残念ながら、既に倒産してしまった「株式会社トップアート」様から発売されていた「聖観音」 のお話です。
「株式会社トップアート」様は1951(昭和26)年6月に創業された美術工芸品の販売会社でしたが、2016(平成28)年11月に破産手続開始、2017(平成29)年6月には通販業務の一部を「株式会社東京書芸館」様が受け継がれたそうです。
具体的なことは解りまかねますが、「株式会社トップアート社」様の商品はオークション・サイトでしか入手できない状況となっています。
では、「株式会社トップアート」様の大和国薬師寺東院堂モデル「聖観音」のお姿をご覧いただきましょう。

赤味がかった銅色の身体に、経年で煤が蓄積してしまった様子が表現されていますね。
同色の下地が、イイ塩梅で見えています。
背景を黒くすると、

銅色部分が際立ちますね。
全てを黒色で塗りつぶしている訳ではなく、また銅色が強過ぎないという絶妙のバランスです。
光背を付けて、360度回しています。

光背は型抜きしてつくった様で、金色のベタ塗りです。
グラデーションを付けていない為、聖観音の存在が目立つという効果が出ていますね。
なかなか素敵な手法ですね。

本物は宝髻に化仏がけいていたと推測されていますが、そうした意匠は再現されていません。
眉間中央の白毫は、黒く塗られています。
頭髪の生え際と白毫の間、本物に準じて波線形の模様が立体的に再現されています。
口髭も同じく立体的に表現されています。

胸元には瓔珞を着けています。
この画像では見辛くなっていますが、瓔珞には緑青色が注されているのです。
近付いて観察すると、手間が掛かる彩色が施されているのですよ。
左手は、親指と人差し指で蓮茎を摘まんでいる様子だそうです。

指の間に手足指縵網相がありますね。
胸部や左の掌(てのひら)に垣間見える銅色が、肌の質感を表現していますね。
メタリックな色合いが不思議と肉体の柔らかさを感じさせてくれます。
薬師寺東院堂モデルの聖観音は、両手の位置が一般的な聖観音と逆になっているのだそうです。

手の位置によって、
・三尊形式の左側の脇侍
・左右対称の単身像
といいう2つの解釈が想定されているそうです。
軽やかな裳、身体に巻き付く天衣、腰から垂れ下がる瓔珞が複雑ながらも調和のとれた重なり具合を見せています。


着衣の状態でも、白鳳時代に造られた人間の身体に近付いていくシルエットが見事に表現されていますね。
左右対称・細身に身体が特徴の飛鳥仏とは異なり、

実際の人間の身体と同じ様な造りになっていますね。
以前、「イSム」様の「聖観音」を観察しましたが、光背はありませんでした。
違う黒色を7層にも塗り重ねている、黒っぽい像でした。

「株式会社トップアート」様の「聖観音」は、彩色の詳細は不明ですが、銅色が特徴、つまり個性になっています。
同じ像でも、製作した会社が違えば、その表現には会社の主張・個性が現れます。
そうした個性(違い)を楽しむことも、仏像エンターテイメントならではの遊び方ですね。
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