経過してしまいました。ということで、連れ帰った「矜羯羅童子」の姿を観て参りましょうか。
高野山の八大童子は、鎌倉時代の仏師・運慶の傑作として知られており、平安時代後期に制作された不動明王の眷属として造られたといいます。
そして、この八大童子は 京都・醍醐寺が所蔵する作者不詳『四家鈔図像』(しかしょうずしょう)の白描「不動曼荼羅」の系統の図像を典拠としていることが指摘されています。
不動明王を中心に、八大童子としての矜羯羅童子は「西」の方位に配されていたと考えられています。
「童子」ですから、制多伽童子と同様に〝ぽっちゃり〟感が伝わってきますな。
いつもの如く、くるくるとまわっていただきましょう。
髪の毛を結うことはせず、垂れ髪(おかっぱ頭)にしています。
毛先が渦を巻いていて、頭部のアクセントになっています。
冠を被っている訳でもなく、頭髪を逆立てるでもない。でも八大童子の中では個性となるヘア・スタイルになっています。
顔は、本物よりも面長にデフォルメされており、カッコ良くなっています。
瞋目(しんもく)とは言われていますが、それほど眼を怒らせている様には感じません。
口は閉じていますが、口唇が可愛らしい表現になっています。
本物ですと〝への字〟の唇で、15歳設定なのに表情が老けて見えてしまいます。
本物と比べると、こんな感じ。
『聖無動尊一字出生八大童子秘要法品』(しょうむどうそんいちじしゅっしょうはちだいどうじひようほうひん)によれば、矜羯羅童子は「形如十五歳童、著蓮華冠身白肉色、二手合掌、其二大指與頭指間、横挿一股杵、天衣袈裟微厳飾」と説かれています。
高野山八大童子の矜羯羅童子は、「蓮華冠」を被っていませんが、その他は『秘要法品』にある状態と容姿が合致しています。
視線は、左前方へと向けられています。
身体は「白肉色」、リアルな肌色です。
本物は経年によって肌色が擦れて剥がれたり、退色したところもあるのですが、イSム矜羯羅童子は退色再現はなされているものの、15歳ならではの溌剌さを感じさせる明るい肌色がベースになっています。
おぉっ!
当御所に連れ帰った矜羯羅童子、目が潤んでいるっ!
これまでの矜羯羅童子の画像を振り返って見ると、確かに涙を浮かべているかの様。
艶有りの塗料を注したりなぞ、しておりません。
ロジスティックセンターから連れ帰ったままの状態ですよ。
涙目の理由・原因は不明ですが、これも一種の〝怪奇現象〟なのでしょうかね。
これまで、いろいろとありましたので、これが怪奇現象だったとしても、まったく怖くはありませんの。
むしろ、他には見られない特徴・個性で喜ばしい限りです。ホントに。
本物の目は、虹彩(こうさい)を墨で塗り、その縁取りが朱・墨でなされています。
上半身を右手側から観ています。
頭髪、ヘルメットを被っているかの様で、生え際が判りません。でも毛先のくるりくるりがそのまま装飾となっていて、お洒落な佇まいになっています。
目立ちませんが、もみあげが力強く下に向けられています。耳も長いです。
後ろ髪も〝外ハネ〟的になっていて素敵ですな。
汚れ・剥がれの様子を表現するために色が乗せられていますが、顔と胸元の明るい肌色を〝殺さない〟絶妙なバランスなので、本物よりも明るい色合いになっており、若々しさが見事に表現されています。
腕や腹のあたりは汚しが強めですが、条帛の緑を少々強めにして上半身全体の色合いバランスが整えられています。
胸元に瓔珞(ようらく)が装着されています。錆が浮いたことをイメージしてか緑青が注されています。この緑系の彩色が、条帛の緑と調和しています。
後頭部から観ています。
なかなか本物をこの角度で観ることはありませんからね。インテリア仏像を連れ帰ると可能になる遊びですな。
ホントにヘルメットみたいな頭髪になっています。
毛先はまとまった形で波打っています。
右肩から背中をまわり腕にかけて緑色の天衣(てんね)が懸かっています。
条帛は左肩の前で結び目をつくり、背中をまわって右脇下に達しています。
2段になっている臂釧(ひせん)は、本物の上段が緑青、下段が朱色になっていますが、この画像で見る限り、イSム矜羯羅童子はそこまで色分けをしていませんね。
胸の前、中央で合掌した手では、合わせた親指・合わせた人差し指の間に黒い独鈷杵を挟んで持っています。
制多伽童子ほどではありませんが、腹まわりのプクッとした感じがあります。
右斜め下から合掌した手と顔を見上げています。
顔にピントが合っているため、合掌している手元がぼやけてしまいました。
ほぉら、先ほどは左目が潤んでいましたが、こうして角度を変えて観ると右目にも潤いが確認できますね。
コレっ、本当に加工したのではない、連れ帰ったままの状態なのです。
表情が、より一層〝生々しい〟ものになっていますな。
顔があると、どうしてもピントが顔に合ってしまいますので、顔を半分にしてみたところ、右と手元にピントを合わせることができました。
腕の彩色は、時間の経緯をリアルに感じさせる秀逸な仕上がりです。
天衣は本物に準じて緑色です。
条帛には見え難いのですが、赤地で唐草風の小さな文様が施されているのだそうです。
本物だと画像では独鈷杵が右側に傾いている様に見えますが、イSム矜羯羅童子が手にする黒い独鈷杵はほぼ水平になっています。ここは傾いていないところが嬉しいですね。
