ほぼ原寸大「把頭飾付有柄銅剣」(長門国)

佐賀県・吉野ヶ里遺跡で発見されたことで有名になった「有柄銅剣」。
かなり前のことです。稀にオークションで出品例があったのですが、タイミングを逃し続けて入手できない状態が続いていました。そこでオークションを離れてWEB上で検索していたところ、

 山口県 「骨董アトリエ青丘」様(http://www.c-able.ne.jp/~sei-kyu2/)

で「銅剣レプリカ」という商品名での販売を発見しました。

吉野ヶ里遺跡の保存を決定づけた有柄銅剣の出土が1989(平成元)年でしたが、山口県長門市向津具地区の王屋敷遺跡では、1901(明治34)年に行われた台風後の地滑復旧工事において、五輪塔の下からすべて一体化している有柄銅剣が出土していました。1956(昭和31)年に国の重要文化財に指定されています。

現時点で日本国内における有柄銅剣の出土例は、
 山口県長門市 王屋敷遺跡   (1901年出土 把頭飾付有柄銅剣)
 福岡県前原市 三雲南小路遺跡 (江戸時代出土 有柄銅剣)
 佐賀県唐津市 柏崎石崎遺跡  (明治時代出土 触角式有柄銅剣)
 佐賀県神埼郡 吉野ヶ里遺跡  (1989年出土 把頭飾付有柄銅剣)
の4例のみです。

「アトリエ青丘」様が有柄銅剣レプリカを制作・販売されるには、こうした地理・歴史的にも由縁があるのです(・・・と考えております)。

               (画像は「骨董アトリエ青丘」様HPの「アンティーク」より引用)

先ずはメールにて問い合わせをさせていただきました。
アトリエ御主人からの御丁寧な返信をいただき、商品の説明や納期、支払い等に関する手続きについてご教示を頂戴しました。

アトリエ御主人のお知り合いの鋳物職人さんが制作される、全長約45㎝の有柄銅剣レプリカだということです。また塗料による腐食状況再現をしたレプリカであるため、製造当初の艶がある状態ではないことを確認されました。青銅製祭器の〝ほぼ原寸大〟レプリカ、特に〝有柄銅剣レプリカの販売〟というのは「アトリエ青丘」様だけでしたので、腐食再現レプリカでも構わない旨をお伝えし、制作に入っていただきました。

 

山口県長門市の王屋敷遺跡出土の把頭飾付有柄銅剣をモデルにした、全長およそ45㎝です。
以前(6/25)に紹介したペーパーナイフが実物の1/3サイズでしたから、此方のほぼ原寸大レプリカは圧倒的な存在感を示しています。

 

剣身部分の拡大画像です。
剣身全体が細身で、剣という武器として実用的な物であったことが推測されています。
・・・とは言っても、実際に戦場での闘いで使用した訳ではなく、携帯することで権威の可視化を狙ったものではないかと考えられています。

 

剣身と鍔元の様子です。
剣身は、鍔元で括れており、そのまま鍔・柄と繋がっています。
往時の抜き身は、磨かれ輝いていたでしょうから、弥生時代の人びとにとって視覚的な威圧感は相当なものであったでしょう。

 

鍔の剣身側(下向き)は、平らな面になっています。
鍔の柄側(上向き)は、柄を握ったときに〝手に馴染む〟よう膨らみが施されています。
高貴な身分の支配者が使用する物ということで、こういった配慮がなされているのでしょう。

 

鍔元から柄部分の拡大画像です。
〝握り易さ〟と〝手に馴染む〟ように突起が柄の中央部を一周しています。
上の十字形が「把頭飾」(はとうしょく)と呼ばれる装飾部分です。
握ってみると、この造形が、この銅剣の扱い易さを実感させる工夫を含んでいることが実感できます。

 

柄部分を、視点を変えて見た画像です。
木製の鞘に収められていたと考えられていますので、この柄頭から鍔元までが〝権威の可視化〟部分として輝いていたかも知れません。

吉野ヶ里遺跡「北墳丘墓」内の1002号甕棺から出土した有柄銅剣は、出土状況が明確な物としては唯一のものということで貴重な遺物とされています。刃の部分には繊維が巻かれており、この繊維が「絹」であることが判明しています。『魏志』倭人伝の記載と、この弥生時代の「絹」の関係なども興味深いものです。

 

柄の部分を真横から見た画像です。
使っているうちに鍔元が擦れて変形したのか、それとも制作当初から手に馴染むような加工がなされたのかは不明です。
把頭飾の部分が、意外と頑強(分厚く)に造られていることが判ります。

 

把頭飾の部分に焦点を合わせた画像です。
先にも述べましたが、〝権威の可視化〟部分です。
磨かれて光り輝いていたのか、それとも彩色が施されていたのか・・・
弥生時代のロマンの拡がりが止まらなくなってしまいます。

 

把頭飾を上部から見た画像です。
把頭飾部分に見える窪み(溝)にも何かしらの意味があったのでしょう。

 

この有柄銅剣レプリカのサイズが判り易い様に握ってみました。
弥生時代の剣は〝意外と短め〟なのです。

鋳型に溶かした青銅を流し込み、冷え固めて鋳型から外し取っていますから「鋳巣」(いす)がところどころにあったことでしょう。
腐食再現の塗料をかけるのは鋳巣を目立たなくする工夫だと考えられます。
実際に納品された有柄銅剣レプリカは、バランスも込みで造形が整っており、腐食・緑錆の生じ具合が塗料によって見事に表現されていて、〝出土した遺物を手にしている〟感覚を楽しむことができます。本物だと直に触ることはできませんし、維持・管理も大変です。

現在も「骨董アトリエ青丘」様のHPに、「銅剣レプリカ」の商品名で掲載されておりますので、ご興味をお持ちの方はお問い合わせいただき、制作依頼をしてみてください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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