居合刀紹介 長覆輪太刀「膝丸」

最近、とは言ってもコロナ禍の状況下となってから、居合刀を入手する機会はめっきりと減ってしまいました。以前、購入していて、他の太刀との比較で用いた物のお話をしましょうか。

 

問屋企画品「薄緑」(うすみどり)を、武装商店様がアレンジを加えて長覆輪太刀「膝丸」(ひざまる)と命名された一振にございます。

鞘に収まっている全体像はこの様な感じです。
柄・鞘が濃い茶潤みで塗られ、金具はいずれも燻し銀仕様となっています。
太刀緒は安価な黒・木綿、太鼓革もまた安価な茶色の物を装着しています。
この結果、太刀拵としては驚きの49,490円(購入時)でした・・・が一時値上がりして52,140円、・・・そして現在では66,330円(税込)となってしまいました。それでも、太刀拵の価格としては破格の安値なのですよ。

 

 

抜き身の状態は、この様な感じです。
刀身は樋無し、刃文は直刃(すぐは)に互の目(ぐのめ)が入る二重刃文です。
樋の無い刀身は、まるで本物の様な佇まいがありますので嬉しいですね。
単体では気付きませんが、打刀の刀身と比較すると茎(くき)に近い所から反り(そり)が始まる「腰反り」(こしぞり)の刀身となっています。
蛭巻風太刀の手掻包永(てがいかねなが)も同じ刀身ですね。

 

 

柄頭の金具です。唐草文様が彫られています。
彫りの無い、猿手(さるで)が装着されています。

 

 

 

柄(差し表)に装着されている大きな龍の目貫、そして飾り目釘です。
全体が「茶潤み」の塗りということになっていますが先の柄頭の画像と、この柄の画像を見ると黒にも見える塗りになっています。
そうなんです。茶潤み塗りですが、角度によって黒っぽくも見えてしまう塗りなのです。
意図的な塗り・色合いではなく、全くの偶然の産物です。
通常の明るめな茶潤み塗りであれば「そのうち買えばいい」くらいにしか思わなかったのですが、個体差レベルで生じた〝個性を有した一振〟ということで連れて帰ってきました。
次の機会に同じ物に〝出逢う〟ことができるとは限りませんからね。

 

 

 

柄頭の金具とお揃いの縁金具です。唐草文様が彫り込まれています。
鐔は一般的(標準的)な太刀鐔です。「燻し銀」仕様です。
この画像だと、茶潤みっぽさが感じられますね。

 

 

 

柄を「上から」観ています。

柄の上下を覆っている金具の様子です。
あまり気にする箇所ではありませんが、今回はしっかりと拡大してみました。
この覆輪(ふくりん)にはガッチリと唐草文様が続いています。
覆輪に施された唐草文様は、どうも3パターン存在するそうです。機会があれば確認してみますね。
金色のパーツは飾り目釘です。右下に見えているのが大型の龍目貫の爪です。

 

 

 

ちょっと引いて観た画像です。

大きい龍の目貫は差し表・裏で、この様にずらして装着されています。
特注で太刀拵をお願いする際には、いつも目貫は表裏同位置に据えてもらっています。または毛抜形(型)の目貫を埋め込んでいる太刀を選んで購入しています。ですから目貫の位置がずれている太刀は、当御所においては逆にレア。
こうして上から見ると、柄と目貫の間に隙間が確認できるので、何時取れてしまうかという懸念があります・・・。

 

 

 

柄の全体像を観ています。

暗めの茶潤み、燻し銀の覆輪。その中で強めに主張する金色の飾り目釘。
なかなかスタイリッシュな顔(柄)ですね。

 

 

 

では、抜き身にして各パーツを観ていきましょう。

まずは太刀鐔。
美術刀・居合刀規格の陣太刀でよく用いられている「猪の目透かし」(いのめすかし)鐔。
四つ角に「ハート型」の透かしがあり、これが猪の目に似ている(?)ということから、その様に呼ばれています。
時間の経過と共に「燻し銀」が更に燻されて、一層渋くなっていきます。

切羽は、銀色の標準サイズ・形式の物です。
何をしている訳でも無いのですが、銀色の切羽はこの様に変色してしまいます。小忠実に手当をする必要がありますね。まぁ、この画像の様になってしまっては〝後の祭り〟ですがね。

