十一面観音立像(イSムPremium:ポイント交換限定品 交換終了)

此方はイSム様でポイント交換されていた「十一面観音~Premium~」です。
残念ながら2019(平成31)年1月に〝都合によりポイント交換を終了〟してしまった逸品です。確認したところ、もう在庫は無くなってしまったとのことでした。

モデルは近江国長浜の向源寺(渡岸寺観音堂)に伝わる国宝・十一面観音立像です。
上野の東京国立博物館・平成館特別展示室において2006(平成18)年10月3日(火)~12月3日(日)の期間で開催された特別展「仏像 一木にこめられた祈り」で、後半の11月7日(火)~12月3日(日)に〝寺外初公開〟ということで注目され、「東洋のビーナス」というフレーズで全国的に有名になった像です。

本物は、檜の一木造で、像高は195.0㎝。
本面の頭上に小面を載せ、身体には条帛・天衣・裳をまとい、左手で水瓶を執り、右手は垂下させ、やや腰を左側に捻りつつ、右足を少し踏み出して立つ姿です。
ところどころに彩色や金箔の残痕があります。

 

現在日本に存在する国宝指定を受けた十一面観音像は、
 大和国室生寺の十一面観音像(イSム様で既に製品化)
 大和国法華寺の十一面観音像(イSム様で製品化、廃盤)
 大和国聖林寺の十一面観音像(イSム様で製品化、再販予定)
 河内国道明寺の十一面観音像
 山城国観音寺の十一面観音像
 山城国六波羅蜜寺の十一面観音像
 近江国向源寺の十一面観音像(イSム様でポイント交換限定品、廃盤)
の7体です。

 

734(天平6)年以降、遣唐使や遣渤海使・遣新羅使といった中国大陸・朝鮮半島へ派遣された使節の帰朝により疫病が日本にもたらされたと推測されています。そして736(天平8)年、平城京における疫病流行の対策として聖武天皇は修験僧・泰澄に除災祈禱を命じたといいます。泰澄はこの十一面観音立像を造り、更に光眼寺を建立してそこに祀ったところ疫病は終熄したと伝えられています。790(延暦9)年には、最澄が勅命を奉じて七堂伽藍を建立したといいます。
1570(元亀元)年、光源寺は織田信長・徳川家康連合軍と朝倉義景・浅井長政連合軍は衝突した姉川の戦いに関わる戦禍を被り堂宇は焼失、僧・巧圓は信仰心の篤い近隣の民らと共に十一面観音を土中に隠匿して難を逃れたといいます。この時に観音を埋納したという場所には碑と案内板が立てられています。
巧圓は寺の宗派を天台宗から浄土真宗へと改め、光眼寺を廃寺として新たに向源寺を建ててここに件の十一面観音立像を納めました。

 

さて、像を360度転回させてみましょう。

 

 

十一面観音とは、雑多な展開を見せていた現世利益(げんぜりやく)を重視する観音信仰を統合して成立したものとされています。ヒンドゥー教的信仰を仏教へ取り込んでいく過程の中で登場した〝仏教において考え出された観音〟だということです。
十一面を持つ表現は強大な法力を持っていることを意味しており、一面二臂の人間的な姿をしていて悟りに到達した迷いの無い表情、慈愛に満ちあふれた表情であることが十一面観音にとっては適当な容貌と考えられています。

 

十一面観音の十一面は各種異なった配置の造像が成されるようになっていきましたが、中心とする大きい面と、頭上に並べた小さい十面の関係が中国で議論され、最も適切な姿として選ばれたのが、中心にひとつの大きな顔を現し、その他の顔を頭上に安置するものだったといいます。

 

日本で十一面観音は、比叡山系統の観音信仰における中心本尊として信仰された様で、滋賀県下に十一面観音像の優品が遺っていることは、この地域が比叡山の勢力圏内であったことに因むと考えられています。

 

大きく弧を描いた眉と伏し目で鼻筋がしっかりと通っており、膨よかかつ小さな口からインド美人の様な異国情緒が漂っています。耳朶は環状をなして、鼓胴式耳璫(こどうしきじとう)という大きな耳飾りを左右に嵌めています。
頭部が大きく造られていますが、身体の部分も巧みに肉厚な部位を造って全体のバランスをとっています。
大きな面の脇、頭上、後頭部に十面を施す姿は異形なのですが、違和感を全く感じることなく見事に調和がとれた容姿となっています。

 

うず高く巻かれた髻の上に菩薩面が1体、天冠台上の地髪に菩薩面2体と瞋怒面2体、牙を剥き出している牙上出面2体。本面の両耳の後ろにも険しい表情の脇面2体、さらに後頭部には大笑面1体の計10体の小面が、それぞれ頭上に坐像の化仏を象った宝冠を着けて配されています。
脇面はそれぞれ首を捻って正面を見ようとしていますが、残念ながら見えていませんね。

髪際は棗形に結われ、耳にも髪を掛ける状態になっています。

 

頂上面を正面から見たところです。十一面観音の通例は如来相を載せるのですが、こちらは菩薩相になっています。高く髻が結われ、坐像の化仏五尊が刻まれる、他に類例を見ないものになっています。
正面に挟まれて、中央には化仏が配されています。
宝冠の縁の細かい模様と地髪が丁寧に象られています。
地髪の上に小面が置かれています。その実態は想像すると気持ち悪いことになりますから止めておきましょう。

