毘羯羅大将
薬師如来の第一誓願「光明普照」を司っています。左手を腰に当て、右手に三鈷杵を持つ姿です。
髪型は、生え際から後頭部にかけて逆立てている炎髪ですが、頭頂部周辺は丸く髷を結っています。
表情は、かっと目を見開きつつも静かに閉口しています。正面下からは無表情に見えますが、横にまわって見ると〝内なる怒りが沸々と湧き上がる〟様子を感じとることができます。立体造形は角度によってこれ程までに違いを見せ付けてくれます。
また、顎下には襟甲と飾鋲型の甲締具の様子が詳細に再現されています。
持物の三鈷杵は、元々古代インドの神々が持つ武器で、それを法具化したものです。煩悩を打ち払う菩提心の象徴とされています。
中央が杵と呼ばれる握り部分で、両端には鋭い突起の鈷がそれぞれ三本ずつ備わっています。
この毘羯羅像は右手を頭上高く三鈷杵を掲げています。
首元から腹部にかけて赤い紐帯が各甲を繋ぎ留めている様子から、鎧の装着方法の一端をうかがうことができます。
装着している鎧の形状は、宮毘羅の物とほぼ同様です。
胸甲に菊座はありませんが、彩色を区切る線刻と、残存する金箔・彩色・汚れが現物を模して再現されています。胸甲とその周辺、下半身の表甲、脛甲にも濃淡の違いはあれど残存金箔の再現が色彩によって表現されています。
毘羯羅像も下半身の動きはほぼ無く、各甲と黒っぽい色彩が残っている裳が静かに垂れ下がっている状態で表現されています。
背面にまわると、背中に大きめの金箔残存が描線と共に再現されています。
紐帯よりも下の腰部には鮮やかな赤い顔料と描線が残っています。
下半身を護る表甲・下甲に残る濃淡の描線、薄れた彩色が再現されています。
前面で見た紐帯の結び目が繊細であるのに対し、腰帯・天衣の表現は大雑把なものになっています。
裳の僅かな靡き具合も、三鈷杵を高く掲げる動きに連動した躍動を表現しています。
十二神将の他の像にも共通することですが、胡粉で青みがかった塑土の質感を表現した下地に、現存している金箔残存状態と彩色、その上に経年による汚れ・損傷をすべて成り立たせている様を見事に再現しているイスム像のタフな仕事ぶりには敬意を表します。
当サイト内のすべてのコンテンツについて、その全部または一部を許可なく複製・転載・商業利用することを禁じます。
All contents copyright (C)2020-2024 KAWAGOE Imperial Palace Entertainment Institute / allrights reserved