制多迦童子(イSム「掌」1st. Ver. 廃盤)

2012(平成24)年6月に発売が開始され、いったん2014(平成26)年に販売を終了したTanaCOCORO[掌] 制多迦童子(1st. Ver.)のお話です。

紀伊国高野山金剛峯寺に伝わる、伝運慶作の制多迦童子がモデルとなっています。
八大童子の第8番目で、通常は不動明王の脇侍として、向かって左側に立っています。

 

「八大童子立像」とは高野山の一心院谷(いっしんいんだに)にあったという不動堂に安置されていた童子群像で、平安時代末期に造立された不動明王坐像に随侍していたそうです。八大童子のうち、烏倶婆誐童子・清浄比丘・恵喜童子・矜羯羅童子・制多迦童子・恵光童子の6軀が当初の姿であり、失われた2体(指徳童子・阿耨達童子)は南北朝時代のものに代わっています。

 

『聖無動尊一字出生八大童子秘要法品』(しょうむどうそんいちじしゅっしょうはちだいどうじひようほうぼん)によれば、八大童子とは忿怒の姿で衆生を導く不動明王の眷属として位置付けられ、大日如来が持つ四智(しち)・四波羅蜜(しはらみつ)をも表現したものと説明されているそうです。更に行者を守護して、行者が得た利益(りやく)を衆生に回向(えこう)する存在とも言われています。

 

さて、制多迦童子(1.st Ver.)を回転させます。主に前面の様子です。

 

こちらは主に背面の様子です。

その身体は紅蓮華色(ぐれんげいろ)に彩られています。

 

 

『聖無動尊一字出生八大童子秘要法品』では「瞋心悪性之者」(怒りで目を剥き出す悪性の者)と説かれていますが、制多迦童子が「悪性の者」ということではなく、不動明王が真の心を知らぬ衆生へ忿怒の心を以て接することによると解釈されることが多い様です。表情からは〝怒り〟の感情を読み取ることは可能ですが、表現そのままの「悪性」という印象を感じるのは難しいかと思います。

表情はカッと目を見開き、口を硬く閉じて左前方を見据えています。
本物は玉眼が用いられ虹彩を黒く、その周りを朱色で塗り、周縁を黒色で縁取っています。

五智如来の「五智」示す五髻(ごけい)を結っています。
『聖無動尊一字出生八大童子秘要法品』には「頭結五髻 一結頂上之中、一結額上、二結頭左右、一結頂後 表五方五智」とあり、頭頂部の1結び、額の上の1結び、頭の左右に2結び、頭頂部の後ろに1結び、それぞれが「五方五智」を表現しているのです。

 

制多迦童子は上半身が裸形で、肩帛(けんぱく)を懸け、左右の腕にそれぞれ腕釧(わんせん/臂釧:ひせん)を装着しています。

肘を上に曲げた左手には三鈷杵が握られ、右腰脇に据えられた右手で握った宝棒は右肩に掛けられています。

 

左手に握られた「縛日羅」(ばさら)、つまり金剛杵(三鈷杵)の様子です。
一般的な三鈷杵とは少々形を異にしています。
掌を上に向けているので、4本の指を軽く添え、小指を立てた状態です。

 

肩帛の結び目からその先端にかけて、軽やかな布が見せる翻りを見事に表現しています。
右手で握っているのは「金剛棒」(宝棒)と呼ばれる武器です。
金剛峯寺の制多迦童子のチャーム・ポイントは「太鼓腹」(ぽっちゃりとしたお腹)です。
「十五歳童」の如き矜羯羅童子と同様に、制多迦童子も同じくらいの「童子」の如き姿ということですが表情や装い、持ち物からはまったく童子らしさを感じることはありません。けれども、この太鼓腹に象徴される膨よかさが子供っぽく、愛らしいのです。

 

腰からの下半身は少々左側へと捻りを見せています。
腰布の結び目とその先端の布の揺らめき、そして着用している裳の翻り。
静止している像ですが、この着衣の写実的なたなびきの表現が立体感だけではなく躍動感をも主張しています。

 

背中から足元にかけての様子です。
裸形の上半身が膨よかであるのに対し、動きのある着衣の表現が巧妙であるので下半身が引き締まっている様に見え、全体のバランスが整っています。

着裳と腰布が重なっていますが、腰布が硬め(厚め)の布であり、裳の裾をたなびかせることで薄目の布であることが表現されています。

制多迦童子の着裳の縁には「雲唐草」模様が、「四ツ目菱入り七宝繋ぎ文」を地にして5花による「団花文」(正面形4弁花が1つ、斜面形蓮華が4つ)と四弁花丸文が繊細に施されています。

下半身は着衣によって引き締まっている様に見えますが、裸足と足首の2本皺は〝ぽっちゃり感〟を隠し切れていない〝お茶目ポイント〟になっています。

 

 

 

 

 

 

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