孔雀明王(イSムStandard・廃盤)

モデルは奈良県奈良市の東南郊・山間に位置する正暦寺(しょうらくじ)の福寿院に納められている鎌倉時代制作の孔雀明王(県指定重要文化財)です。

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孔雀明王の元は、インドの女神で梵名「マハーマーユーリー」(偉大なる孔雀の意)で、明王の中で最も早くインドで成立したそうです。

人間にとっての諸毒を除去してくれる孔雀を神格化し、両翼を広げた孔雀の背に乗っている孔雀明王は、穏やかに慈悲相をたたえ、災厄や人々の苦痛を除きつつ、さらに人間の煩悩を祓う功徳を持つ明王とされました。

歴史的に見ると、598(推古天皇6)年8月1日、朝鮮半島の新羅がヤマト政権へ「孔雀一隻」を献上したとあります。記載からは〝信仰対象としての明王〟という要素は未だ無かったようです。
仏教説話集『日本霊異記』(にっぽんりょういき)上巻の第二十八に「孔雀王の咒法を修持して異しき験力を得、以て現に仙と作りて天を飛びし縁」という逸話があり、修験道の開祖・役小角(えんのおづぬ)が40歳を過ぎるあたりに孔雀明王の呪法を修めていたとあります。役小角(634?~701?)は実在の人物で、〝役小角が40歳を過ぎる〟というのは、634年生まれだと天武天皇の治世下の674年以降のことなります。
光仁天皇の治世下の780(宝亀11)年成立の『西大寺資材流記帳』を見ると、西大寺薬師金堂に「孔雀明王菩薩像二軀各六尺」とあり、像高約181㎝の孔雀明王像が2体存在していたことがわかります。

以上から、日本列島において孔雀明王が信仰対象として祀られたのは『日本霊異記』の記載から早くみて白鳳時代、史料の信憑性から奈良時代には確実に存在していたことが推測できます。

孔雀明王は、孔雀の背に据えられた蓮華座(れんげざ)に、結跏趺坐(けっかふざ)した姿であらわされています。

孔雀は「上尾筒」(じょうびとう)と呼ばれる尾羽根の付け根の上側(人間だと腰にあたる)を覆う羽根が変化したもの(尾羽根ではない)を広げ、雌に求愛するのだそうです。この上尾筒が、孔雀明王の光背の代わりとされています。

 

上尾筒という飾りの羽根には目玉の様な模様(眼状紋:がんじょうもん)があります。
これに関して、ギリシア神話において最高位の女神ヘーラーが巨人アルゴスの死後にその目を取り、ヘーラーが飼っていた孔雀の羽に飾って以来、孔雀は上尾筒に百の目を持つようになったという逸話があります。

両翼を広げ、キョトンとした面白味のある表情をしています。

孔雀はインドの国鳥で、人間にとって害を為す毒草や、猛毒を持つ蛇・蠍・蜘蛛・虫などを捕食する益鳥・吉鳥と認知されています。このように神経毒に耐性を持つことから転じて孔雀は邪気を払う象徴とされたそうです。

また、インドでは蛇や毒は「煩悩」を象徴するとされていたため、それを捕食しても毒にあたらず、美麗さを維持し続ける孔雀には霊力が備わっていると考えられるようになります。
人間の煩悩は「三毒」とされ、
 貪(とん)…貪欲。必要以上に貪りを求む心を意味します。
 瞋(しん)…瞋恚(しんに)。怒り、憎いと表現されます。
 癡(ち)…真理に対する無知の心。愚かと表現されます。
孔雀はこれらを喰らい、人々を仏道に成就させる功徳をもつのだそうです。

 

     ( 左:イSム孔雀明王             右:正暦寺孔雀明王 )

仏教において、明王は厳しい憤怒の表情(憤怒・忿怒相)をみせる男性的な容姿となっていますが、女神を起源とする孔雀明王は唯一武器を持たずに慈愛に満ちた柔和・穏和な優しい表情をみせる容姿となっています。
正暦寺孔雀明王は、彩色の退色具合にもよりますが、慈悲相/菩薩相と謂われてはいるものの、優しいというよりも泰然とした表情に感じます。
一方、イSム孔雀明王は、彩色もあるでしょうがシャープかつ端正な顔立ちをしています。

胸部の装飾は、正暦寺孔雀明王は立体的な物を装着しています。イSム孔雀明王は簡略化、胸部と一体化されていますが詳細な表現になっています。

     ( 左:イSム孔雀明王            右:正暦寺孔雀明王 )


正暦寺孔雀明王は「一面四臂」(いちめんしひ)の姿となっています。

第一の右手には、仏の慈悲をあらわす「蓮華」を持っています。

第二の右手には「倶縁果」(ぐえんか)。柑橘系の果実と考えられ、これを食すると気力増進が為され、さらに魔を従え、人間の煩悩をも祓うとされています。
イSム孔雀明王では、正暦寺孔雀明王と同様に「輪宝」(りんぽう)を手にしています。

第一の左手には「吉祥果」(きっしょうか/きちじょうか)。これは石榴(ざくろ)で表現されることが多い、魔を降伏(ごうぶく)する霊力があるめでたい果実です。

第二の左手には、災難除去と招福を象徴する孔雀の羽を持っています。

      ( 上3枚:イSム孔雀明王    下1枚:正暦寺孔雀明王 )

正暦寺孔雀明王の宝冠は凹凸が見てわかる装飾で、火焔装飾の鋭さが目立ちます。
イSム孔雀明王の宝冠は平打ちながらも、装飾の形態は現物と同形になっています。サイズと価格という制約があるものの、宝冠の再現具合は称賛に値する緻密さです。




































































・・・十二神将は、今度は孔雀明王から指示を受けているようです。何かの打ち合わせでしょうか?

 

 

 

 

 

 

 

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