風神・雷神(海洋堂 miniQ ミニチュアキューブ005)

ここ近年のうち、〝平面絵画の題材を立体化〟したフィギュアが発売されています。

例えば、
・「フリーイング(FREEing)」様より
 「figma テーブル美術館 写楽作 三代目大谷鬼次の奴江戸兵衛」

・「海洋堂(KAIYODO)」様より
 「美術作品立体図鑑 鳥獣戯画製 塗装済み完成品」

・「カプセルトイ」様より
 「鳥獣戯画 ガチャガチャ カプセルトイ」

・「奇譚クラブ(Kitan club)」様より
 「PUTITTO 鳥獣戯画」

・「海洋堂(KAIYODO)」様より
 「miniQ歌川国芳の金魚づくし『酒のざしき』」

等々が知られていますね。

 

今回は、「海洋堂」様より2018(平成30)年1月に発売された「miniQ ミニチュアキューブ005 風神 雷神」です。

谷口順一氏の原型制作で、京都建仁寺所蔵(京都国立博物館寄託)の俵屋宗達(たわらやそうたつ)の国宝「風神雷神図屏風」に描かれている風神・雷神を立体化しています。

 

「カプセルQ」で発売されていたものを〝専用箱〟に入れて販売したものといいます。
金地の屏風をイメージした背景に、左の雷神、右の風神がまるで浮いているかの様に納められています。この箱に入ったまま飾っても、何ら違和感を感じないディスプレーとなっています。

 

上から見ると、こんな感じ。

 

 

側面には、それぞれ雷神・風神の姿が載せられています。

 

 

箱の背面には、商品の詳しい説明等が掲載されています。
サイズは小さいながらも、詳細までを意識して製作されているのが判ります。

 

 

箱から取り出してみました。

 

 

金屏風をイメージした紙を、背景として置いてみました。

 

 

雷神・風神を取り出して、置いています。
〝解放されて〟自由になった雷神・風神の姿です。

 

 

 

まずは「風神」を観察しましょうか。

下から見上げる視点で観ています。
まるでたった今、屏風(絵画)から飛び出してきた様な姿で、このまま軽やかに、どっかへ飛んでいってしまいそうです。
〝平面を立体化〟するだけでも難儀なことなのに、素晴らしい程に躍動感あふれる風神となっています。

 

 

顔の正面に視点を合わせています。
目がギョロッとして、恐そうな鬼の顔なのですが、口が笑っている様に見え、表情がとてもユーモラスなものになっています。
風を受けて頭髪が逆立ち、後方へと流れています。
前頭部中央には一本の角が生えています。
両手で「風袋」を匠に操り、自由自在に飛び回っている姿です。

 

 

ジッとしてはいられないんです。もう左側へと飛んでいってしまいそう。
胸と腹は緩んでいるのですが、両腕・両足は筋肉が発達し、パンパンに張っています。
着衣のたなびき方も見事で、風神の飛んでいるスピード感を演出していますね。

 

 

 

 

屏風という平面空間に描写されている風神(雷神も)を立体化するに当たり、最も難儀なのが絵画では〝見えない(描かれていない)〟背面の様子の復元です。
パソコンによるデータ処理も用いられているのでしょうが、それでも立体的な造形を整える苦労はあったと想像します。
飛んでいる風神の躍動感を損なわない様に、身体の各パーツの形態、風袋と着衣の形状が〝見えている〟屏風からの情報を活かしながら整えられたのでしょう。
俵屋宗達がモデルとした風神は複数だと考えられていますが、この風神フィギュアを観ていると、実際にこの姿をした風神を見ながら屏風絵を描いたのではないかと錯覚してしまいます。

 

 

この後ろ姿、〝飛んでいっちゃった〟感が伝わってきますね。
この後ろ姿、想像によって成形されたものなのですよ。
何と見事な後ろ姿なのでしょう。

 

 

 

では次、雷神を観ていきましょう。

下から見上げる視点で観ています。
俵屋宗達が雷神の肌に選んだのが「白」ということは、高く評価されています。
所々に墨を入れて陰影を表現していますね。
下から見上げていることと、顔にも陰影が強く出ているために屏風の表情よりも「刺々しい」表情になっています。
両腕・両足は風神と同様に、筋肉パンパンに張っています。

 

 

顔の表情が判りやすい様に、近づいてみました。
屏風に描かれている如く、牛の様な角を2本生やし、金色の鉢巻きを締めています。
頭髪は太鼓を乱れ打ちしているかの様に逆立ち、そして後方に乱れながら流れています。
彫りが深く、その上で陰影があるために目玉がギラリと暗い中から浮かび上がっています。
開いた口の中も赤いため、ユーモラスな風神とは異なり、雷神は不気味な顔立ちになっています。

 

 

円環状に小太鼓を連ねた雷鼓を背負い、両手には鉄アレイにも似た桴を握っています。
見えていませんが、雷鳴を轟かせているのでしょうな。

 

 

 

 

屏風では見ることができない、横からの風神の姿です。
着衣が風にたなびく様を、立体化するとこの角度・長さになるのですね、スゴイ。

 

 

これも屏風では見ることができない、雷神の背後の姿です。
上へ下へと衣が変則的に伸びていくのは、雷神が雷鼓を叩くことで生じた風圧によるものでしょうか。
雷神は、前面よりも後方から見た姿が躍動感溢れていました。

 

「miniQ ミニチュアキューブ005 風神 雷神」のサイズは小さいのにもかかわらず、造形は屏風絵の姿に基づきながら、想像で見えない箇所の立体化を見事に実現しています。
定価は3,000円前後でしたが、通販だと時期によって5,000円程になることもありました。残念ながら現在は売り切れになっている様です。

 

 

 

 

 

 

 

 

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