居合刀紹介 姫鶴一文字(匠工房シリーズ:小柄・笄無し)

なかなか江戸に出向く機会に恵まれず、そうしているうちにコロナ禍の状況下で江戸に行き辛くなってしまい、2年近くが経過してしまいました。
そんな状態でしたが、去る文月の終わり、そして葉月の中頃に上野の東京国立博物館を訪れることができました。平成館で大和国聖林寺の十一面観音立像を愛でたのですが、それ以外に江戸に出掛けた理由があります。
それは「か・た・な」にございます。およそ2年ぶりに「武装商店」様を訪れましたよ。東京国立博物館を2~3時間で駆け抜けたのは、その後、武装商店様にうかがうためでした。
ちょうど居合刀が集中的に入荷したところでしたので、なにか一振を購入しようと思い、HPで紹介されている画像を参考に吟味しました。まぁまぁ悩みまして、購入を決めたのは居合刀「姫鶴一文字」でした。

 

これまで問屋企画の既製品「姫鶴一文字」を2振、本歌の姫鶴をイメージした特注「姫鶴一文字」を2振の計4振を採り上げてきました。うち3振は小柄(こづか)・笄(こうがい)付の居合刀でした。小柄・笄が無かったのは暗朱鞘「スーパー姫鶴」だけでした。

今回は、最初から小柄・笄が装備されていない市販品「匠工房シリーズ 姫鶴一文字」のお話です。
通販などで入手することができるもののうち、柄巻が牛革(裏)の鶯(うぐいす)色、つまり明るめの深緑のものです。

抜き身の様子です。
刀身は超硬質軽量合金、腰樋が入っています。刃文はもちろん「姫鶴一文字」写しです。

 

では、各部位について見ていきましょう。

柄頭から、綺麗な鶯色の柄革が捻り巻きされている美しき柄の様子を見ています。
柄頭には水牛角製の頭が据え付けられています。
そしてこの柄頭に柄革がバッテンの形態で巻き掛ける「天正拵」(てんしょうこしらえ)となっています。

差し裏側からの柄成りの様子です。
通常居合刀の柄と比較すれば、柄の中央がやや細めに絞り込まれている「立鼓柄」(りゅうごつか)になっていますね。
片手打ちをする際、立鼓柄だと扱い易い(振り下ろし易い)です。実際は振り回したりしませんけれどね。

今までに無かった角度。柄頭から鍔元を見ています。
目貫が据えられている箇所が膨らんでいるのが判ります。
「上杉拵」(うえすぎこしらえ:鍔無しの合口拵)スタイルの居合刀は、往々にして細めの柄なので〝手に馴染む〟という表現を実感することができます。

柄頭周辺の捻り巻きがなされている様子です。
鶯色ということですが、この色は明るめのものです。
以前紹介したNPSカットラリー商会様制作の小柄・笄付「姫鶴一文字」も同じく「鶯色」なのですが、あちらはもっと〝渋め〟の強い深緑です。
現在、入手可能な姫鶴一文字(小柄・笄無)のうち「鶯」色といったら、こちらの明るい鶯色の物になります。
柄下地は黒鮫皮。既製品なので親粒無しですね。安価で良いので、小柄・笄無しの姫鶴が欲しかったので、こういう細かいところについては余り気にしないでいました。

今度は横向きの画像で、目貫を見ています。
黒塗り「龍図」の目貫です。
特注であれば金色を注してもらうなど、個性を注入していくのですが、ここは既製品なので特別なアレンジなどはありません。

 

〝鯉口を切り過ぎた〟状態です。
鐔の無い合口拵(あいくちこしらえ)の〝合口〟具合が如何なるものかの確認をするためです。

刀身を鞘に納めている途中の画像です。
あともうちょい刀身を鞘に入れていきます。

〝鯉口を切った〟状態です。
合口拵という設定なので、縁金具(へりかなぐ)と鞘がピッタリと合う様な感じがしますよね・・・。

う゛っ・・・。縁金具よりも鞘の方がちょっとだけ太いっ。

合口箇所を差し表側(左側)、差し裏側(右側)から接写してみました。
個体差があるということでしたが、今回購入した姫鶴は隙間が生じてしまいます。

この様に距離・角度を調整すれば、そんなに気にならない画像を撮ることはできるのですが、現物には隙間があります。
既製品の合口拵だと、合わせ目に個体差が生じることは致し方ないそうです。
こだわるのであれば「特注」でピッタリと合わさる様にお願いをすればよいのですが、居合刀だと限界があるそうで、本歌(本物)用、つまり真剣用の職人さんに頼まない限り隙間の無い合口拵は難しいのだそうです。もちろん本歌仕様にすると時間と代価が飛躍的に上昇します。更に本職の方々が居合刀の制作を受けてくれることは余程の事が無い限り難しいらしいです。

 

鞘は黒呂塗(くろろぬり)です。
下緒は純綿の茶色に緑の縁取りがある真田紐です。

 

縁金具(へりかなぐ)と鎺(はばき)のコラボレーション。左側が差し表、右側が差し裏側です。
縁は、ザラつき加工がなされている黒い鉄地金具のものです。切羽(せっぱ)を用いない、姫鶴用の金具でしょう。
鎺は、綺麗な金色の無地。「無地」なのは既製品だからです。
特注だったら、容赦なくレーザー彫刻を入れちゃいます。

 

鍔無し・切羽無しの姫鶴鍔元を、格好良いので角度を変えて見ていきます。

 

もっと近づいてみました。
光も当たって、金色無地の鎺が美しく見えます。

 

縁金具にいきなり鎺の画像です。つまり〝鐔・切羽が無い〟というのはこういう事です。
鞘の鯉口に接する部分が艶やかですので、とても美しく見えまする。
上杉拵の魅力のひとつですね。

 

本歌・姫鶴一文字の刃文を写したものだといいます。
「刃文の型」というのがあって、その型を当てながら刃文を研磨するのだそうです。
本歌の刃文の表裏をじっくりと観察したことはありませんが、本歌に準じているといわれていますよね。

 

 

以前は月一回、もしくは二箇月にいっぺんぐらいで武装商店様にうかがっていたのですが、間隔がだんだん長くなり、超・久し振りになってしまいました。
同時に入荷していた他の居合刀についても見せていただきましたし、前に特注をお願いした物について、今後の特注について・・・と、いろいろと「かたな」のお話を介し、たくさん学ばせていただきました。今後は機会をつくって、間隔を開けずにうかがいたいと考えています。
ちなみに、ここ最近の東京国立博物館における聖林寺十一面観音の拝観の後、いずれも武装商店様に直行していました、てへっ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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