迷企羅大将
薬師如来の第十誓願「苦悩解脱」を司っています。左手を高く掲げ、右手を腰に当てた姿になっています。
赤味がかった髪型は、招杜羅像と同じく前頭部中央の毛髪を頭頂までもっていき髷で束ねています。折り返した炎髪は三束にまとめられ、真ん中に髪飾りが付けられています。
こめかみからもみあげまでは三束にまとめられた炎髪になっています。
後頭部の頭髪はきれいに頭頂部へもっていき髷にしています。後頭部1/3のあたりにヘアバンド的なものが装着されているようです。
赤黒っぽい顔の表情は、眉間の深い皺と隆起した前頭筋で鋭い眼光が表現されています。横から見ると、目を剥いた憤怒の表情であることがわかります。
口は怒鳴り声をあげているかの様に大きくあけ、舌・歯が緻密に表現されています。
迷企羅像は十二体中で唯一、持物の無い造像です。
こうして角度を変えて見ると、何も持たない左手ですが、それぞれの指が自由な動きをみせており、静止している姿であるにもかかわらず躍動感が伝わってきます。
襟元は、迷企羅像独自形状の布で覆われています。
胸甲・腹甲の縁に金箔と色彩が、胸甲中央部にある甲締具の飾鋲と紐帯に金箔が良好な状態で残存しています。
よく観察すると、薄くではありますが肩甲・鰭袖・窄袖、下半身の腰帯・天衣、前楯、左側の表甲と天衣、袴・脛甲にも金箔痕跡を見いだすことができます。
下半身の表甲には赤色系の下地に植物を模した様な描線が極めて良好な状態で残っています。
特に下半身は、かつて華やかな色彩であったことが容易に推測できる程、色が残っています。
背後にまわってみると十二神将のうち、最も色彩の残存状態が良好です。
肩から襟元にかけてを覆う布は金色であったことが残存金箔から推測できます。肩甲・鰭袖、上半身の表甲、腰帯・天衣にも金箔が施されていたことがわかります。さらに、腰上で結び目が付けられた紐帯も縄目が繊細に表現されながら金色が残っています。
腰部から臀部にかけての表甲には赤系の下地に黒と白っぽい描線で文様が描かれていた様がわかります。
迷企羅像の裳は、他の像に較べて長くたなびいでいるのも特徴です。
良好な金箔・彩色残存ではありますが、濃過ぎず、協調し過ぎずという仕上げ彩色における絶妙の按配が素晴らしいです。この仕上げが完成するまで、どれ程の工程を重ねているのか、職方の技法に感服致します。
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