此方は「武装商店」様HP2011(平成23)年3/20「お次は居合刀でござる。」で紹介された鵜ノ首刀身の太刀です。
元ネタは「武装商店」様HP2007(平成19)年12/1「すっごい鍛人製品がきたよ。(パートⅠ)」で紹介された「鍛人製 蛭巻大太刀 三尺」です。
(画像は「武装商店」様HPより)
動乱期の南北朝時代に好まれた反りがかなりきつい大太刀をイメージして、イチから刀身を造った物だそうです。この画像を見ると、蛭巻拵は別として〝三尺大太刀〟が欲しくなってしまいました・・・が、軍資金調達がままならずに逃してしまいました。でも、この豪壮な姿は脳裏に焼き付けられてしまい、ずーっと尾を引いていました。武装商店様にうかがって居合刀・美術刀をいろいろと購入していきながら、鍛人製三尺大太刀の件について問い合わせていましたが、部材調達が困難であるということで諦めざるを得なくなってしまいました。そこで「鍛人製三尺大太刀」に対抗できる様な太刀製作の依頼に繋がっていきました。そうして納品していただいたのが此方の画像の一振です。
長脇差でも触れました、「武装商店」様HP2006(平成18)年5/6『「鍛人(カヌチ)」製品受注開始のご案内』で紹介された「同田貫藤原正国」(仮称)朱鞘Ver.に用いられた〝強めの凸凹塗り〟をこの太刀に再現してもらおうと依頼したのですが渡巻を備えたり、金具をいろいろと装着してもらった事で、凹凸の激しい塗りは難しかったのでしょう。それでも通常の鞘塗と比較すると、凹凸がハッキリとした塗りにしていただきました。
武装商店様企画品「大鬼貫」(おおおにぬき)で用いられている真鍮製の鵜ノ首刀身なので二尺四寸五分、三尺には遙かに及びません。刃文は、当時ハマっていた「三本杉」で、これは長脇差と同じとしました。
それでは、各部位を観ていきましょう。
先ずは「兜金」(柄頭金具)。職人さんが手作業でひとつひとつ鎚目を入れた、燻し銀金具です。納品時はもっと艶やかな燻し銀でしたが、長脇差と同様に数年も放置していたために黒ずみが強くなっています。柄下地の赤鮫には「谷汚し」を施してもらいましたが、長脇差と同じく余り目立ちませんね。
「猿手」も職人さんの手造りの物が装着されています。
組み討ちをされても、この兜金で殴り付ければ甲冑の上からでも相当なダメージは与えられるでしょう。実際にその様な動きをすることはありませんけれどね。
兜金から鍔元にかけての画像です。
谷汚しをした赤鮫と艶やかな黒の牛本革、黒味がかった燻し銀金具が長脇差同様に〝絶妙の調和〟を魅せています。
差し裏側の様子です。
目貫の位置がちょっとだけズレていますが、表裏共にギラギラ感が溢れ出ている柄前になっています。
この画像からは余り伝わってきませんが、柄は通常よりも太め、そして太刀らしく反りがある柄になっています。
小さな法具「三鈷杵」を目貫として埋め込んだ柄の中央部です。
長脇差に装着した独鈷杵と同様、立体的造形の三鈷杵でしたので、半分の薄さになるまで削り、鮫皮の上にのせています。すっごく手間が掛かっています。
( 左:柄の差し表 / 中央:柄を上から見た画像 / 右:柄の差し裏 )
三鈷杵の位置は、太刀によく見られる表裏共に柄の中央に据えてもらいました。
差し裏でちょっとだけ上に据えられていますが、柄を握った時、差し裏の親指が掛かるあたりに凹んでいるので手に馴染みます。
柄を上から見た画像から、削ったとはいっても三鈷杵は立体的であること、そしてそれを装着している為に、太めの柄であることが判ります。
太刀らしく、切羽を合計8枚重ねています。
「鍛人製三尺大太刀」は切羽が合計6枚重ねですので、ゴツさで勝ることができました。
黒染の切羽なので判り辛いかもしれませんが、