 

本物の頭髪部分は、乾湿を盛った上に毛筋を入れた造形になっています。
乾湿の厚みは約5mmといいます。そこは再現の対象外になっています。
本面の後頭部には「暴悪大笑面」が配されています。

 

「暴悪大笑面」を拡大してみました。
笑っているのは判りますが、造形が小さいので顔の構成パーツを顔面に収めるのにいっぱいいっぱいとなっています。本物の嫌らしい目つきと小馬鹿にした笑い口ほど皮肉っぽい感じはしませんね。

向源寺(渡岸寺観音堂)様において、この十一面観音立像は耐震・免震機能を備えた「慈雲閣」で展示されていて、像を360度どの角度からも拝観可能になっているそうです(未だ現地に行ったことが無いので)。暴悪大笑面と睨めっこができますね。

 

首には〝豊かさ〟を表す「三道」(さんどう)という3本の筋があります。
また胸部には「瓔珞」(ようらく)という装飾具が再現されています。
条帛や天衣、肩にかかった垂髪も丁寧に再現されています。
この画像から〝木像〟のような印象を受けますが、ポリストーンに彩色を施して〝木像っぽく〟しているのです。彩色技術が相も変わらず素晴らしいのです。もう見た目は木像ですね。

本物は別材で造られた装飾を竹釘で打ち付けており、更に釘穴の痕跡から損失した装飾物があったと推測されているといいます。

 

条帛を左肩に掛け、右脇腹へ垂らし、再び左肩へ掛けています。その上に天衣を掛けて大腿部へと垂らしています。さらにその上に垂髪を散らして載せています。
暴悪大笑面の横から肩口にかけて捻りながら波形を象る垂髪7条が装飾を意識しながら彫り出されています。
腕には菱形の模様が施された臂釧が着けられています。
腰がキュッと締まっています。
この背面からの画像からも、ポリストーン製というよりも木像っぽさが感じられますよね。
木目無しに木の質感を彩色で表現できていることは凄いです。

 

両耳の上から垂れている天冠帯は、肩から腕の前へと垂れ下がる程に長くなっています。
臂釧の表側には繊細な模様が施されています。

 

水瓶(すいびょう)は観音の代表的な持ち物です。

 

右手は膝上まで垂らし、手のひらを前に向けています。これは「与願印」(よがんいん)といい、願い物を与えるという印相です。
天衣や裳の襞が丁寧に再現されています。この襞の中に金色が注されていますが、これは後世の手入れだと考えられています。
翻波式の衣文と、一言に茶色といっても濃淡様々な茶色を重ねたり、使い分けたりして見事に木の質感を表現されています。

 

天冠帯・条帛・天衣・裳と各種布類が柔らかく、そして優しく身体に纏わり付いています。
脇から腰にかけての緩やかな曲線、十字形の臍が女性らしさを主張しています。

 

ゆったりと腰を捻った、美しいラインがお判りいただけるでしょう。

 

後ろから観た、背中から臀部にかけての様子です。
ポリストーンで木像の肉身・衣類の造型と年月を経た木の質感をここまで表現できるという彩色技術の高さ・凄さには感服せざるを得ません。

 

下半身の全体像です。
緩やかに流れゆく様な布の躍動が美しく、そして見事な調和をなしています。
異なる翻波式衣文の交差する様も、これまた美しく再現されています。

 

本物にも言えることですが、後ろにまわっても裳のたなびき具合は美しく波打っています。
どう見ても木像に見えますよね。ポリストーンの造型って凄いなと実感してしまいます。

 

 

 

 

 

ポイント交換限定品としての十一面観音立像の素晴らしさをご覧いただきました。
モデルとなった本物の観音像の写真と見比べて見てください。イSム様はとても頑張って似せていますが、少々本物と異なっているところも見えます。決して〝金儲け〟で造った訳では無く、寧ろ現代まで寺院や地域の人びとといった関係者の皆様に守られ、そして伝えられたことに対する敬意を以て、この美しき像の模像を造られたのだと考えます。イSム様の中の人ではないのですが、この模像によって本物の十一面観音立像のことを知り、そしてその魅力を感じた方々は少なくないと存じます。この模像がきっかけで、近江国へ本物を拝観しに行かれた方もいらっしゃるでしょう。

 

それぞれ寺院の関係者様のお考えはあるかと存じます。
権利関係に厳しい京都の歴史ある寺院でも所蔵像のレプリカを制作し、正式許諾・販売をされている例があります。収益の話はゼロではないと思いますが、レプリカを購入する人のほとんどは像への憧憬や感動の気持ち、想い出と共に大切にしていくことでしょう。転売して金儲けをしようとする不逞な族が居ないとは断言できませんが、それは少数でしょう。

 

是非、この十一面観音の本物を所蔵されている寺院の関係者の皆様には、御寺の歴史と素晴らしい像を所蔵されていることを世の中により広く知ってもらうために、模像制作について検討していただきたいと思います。公式に許可・発売されると文化財維持にも運用できるでしょうし、より多くの方々に御寺と所蔵されている文化財の素晴らしさが浸透していくことと存じます。

 

 

 

 

 

 

 

 

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