十一面観音立像(聖林寺モデル イSムStandard 100体限定再生産)

東京国立博物館・本館特別5室で2021(令和3)年6月22日(火)~9月12日(日)、
奈良国立博物館・東新館で2022(令和4)年2月5日(土)~3月27日(日)の予定で
 特別展「国宝 聖林寺十一面観音‐三輪山信仰のみほとけ」
が開催される予定となっています。

 

イSム様は大和国聖林寺モデルの「十一面観音」を2013(平成25)年4月に販売を終了されましたが、再販要望が多数寄せられたということで2021(令和3)年3月に再版が実現しました。

聖林寺十一面観音が大和国(奈良県)を出るのは初めてということで、また東京への出張はおよそ3箇月の長きにわたるということで、極めて善きタイミングでの再販かと存じます。

以前にも触れましたが、イSム様公式HPに掲載されている旧版・十一面と新版・十一面の写真を並べると〝金色の色合いが異なる〟ことが判ります。

(イSム様公式HPより 左:取り扱い終了商品「イスム 十一面観音」/右:イスム スタンダードシリーズ「イスム 十一面観音」)

 

先日、東松山のロジスティックセンターにうかがって、オーディションにより連れ帰った再販(新版)の十一面観音が此方です。

旧版と比較すると、金箔を貼った箇所も、金色を塗ったところも全体的に明るい発色をしています。

 

360度、転回するとこの様な感じです。

 

 

頭上に配された「化仏」(けぶつ)の様子です。
十一面観音は本面を合わせて11面のものと、頭上の11面と本面を合わせた12面のものがあります。聖林寺・十一面観音は頭上の11面に本面を合わせた12面の観音になります。

十一面観音は、『十一面観自在菩薩心密言念誦儀軌経』では「十種勝利」(じゅっしゅしょうり:現世での利益)と「四種功徳」(ししゅくどく:来世での果報)をもたらす仏と位置付けられています。

頭部正面に阿弥陀如来の化仏を頂いています。

 

前方に菩薩面(ぼさつめん)3つ
  →穏やかに衆生へ楽を施す慈悲の表情
左側に瞋怒面(しんぬめん)3つ
  →眉を吊り上げ邪悪な衆生を戒めながら仏道へ誘う忿怒の表情
右側に狗牙上出面(くげじょうしゅつめん)3つ
  →閉じた口から牙を出しながら善行を積む衆生を督励して仏道を勧奨する讃嘆の表情
暴悪大笑面(ぼうあくだいしょうめん)1つ
  →悪行に対する極限の怒りにより悪に塗れた衆生の行いを大笑いで滅するという表情

聖林寺・十一面観音は頭上後ろの2面と後頭部・中央に位置していたであろう暴悪大笑面(ぼうあくだいしょうめん)が失われています。

 

表情を3方向から観ています。

 

 

左がイスム十一面・新版、右が聖林寺十一面(本物)の表情です。
金箔の罅割れ・剥落は置いといて、純粋に〝表情〟だけを見てみると、イスム十一面・新版が若干スッキリとした小顔になっているのが判ります。これは旧版と同様です。
本物の目付きが鋭さを醸し出しているのに対し、イスム十一面・新版は優しい表情の目になっています。

別の角度からですが、こちらも左がイスム十一面・新版、右が聖林寺十一面(本物)の表情です。
腫れぼったい感じの上瞼もイスム十一面ではしっかりと再現されていますし、目の形もほぼ同じラインです。それでも、本物の〝厳しい〟視線とは印象が違って見えてしまいます。
恐らくですが・・・、本物は輪郭がふっくらしていて、唇が「伏月口」(ふくげつぐち)であるため、顔全体として〝不敵な面構え〟(悪気は無いのです)であるのに対し、イスム十一面は独自のディフォルメでバランスを調整したところ、結果として本物よりも穏やか・優しい表情になったと推察致します。

精巧なコピーを制作している訳ではないので、良く造り込んではいつつも微妙な違いをつけて成形しているというイスム・インテリア仏像の醍醐味ですね。

顔の右側から観た、こちらも左がイスム十一面・新版、右が聖林寺十一面(本物)の表情です。
耳輪が特徴的な形をしており、耳の穴へ入り込んでいくような表現をしています。
耳朶環状(じだかんじょう)で、孔が大きめの表現になっています。
〝もみあげ〟の形が違っていますね。
そして横から観ると、顎から首元にかけてのラインは似せて造られていますが、頬の肉付き具合は本物が膨よかであることが判ります。イスム十一面は小顔化させていますので、表情がスッキリした印象になっています。

こんどは顔の左側から観た、こちらも左がイスム十一面・新版、右が聖林寺十一面(本物)の表情です。

顳顬部分の金箔剥落の表現が・・・本物と違います。
目の下から頬を伝っている太いヒビ割れのラインは本物に準拠していますが、それ以外はオリジナルのヒビ割れ・剥落表現になっています。
まぁ、本物の現状を忠実に再現するのは至難の業(というか不可能)ですので、ここは責めることはできないでしょう。