鍔の両側に4枚ずつ切羽をかませると、かなりの分厚さになっています。
丁寧に処理された鯉口に、分厚い鎚目入りの燻し銀金具が装着されています。
渡巻部分の表裏の様子です。
柄巻と同じく黒の牛本革を巻いてもらいました。
太刀緒も鹿革の太い物にして、「鍛人製三尺大太刀」に対抗しています。
足金物(一の足・二の足)は、共に鍛人製の金具を投入しています。レアかつ高価な部材です。
渡巻部分から鞘尻方向を観た画像です。
赤(朱色)と黒(+燻し銀)のコンビネーションが美しく仕上がっています。
長脇差とお揃いの手造り鎚目入り「柏葉金具」が装着されています。
兜金と揃いの形状の石突金物です。長脇差と同様の組み合わせです。攻撃力・破壊力満点の頑丈な金具になっています。
これらの金具を装着するため、激しい凸凹塗りが回避されたのでしょう。致し方ありません。
長脇差と同様に〝鎺に文字・文様を入れる〟というオプションが特注当時は無かったので、銀色の無地になっています。
この画像からも切羽の重ねが〝かなり分厚い〟ということが判ります。
手造り太刀鍔に、装着されている金具と統一した鎚目入りの燻し銀大切羽です。
〝鎚目入り〟の加工が太刀の武骨さを際立たせています。
刀身の抜き身、差し表側です。災厄や奇怪な物々を悉く寸断してしまいそうな三本杉の刃文が素敵です。三本杉刃文は長脇差とお揃いです。
手元には薙刀樋の横に添え樋が入っています。
二本の樋と入れ替わるように、切先にかけて鵜ノ首の加工が施されています。
刀身の抜き身、差し裏側です。
身幅の広い刀身ですが、二本樋と鵜ノ首加工により軽量化が図られています・・・とは言っても、真鍮刀身なので通常居合刀と比較するとかなりの重量になります。
鵜の首刀身は、一見でも引き締まった印象と純粋な格好良さが際立ちます。
余りにも素敵過ぎるので、鋭い切先に鵜ノ首加工・二本樋・三本杉の刃文のコラボレーションが見て取れる画像をあげておきます。
切先の鋭さと、三本杉刃文の調和がとれた画像です。
魔物・妖怪の類いを造作なく討伐できそうな刀身で、とても気に入っています。
「鍛人製三尺大太刀」を諦めたことにより、長さは適いませんが、いろいろと拘りの部材を装備した、素敵で豪毅な太刀を納めていただくことができました。職人さん+武装商店様には感謝感謝の限りです。
今回の鵜首太刀と、昨日の長脇差を並べた画像です。
意識的に揃えた大小の拵えであることがお判りいただけるでしょう。
抜き身の画像です。
この組み合わせが最も美しかったので、大小上下や太刀・打刀の向きは気にしないでください。
今回の朱鞘大小と、その〝従兄弟〟の半太刀(5/2紹介)を並べてみました。
太刀と打刀という外見の相違はありますが・・・
刀身は共に鵜ノ首刀身となっています。
刃文と切先周辺に〝兄弟〟ではない要素が顕れています。
〝従兄弟〟である所以は鵜ノ首刀身だけでなく、柄に法具「三鈷杵」が加工されて目貫とされているところにあります。目貫としての据え方に違いがあるのは、素敵な個性です。
刃部を下にした画像では余り目立ちませんが、刃部を上にすると今回の鵜ノ首太刀の柄が太刀柄を意識して彎曲していることが判ります。
鵜ノ首半太刀の改造は、鵜首太刀のイメージを元にして行われたものです。
武装商店・店主様に法具「三鈷杵」の在庫を確認したところ、在庫ありということでしたので投入をしてもらいました。
ちなみに、法具「独鈷杵」を投入した改造依頼もしているのですが、そちらの納品はまだ先のことになりそうです。
後半は、当御所が所蔵する〝最も厳つい太刀・半太刀〟のお話になってしまいました。
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