 

 

 

鎺(はばき)は、標準サイズ・形の銀色無地の物です。全体と色合いがマッチしています。
特注ではなかったので、鎺にレザー彫刻で模様を入れてもらうことはしませんでした。
・・・とは言いながら、特注でない刀の鎺に容赦なくレザー彫刻を入れてもらうことは、よく頼んでいました。てへ。

 

 

 

刀背(峰)の部分です。標準サイズですから身幅も普通です。

鐔元から切先にかけてを観ています。

 

 

 

差し表側から見た刀身の様子です。鎬刀身は綺麗ですね。
直刃に、細やかな互の目が入っています。
刀身は通常よりもやや細めな印象を受けます(印象だけでなく、実際に細め)。

 

 

 

直刃に互の目を重ねた二重刃文が、しっかりと見て取ることができます。

 

 

 

切先にかけても二重刃文が、しっかりと見えています。

 

 

 

切先は、こんな感じ。本物の斬れる刀身に見えてしまいます。

 

 

 

こんどは差し裏側から刀身を見ていきます。

手前から切先まで、二重刃文が綺麗に出ています。

 

 

 

 

差し裏側からの切先部分です。
思った程、鋭さを伝えることができなかったです。

 

 

 

 

鞘に装着されている一の足金物から柄頭を観ている画像です。
茶潤みとも黒とも断言し難い、どちらとも言える善き塩梅の塗りですなぁ。

 

 

 

鐔元から鐺(こじり)までの鞘の姿を観ています。
一の足金物・二の足金物の間が、通常の太刀よりも広く採られています。

 

 

 

実際に太刀を佩(は)く時、一の足・二の足金物の間が狭いと太刀の前後(柄頭・鞘鐺)が横にぶれてしまいます。つまり腰から吊しても安定しないのです。
武装商店様で販売されている太刀は、佩いた際に安定することを優先して金物間の距離を広めに採られています。
これなら安心して全力疾走する馬上でも太刀が佩けますね。
因みに、この画像を見ると、太刀緒を太い革製の物に替えてもらえば良かったと後悔しちゃいます。

 

 

 

横から足金物を拡大して観ています。
柄頭・縁金具・鐺とお揃いの唐草模様が彫られています。接合部分には猪目(いのめ)の模様が透かされています。

 

 

 

太鼓革から足金物、そして覆輪を観ています。
この画像を見ると、太鼓革をもっと立派な黒い革の物に取り替えてもらえば良かったと〝ちょっとだけ後悔〟しちゃいます。

 

 

 

足金物を下から観ています。
金具は鞘を挟んでから、下部で接着している様です。

 

 

 

鞘を上から見て、足金物の先、鐺に向かって施されている覆輪の様子です。
拡大した画像で見た様に、細やかな唐草模様が覆輪全てに彫り込まれています。

 

 

 

ちょっと鞘の角度を変えてみました。
燻し銀の覆輪・金具と黒っぽい茶潤みの地味・渋さの調和が美しく語りかけてくるかの様です。

 

 

 

鐺金具の様子です。覆輪を押さえ込む様に鐺が被せられています。

 

 

 

拡大して観ると、鐺金具にも細かい装飾・彫りがめぐらされているのが判ります。

 

 

 

最後に、鞘の鯉口金具の様子です。
柄頭・縁金具・足金物・鐺とお揃いの唐草文様が彫られた金具です。

 

 

 

結構、この「膝丸」太刀についての問い合わせが多く寄せられているそうです。
やはり、太刀は数振り欲しいですからね。
既存品が
 問 屋 規 格 品  … 「薄緑」:茶潤み塗りに金の長覆輪。
 武装商店様アレンジ品 … 「膝丸」:茶潤み塗りに燻し銀の長覆輪。

ということは
 ・黒塗りに金の長覆輪
 ・黒塗りに燻し銀の長覆輪
 ・黒塗りに銀の長覆輪
というアレンジもできるハズ?
以前、武装商店の店主様に「塗りの色は変えることができますか?」と問い合わせたことがあります(金色・銀色の塗りはできるのか否か)。
すると、この太刀(薄緑・膝丸)は〝この色で何振りも製作することで安価で提供できる〟ので色変えは対応していないのだということでした。

チャンスがあれば、上記の3種類ができるかどうか、問い合わせてみますね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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