 

では次、胸部を観てみましょう。

本物ですと、金箔の上に年月を経た埃が乗っていますが、イスム十一面では埃の表現はなされていません。
胸の金箔が乗せられている部分には細かいヒビ割れの表現が入れられています。
本物の不規則かつ繊細なヒビ割れは、道具や塗りでは再現できません。これが技術的な限界でしょう(価格という観点からも)。

胸の金箔が乗せられている部分の表現は、斜めのほぼストレートなラインで切られています。
本物は胸板の形に合わせた曲線および散らした様な金箔残存状態です。散らした残存状態は塗りで補われています。

こうして観ると、意外と広背筋が張っています。それでいて腰元の括れがありますので、引き締まった身体のラインが美しく描かれています。

右手は垂下しています。数珠を持っていたか/持っていなかったかは不明です。

指の動きから、数珠を持っていたかも知れませんね。

 

左手では「水瓶」を持っています。
「水瓶」は、どの様な願い事でも叶える力を持つ功徳水で満たされているといいます。

そして、この水瓶に指されている蓮の蕾は〝煩悩の殻を割って、本来の清浄な心になる〟ことを意味しているのだそうです。

水瓶は、親指と中指・薬指で挟み、人差し指・小指を立てた状態で持っています。
水瓶のヒビ割れは、個体差(個性)が顕著に出る表現になっています。

 

大腿部を覆っている裳と、身体から腕に巻き付いている天衣の様子です。
襞の形態に合わせて金箔の残り具合が見事に再現されています。
本当に千年の時を越えてきた様な佇まいが滲み出ていますね。

右膝上あたりの天衣が破損しているのは、本物に準拠しています。

足元の様子です。
裾から足の甲にかけて、金箔が残っている状態を再現しています。
左右の腕から垂れている天衣は木屎漆で成形されたもので、その流麗な動きが表現されています。

台座は蓮華座・敷茄子(しきなす)・反花(かえりばな)・3段の框座で構成されています。

 

では、ここから背面の様子を観ていきます。

頭部を後方から観ています。
頭上の失われた2面が差し込まれていたであろう「ほぞ穴」が旧版同様に再現されています。

後頭部の様子です。
頭髪が綺麗に整えられています。耳が長いですね。
首の後ろ側も個体差が顕著な箇所です。此方の像は金箔が擦れている加工となっているものでした。個体によっては擦れた箇所に灰色っぽい彩色がなされているものもありました。
肩に掛かっている布のヒビ割れ加工は控えめになっています。

肩から腰にかけての画像です。
肩に掛かっている布は、本物ではもっと強く金箔が剥がれています。
こうして見ると、金色と黒色の対比が美しく感じることができます。

上半身に纏っていた条帛を折り込んで垂下している部分と、腰布の折り返しの襞が丁寧に再現され、この箇所の金箔の剥がし方は本物よりも金色が多く残ってはいるものの、実際に1000年経過したような表情を魅せています。

臀部から膝の辺りにかけての画像です。色合い的には本物準拠の箇所です。

裳の裾部分の様子です。
表現されている襞に合わせ、イスム十一面では自然な風合いを感じさせる様な金箔の剥がし・ヒビ割れがなされています。
本物のこの箇所は変速・不規則な金箔残存を見せており、その忠実な再現は困難です。そうした箇所は、イスム像では〝美しさ〟優先でアレンジがなされています。

 

普段ではあまり見ることができない後ろ姿を、3方向から観ています。
金色と黒色部分(実際は茶色がかっています)のコントラストがとても美しいのです。

 

上野の東博に出張してきた時、最近の展示で流行っている〝360度全方向〟から拝観・鑑賞できる状態なのか?それとも壁掛け式の光背を伴っての出張なのか?特別展がとても楽しみですね。

 

 

因みに、イスム様・東松山ロジスティックセンターで開催したオーディションの様子を先日掲載しましたが、連れて帰った十一面・新版は・・・

特徴から「受験番号①」だったようです。

 

さて、今年(2021年)は東京・上野で聖林寺十一面観音を拝観することができる訳ですが、来年以降で実際に聖林寺様を訪ね、その境内での拝観をしたいと考えています。
当然、ストーリーの展開から三輪山・大神神社にも足を延ばそうと思います。
ついでに「平等寺」様にも立ち寄ることも予定しています。何故なら、平等寺様は1982(昭和57)年に本堂再建にあたり聖林寺御住職より文化財史資料の提供がなされ、樹齢1500年の檜材を用いた十一面観音立像が復元されたのです。忠実な復元像ですので、聖林寺十一面観音よりも間近に拝見できるようですので、じっくり時間をかけて拝観するつもりでいます。

 

 

 

 

 

 

 

当サイト内のすべてのコンテンツについて、その全部または一部を許可なく複製・転載・商業利用することを禁じます。

All contents copyright (C)2020-2024 KAWAGOE Imperial Palace Entertainment Institute / allrights reserved