問屋企画品の美術刀「徳川四天王本多忠勝拵」(大刀・太刀の入った商品名もあります)用に開発された「金秋塗り鞘」という、素敵な鞘塗りが生まれました。
まず塗料を散らし、溶剤をかけて散らした粒が流れて変形していく、極めて個体差が大きい〝二つと同じ仕上がりにならない〟という感服する塗りです。
塗り見本の通りに溶けてくれれば結構なのですが、そこはやはり「見本」。
溶け具合には個体差どころか、場所によって溶ける・溶けないの差が生じるようです。
2013(平成25)~2014(平成26)年にかけて、「武装商店」様は〝溶かし塗り〟の名称で、この鞘塗の商品を数振り発表されています。
①2013(平成25)年12/29紹介「こんな年末ギリでも商品紹介する」
(画像は「武装商店」様HPより)
②2014(平成26)年1/4紹介「また改とか増やしてみた」
(画像は「武装商店」様HPより)
③2014(平成26)年2/2紹介「また金具が増えたみたいです」
(画像は「武装商店」様HPより)
④2014(平成26)年9/27紹介「とりあえず美術刀で」
(画像は「武装商店」様HPより)
①~③を見て感化され、この溶かし塗りに挑戦してみたと記憶しています。
溶かし塗りの特注を受けていただく際、武装商店店主様・美術刀担当者様から
「仕上がりがどうなるかわかりませんよ」
「溶けきらない場合もありますからね」
・・・という警告にも似た注意点の説明をいただきました。
それに対して「しっかりと溶かしてください」とお願いして納品されたのが以下の一振でございます。
溶かし塗りは、鞘全体ではなく鞘尻周辺に施していただきました。
抜き身はこの様になっています。
刃文は「箱乱れ」。荒々しさ・禍々しさを兼ね備えた、素敵な刃文です。
柄下地は錦地、金の龍図目貫が装着されています。柄巻は赤の合皮を巻いていただきました。
それまで見たことが無かった新規の鍔を装着していただきました。
金色の小判型鍔で、梵字「ウン」が4つ、表裏合わせて8つが記されています。
柄頭・縁金具・鍔・鐺は金色で統一していただきました。
鯉口金具が金属になったということで、全体の色合いバランスを考慮して金色金具を選択しました。
色んな物を〝叩き割る〟ことができそうな箱乱れ刃文です。
気に入ったので、数本の特注にこの刃文を選びました。
やっぱり鐺金具は金色の鍬型をはめていただきました。良いアクセントになっています。
溶かし塗りが、鐺から炎が吹き出しているかの様になっています。
職人さんに、気合いを入れて溶かしていただきました。
〝紅蓮の炎〟が立ち上るかの様な勢いを感じさせる仕上がりになりました。
冒頭に挙げた雅な「金秋塗り鞘」をイメージしていたのですが、気が付くと豪壮な塗りになってしまいました。
火焔もしくは溶岩(マグマ)が吹き出しているかの様な溶け具合です。
これと同じ仕上がりの再現は・・・不可能でしょう。
向きがこれまでと逆ですが、鞘を回転させて溶かし塗りの溶け具合を見ています。
躍動感・強靱な力をひしひしと感じる塗りとなりました。
居合刀だとこの様な塗りは不可能ですが、美術刀ではこの様な〝遊び〟が可能です。
居合刀だけでなく美術刀の特注も奥深いもので、こうした楽しみ方を知ってしまうと〝病み付き〟になってしまいます。
当サイト内のすべてのコンテンツについて、その全部または一部を許可なく複製・転載・商業利用することを禁じます。
All contents copyright (C)2020-2024 KAWAGOE Imperial Palace Entertainment Institute / allrights reserved