長物紹介 長巻 五尺三寸

此方は、以前紹介した長巻(6/14)よりも少々柄が長く、仕様の異なる問屋企画品〝スーパー長巻〟です。「武装商店」様HP2013(平成25)年9/13「長巻です。」で紹介されています。

 

鵜の首刀身が装備されています。6/3紹介の「改造脇差 鵜の首刀身」、6/14紹介の「長巻 刃長一寸五分」とほぼ同じ長さの刀身です。
刃文は「清麿」?でしょうか。

薙刀/長刀と長巻の研究は進んでおらず、研究者の間においても刀剣分類状の区別が明確になっていない状態なのだそうです。そういったことから薙刀/長刀と長巻は〝同一のもの〟として扱われることが多いとのこと。文献を見る限り、長巻が薙刀/長刀と発祥の異なる別種の武具であることは確実視されているといい、〝長巻の定義〟が学術的に確立していないのが現状だそうです。

簡単な識別ポイントは
 刀身に「横手」のあるものを「長巻」
 刀身に「横手」の無いものを「薙刀・長刀」
ということだそうです。

上記の基準に照らし合わせると、〝スーパー長巻〟はご覧の通り「横手」がある、大切先(おおきっさき)の「大丸帽子」(おおまるぼうし)です。

 

長物2本を並べてみました。手前が「長巻 刃長一寸五分」、奥が〝スーパー長巻〟です。
鍔から蕪巻までの間、特に籐巻部分の長さと、石突金具の高さの分、〝スーパー長巻〟の長さが際立っています。

太刀掛けに立て掛け、刀身に注目してみました。総長の差で鍔の位置、籐巻の長さ等の高さに違いが出ています。
左が「長巻 刃長一寸五分」、
右が〝スーパー長巻〟です。
「長巻 刃長一寸五分」は峰側が削ぎ落とされているあたりから反りが強くなっています。
それに対し〝スーパー長巻〟は、峰側が削ぎ落とされていますが、反りはそれほど強いと看取ることはできません。

 

刀身の切先をほぼ合わせ、向きを変えた画像です。
左が〝スーパー長巻〟、右が「長巻 刃長一寸五分」です。刀身の長さは、ほぼ同じですね。

共に峰側へ削ぎ落としが入っている鵜の首刀身なのですが、〝スーパー長巻〟の身幅が若干太いようです。
「長巻 刃長一尺五寸」が削ぎ落とし部分に反りがあって、美しい曲線を描いているのに対し、〝スーパー長巻〟は通常形態の大切先刀身に削ぎ落としを入れて鵜の首刀身としたものだからこそ、削ぎ落とし部分からの反りは無いと推測します(問屋企画品なので情報に乏しく、推測で話を進めました)。

 

単体で〝スーパー長巻〟を観ると、通常刀身を装着したものであると感じます。
「長巻 刃長一尺五寸」の全体的に鋭い刀身を基準にすると、どうしても比べられた方が損をします。

居合刀レベルの刀身を装着した長巻は、長柄部分の加工・制作に手間が掛かるため市場に出回る品数は多くありません。
これまで武装商店様が企画・発売された長巻は、
 2008(平成20)年  6/27紹介 「長巻 刃長一尺五寸」(「鬼貫」刀身:真鍮)
 2008(平成20)年 10/30紹介 「長巻 刃長二尺五寸五分」(「鬼貫」刀身:真鍮)
 2008(平成20)年 10/31紹介 「仕込長巻」(「鬼夜」刀身:合金)
の3種類です。

何れも鵜の首刀身の格好良さを重視した、
 真鍮製「鬼貫」(おにつら)=旧「鵜の首造 志津三郎兼氏(仮称)」 拵え込みで59,990円
 合金製「鬼夜」(おによ) 拵え込みで77,990円
という高額刀身を装備していたため、価格はそれぞれ10万円を超えています。仕込長巻については2本刀身装着という二度と制作されることはないであろう仕様でしたから。タイミングを逃して購入しそびれてしまったことを悔やんでいます。

そうした状況で2013(平成25)年、問屋倉庫からの〝ひょっこり発見〟でしたし、驚愕の低価格でもあったことから入手するために迅速な行動をとりました。

 

さて、〝スーパー長巻〟の観察に戻りましょう。

黒染の鎺、黒染の切羽が装着されています。
色斑や汚れ等がありますが、これが倉庫内冬眠の理由でしょうか?
鍔は喰出鍔ですが、円と曲線を組み合わせた模様が彫り込まれている、あまり見ることの無い物になっています。

 

鍔より下を観ていきます。
鍔・切羽・口金が装着されています。口金には装飾の無い目釘が打ち込まれています。
本歌だと長物は茎の部分が相当に長い(だいたい2~3倍の長さ)ので、目釘2本での固定例が多く見られます。
此方の〝スーパー長巻〟は、茎を短く切って1本目釘固定か、中央の胴輪のところでもう1本目釘を打っているのか不明です。実際に戦場へ投入する訳ではありませんので、分解もしませんので今後も不明のままです。
籐巻と胴輪の高さが均一になっているので、扱いに不都合はありません。
蕪巻が茶色に染められ、籐巻の茶色との調和がとれています。

 

蕪巻以下、長柄の様子です。
特に変わった装飾などが無い黒石目塗となっています。

 

石突金具が古式に則った形態の物になっています。

薙刀に装着される末広がりの石突(刃付がされている物もある)をイメージしているのでしょう。この〝スーパー長巻〟に惹かれたポイントの一つです。
「長巻 刃長一寸五分」の石突は武骨で強力でしたが、此方の石突で突かれた時の衝撃も相当なものであろうと推測します。

今後も各問屋さん・各店舗の皆様、長物の新商品開発に大いなる期待をしております。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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