右側斜め下から見上げ、独鈷杵を持つ合掌の手にピントが合いましたよ。
右肘あたりの擦り傷の様な状態があるのも、〝本物〟感が出ていて嬉しい加工ですな。
本物ですと、顔・胸元が退色など汚れが顕著なのですが、イSム矜羯羅童子は逆に本物の汚れが強いところを明るめの彩色とし、薄い汚しで矜羯羅童子の表情が明るいものとしています。
先に触れた様に、少々面長になっていますので、本物が醸し出しているどっちり感よりもだいぶ可愛らしくなっています。
制多伽童子のやんちゃな〝ポッコリ腹〟に比べると、だいぶスッキリしています。
まさに、子ども(童子)としての膨よかさとして程良きバランスの質感ですね。
右肩・左腕に掛かりながら下方に垂らしている天衣は緑色、右腰脇で結び目をつくる腰布もほぼ同じ緑色です。
ちょいと角度を変え、左斜め前から観ています。
本物は天衣を別の木材で製作しており、童子の身体から浮き上がった状態になっているそうです。理屈では判っていても、写真では判別することが難しいのですけれどね。
イSム矜羯羅童子ても、この天衣の表現は部材を組み合わせる手順を踏んで、再現されています。身体にピッタリと付いている布と、身体から浮いている布の2種類をまとっていることで、軽やかな布の〝躍動〟が見事に表現されています。
更に角度を変え、左横からの視点で観ています。
天衣の柔らかく軽やかな様子が見事に表現されていますな。
この視点からだと、腰回りは以外とスッキリしています。
寧ろ、肩・背中の肉付き方に比して脇後方から腰元にかけてが締まっているので、〝ガタイがいい〟感じになっています。
下半身を覆っている裳にも薄くなっていますが模様が、腰の折り返し部分にはなかなか丁寧な模様が再現されています。但し、形未詳の小さい模様だといいます。
この画像だとに臂釧(ひせん)が、上段は朱色、下段は緑青色と、本物と色塗りが本物と逆転しています。
左肩前に結び目をつくている条帛ですが、襞(ひだ)や翻りの様子が再現されています。
条帛の表側には花蔓文(はなつるもん)が配されているそうです。裏側の文様は、残念ながら不明ということです。
裳の折り返し、先ほどは形未詳という解釈を紹介しましたが、六弁花文(ろくべんかもん)とする解釈もあります。
背後にまわってみると、腰が引き締まって、身体全体で緩やかなS字カーブを描いています。とても童子とは思えませんな。
背中の中央で赤味が残る条帛の上に緑色の天衣を交差させる表現は、珍しいそうです。
裳の表側は、地が辻飾り斜格子文(ななめこうしもん)で、その上に団花文(だんかもん)が乗せられているそうです。
裳の裏側と説明されているのが、腰元の折り返し部分でしょうか?
蓮唐草文(はすからくさもん)とされています。
色々と見ているのですが、どれが正しいのか判断できません。
前方から、足元の様子を観ています。
足首で、2段になっている足釧(そくせん)は本物が上段は朱色、下段は緑青となっています。イSム矜羯羅童子だと、上下2弾とも黒っぽく見えますね。
膝下から裾にかけての裳ですが、表側側は辻飾り斜格子文(ななめこうしもん)の地に、団花文(だんかもん)が乗っているそうですが・・・判りませんね。
チラッと裳の赤い裏側が見えています。これが蓮唐草文でしょうか。
脛(すね)から足の指先まで、上半身の肌色とだいぶ違う色合いになっています。
足釧の上、脛の部分が少々赤味がかっています。
〝模様付のスパッツ〟を履いているのか?と思ってしまいますが、時代的にそんなハズはありません。本物だと退色と汚れで、写真だけではどうなっているのかが判別できません。
以前、本物を観た時に、そんな細かいところまで気にしていませんでした。
次、本物と遭遇する機会があったら、よっく観察しておきます。
後方・正面から、下半身の様子を観ています。
辻飾り斜格子文(ななめこうしもん)の地に、団花文(だんかもん)が乗る図柄。何となく判る様な判らない様な・・・。
裾の部分が暗い色で縁取られているのは判りますね。
現時点(2022年4月)で八大童子のうち、制多伽童子・矜羯羅童子・烏倶婆誐童子の3体が発売済みです(3種いずれも販売終了)。
「八大童子を揃えたい」という要望が多く寄せられているということを聞きました。
どういう順序になるのかは判りませんし、既に販売終了となった3種がどういったタイミングで復刻再販されるのかも不明です。
どれほどの期間で八大童子が揃うのでしょうかね。気長に、楽しみながら待ちましょうか。
さて、2020(令和2)年9月に発売日後、揃えて連れ帰ってきた矜羯羅童子(初版)と制多伽童子(3版)を並べてみました。
真ん中に不動明王を立てて撮ろうと思っていたのですが、失念してしまいました。
制多伽童子(3版)が、だいぶ小さめです。
本物・制多伽童子:身長96.1㎝
本物・矜羯羅童子:身長94.5㎝
なので、並べると矜羯羅童子よりも制多伽童子が五髻(ごけい)がある分、背が高いはずです・・・。
これから順次、八大童子が個別に発売されていくことが予想されますが、制多伽童子が復刻再販された場合、この矜羯羅童子との身長差、ひいては八大童子の身長差・バランスは考慮されるのでしょうか。
比率が本物に準拠されていると、とても嬉しいですね。
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