此方の特注は「武装商店」様HPで2010年の2/10「これはすごい特注紹介/画像編」、2/11「これはすごい特注紹介/詳細編」で紹介されています。
既に「武装商店」様により「ソハヤノツルキウツスナリ」や「日光助真」という現存文化財をイメージした居合刀のプロトタイプ(試作品)が発売されていたことに感化され、店主様に色々と相談にのっていただき刀身「圧し切り長谷部」と「金霰鮫青漆打刀拵」を可能な限り再現することを依頼しました。各パーツの解説については「武装商店」様HPを御覧下さい。
参考までに。圧し切り長谷部を納めている金霰鮫青漆打刀拵は、黒田家に伝来していた安土桃山時代の作とされる「安宅切」の拵えを模作したもので、江戸時代後期の文化・文政年間あたりに製作されたと推定されているものです。
〈 依頼ポイント 〉
刀身は安価な物でよいが、刃文は頑張ってもらうことをお願いしました。
また〝可能な限りの再現〟をお願いすることとしましたが、以下の写真の様な鞘の金霰鮫の再現は不可能だと言われていたので、色合いだけの再現で構わないということにしました。
あとはいつもの様に細かいところは職人さんにお任せということでお願いしました。
こうして納品されたのが以下の一振りです。
〈 お任せポイント 〉
現存「へし切り長谷部(国宝)」を居合刀で出来る限り本歌に忠実に再現していただきました。
普通の居合刀身をベースに約64.8㎝(約二尺一寸四分)としていただきました。
本歌に合わせると、以下の様に通常の居合刀よりもだいぶ小振りになっています。
通常サイズの居合刀(下)と並べてみました。圧し切りは、柄も刀身もだいぶ短いということがお判りいただけるでしょう。
刃文は可能な限り本歌に似せていただきました。職人さんが気合いを入れて似せてくださったそうです。しまった、鎺に彫刻を入れてもらうのを忘れていました・・・。
栗型・返角は水牛角製、栗型は本歌と同じく前よりの位置に据えていただきました。ちなみに下緒は納品時は金色でしたが後に紫色に変え、最終的には写真にあるように深緑の物にしました。色々と当ててみましたが、この緑によって拵えが最も映えるように感じています。
鞘塗は金凸塗の切り返しでした。当初は〝強めの凸塗〟を希望していたのですが、仕上がりを見てあまりゴツゴツとした塗でない分、すっきりとしたスマートな印象になりました。このさっぱりとした仕上がりで良かったと感じています。
既製品には無い形態だったことから鐺は完全に手造りで製作していただきました。これ以降に製作された既製品に装着された鐺よりも大型になっています。鞘塗りと良い感じで調和がとれています。
柄長は本歌合わせの約21.5㎝(約七寸)です。親粒ありの朱塗鮫皮に、茶の牛本革裏で柄巻をしていただきました。縁と頭は既製品の似通ったものをベースに、それぞれ金鍍金/赤銅鍍金を別注で施していただきました。目貫は三連の桐紋で、三つの桐を向って左から銀(燻し銀)・金・銅に色分けしているように見えたので、この目貫もそれに倣って再現していただきました。
鍔は斧題目図の鍔です。この図は2009年時点で居合刀用の既製品としては存在しなかったもので、再現のため本職の方に製作を依頼していただきました。櫃穴も本歌同様に埋め金処理とし、裏の意匠は資料がなかったので、表側のイメージに合わせてオリジナルの野晒し図にしていただきました。
この鍔だけで通常の居合刀二・三振り分になるそうです(居合刀の価格によりますが)。何とも恐ろしい逸品が組み込まれたものですが、嬉しさは言葉に喩えらない程になりました。
ちなみにこの後、問屋企画品としての圧し切り長谷部が商品化されました。
「金霰鮫」の再現は、目の細かい強めの金凸塗りか
糸巻きの金塗りの2種類があります。
特に糸巻きでの再現は極めて高額になっています。経済的な余裕ができたら、当家でも糸巻き再現を入手したいと考えております。
いつも特注をお願いしている職人さんは、この特注をとても楽しみながら請け負って下さったそうです。既製品とは違ってこの一振りを見ていると、そうした製作の背景・過程などが目に浮かび、居合刀特注の醍醐味・楽しみが深くなっていきます。
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