2021.8.23 東京国立博物館・平成館1階ラウンジで模刻「十一面観音立像」をじっくりと観察してきました。

2021.8.23 東京国立博物館・平成館1階ラウンジで模刻「十一面観音立像」をじっくりと観察してきました。

東京国立博物館に2度目の特別展「国宝 聖林寺十一面観音―三輪山信仰のみほとけ」拝観に行ってきました。初回は観覧客が多かったこともあり、本物の十一面観音立像を近くからじっくりと鑑賞することができませんでした。ということで予約を入れて開場と同時に本物を愛でようとした・・・のですが、やはり人気の仏像でしかも本物ということですから、人集りができてしまいました。・・・もう、致し方ありません。

垂れ幕、変わらずのデザインです。
梁が大理石というのが洒落ていますね。今まで何度も訪れているのですが、気にしていませんでした。

さて、少々モヤモヤした心持ちで本物の鑑賞を終えた訳です。
売店も素通り、何も購入しませんでした。
そのまま帰る訳にもいかず(別件の用があった為)、だからといって特別展「聖徳太子と法隆寺」をまた観る気にもならず(こちらの方が長い行列ができていました)。

ということで、平成館1階ラウンジで孤独にポツンと立っていた模刻「十一面観音立像」のところに行ってきたのですよ。特別展・聖徳太子の入場待ちの人びとは係員の指示で行列をつくっており、模刻の周辺に人はほぼ皆無の状態でした。

 

もっと近づきます。

ほぼ独占状態で、模刻をじーっくりと観察しました。勿論、本物を観て脳内に残像を残していましたので、比較しながらの観察です。

 

180度、まわり込んで模刻の姿を撮影しました。
特別展・聖徳太子の列に並んでいた人びとには共感してもらえないでしょうが、とっても楽しかったのです。

 

以前も触れましたが、この像は東京藝術大学大学院美術研究科の朱若麟氏によって模刻制作されたもので、材料・構造技法を検証するため、可能な限り実物に近い技法で模刻研究されたものだそうです。この像の左手側に説明板が設置されていますので、ご興味をお持ちの方はご参照ください。

 

これまた以前、イスム様「十一面観音立像」(聖林寺モデル)の新旧比較や新版購入におけるオーディションで持ち運び可能サイズを観察したお話をアップしました。
結論としては職人さんが「手作業で一体一体塗っている」ということで、個体差が生じる=像それぞれに「個性が備わる」という認識で楽しめることが判りました。
本物サイズで、本物を強く意識して模造されています。迫力がありますよね(解ってくださる方がいらっしゃれば嬉しいです)。

シルエットが本物と(見た目は)ほぼ同じですよ。

 

本物は絶対に〝天照大神の恵み〟(陽射し)を直にあてることはしませんが、模刻ということでとても明るい環境で楽しむことができます。

 

顔面の金箔のヒビ割れなど、こんなにハッキリと肉眼で確認できます。

 

せっかく下から見上げているので、胸元から顔を観てみました。
金箔の剥がれ具合やヒビ割れ状況が丁寧に表現されています。

 

頭上の〝小さい顔たち〟の表情も、見上げる視点ではありますが、これまた肉眼で楽しむことができます。

 

〝後ろから〟だって抜かりはありません。恐るべし「模刻」っ。

 

両手の動きを入れた画像です。これまた迫力のある画になっていますね。

 

左手に持っている花瓶。

 

 

 

 

 

 

今度は左手。

 

本物は、薬指に損傷が確認できましたね。

 

下半身に見える〝柔らかな動きを見せる布〟の様子です。

〝天照大神の恵み〟(陽射し)が入ってきて、神々しく見えます。

 

 

本物は、多方向からスポットライトを浴びているので、金箔が剥がれた黒い箇所も金箔の残痕や下地の漆に含まれる粒子(カ?)でキラキラしているところがありました。

 

 

本物だと、腕から垂れている天衣は細かくしかも連続してヒビ割れが生じています。
模刻ですと、そのヒビ割れは最小限にされていますね。

 

最後に足元の様子です。

 

うお、蓮華台なのでブツブツまで再現されているっ。

光背を差し込む「枘穴」(ほぞあな)も、しっかりと再現されているっ。

 

模刻と侮ることなかれっ。
販売されている公式図録『国宝聖林寺十一面観音 三輪山信仰のみほとけ』に掲載されている本物の写真と見比べて楽しんでみてください。

まずいっ、原寸大の模刻が欲しくなってきたーっ。