「蕨手刀」ペーパーナイフ(陸奥国)

奥州市埋蔵文化財調査センターの受付兼売店で販売している「蕨手刀(わらびてとう)」ペーパーナイフのお話です。

 

奥州市埋蔵文化財調査センターは、桓武朝が実施した蝦夷征討のさなか、802(延暦21)年に征夷大将軍・坂上田村麻呂が構築した軍事拠点・胆沢城跡に隣接する施設です。
胆沢城は、陸奥国の国府が置かれた多賀城(宮城県)から蝦夷征討の軍政機関「鎮守府」が移された、朝廷側の蝦夷征討大本営でした。
胆沢城跡は1922(大正11)年に国の史跡に指定、2002(平成14)年には胆沢城造営1200年後ということで各種イベントが開催されて胆沢城と坂上田村麻呂に降伏した蝦夷の首長層だった阿弖流為(あてるい)の認知度が向上したといいます。2019(令和元)年6月、外郭南門両脇の築地塀(ついじべい)と、南大路の一部が復元され、「胆沢城跡歴史公園」の開園となりました。

以前は道路を挟んで調査センターの斜め反対側に、大きめの看板が立てられ、遺跡も整地され、建物跡に標識が設置されてはいるものの、大規模な復元がなされている志波城と比較すると〝寂しい〟感じがしていました。
歴史公園としてのスタートが良い契機となり、今後も段階的に建物等の復元が実現することを期待しています。

「胆沢城跡歴史公園」がオープンしてからは未訪問なので、近日中に鎮守府・胆沢城(跡)を訪れようと考えています。

 

さて、奥州市内の南部鉄器工房で製作されている「蕨手刀」を模したペーパーナイフを今回、初めて袋から出してみました。購入してから5~6年ほど放置していました。

蕨手刀の本体を模しており、鞘はありません。

佩刀(はいとう)時に身体の外側になる「差し表」(さしおもて)側の様子です。

佩刀時に身体の内側になる「差し裏」(さしうら)側の様子です。

「蕨手刀」とは7世紀前半頃から出現したと推測される東日本、特に東北地方を中心に発達した鉄刀のことを指します。反りの無い平造の直刀であり、柄と刀身が一体の鉄製で、柄頭の形態が早蕨(さわらび)の巻いたものに似るところから明治時代に〝蕨手刀〟という呼称が始まりました。

柄頭の丸い部分が〝芽を出したばかりの蕨〟に似ているといいます。
確かに野山に自生している蕨のあたまの姿をイメージすることができます。

 

「ペーパーナイフ」ということで、刃部は紙や糸を切断するくらいの鋭利さをもっています。

 

蕨手刀は、馬上での戦闘に長けていたと推測されている蝦夷たちが〝片手で〟握り、接近戦でその攻撃力を発揮していたと考えられています。

ナイフ機能のある刃部はこのような感じです。勿論、指・皮膚を切断する様な事はありません。

 

刀背部分は幅広に形づくられています。小さくても、蕨手刀の特徴を可能な範囲で再現している、力作です。これで価格800円ですから、職人さんの技術と心意気は凄いのです。

 

刀身の表側には「阿弖流為」(あてるい)と刻まれています。

阿弖流為は、平安時代初頭に陸奥国胆沢(現・岩手県奥州市)をおさえていた軍事的な統率力を有した蝦夷の族長層にあった人物と考えられています。

789(延暦8)年に発生した巣伏(すぶし・すぶせ)の戦いで、阿弖流為は紀古佐美(きのこさみ)が率いる朝廷軍を打ち破り大損害を与えたといいます。この朝廷軍の敗北(ただし朝廷軍も蝦夷の居住区域の広範な焼き打ちをしている)により、征夷の責任者が更迭され、坂上田村麻呂が802(延暦21)年に陸奥国胆沢へ軍事拠点を構築するために朝廷から派遣されてきました。胆沢城の造営開始・竣工時期は不明ですが、造営と征夷は順調に進んだ様で、802(延暦21)年のうちに坂上田村麻呂から朝廷へ阿弖流為らの降伏が報告されました。坂上田村麻呂は平安京帰還にあたり阿弖流為らを同行しました。
坂上田村麻呂は阿弖流為らを陸奥国に戻し俘囚(ふしゅう:朝廷に帰順した蝦夷)の指導の任に当たらせるよう進言したといいますが、朝廷の結論は阿弖流為らを処刑するというものでした。

坂上田村麻呂が創建した京都・清水寺の舞台の下に阿弖流為らの慰霊碑が建てられています。

 

刀身の裏側には「わらび手刀」の文字が刻まれています。
「蕨」の字をこのサイズで刻むのは至難の業ですから、この表記になっているものと推測します。

 

今回、袋を初めて開けて、刀身に「阿弖流為」「わらび手刀」の文字が刻印されているいることに気付きました。

因みに、この蕨手刀ペーパーナイフは人気商品らしく、奥州市埋蔵文化財調査センターを何度か訪れていますが、職員の方から「売り切れなんです」と言われたことがあります。色々と話をうかがうと、まとめて製作・納品してもらうそうで、売切直前から納品までの品切期間がどうしてもできてしまうそうです。運が尽きていると品切期間に当たってしまいますので、気になる場合は在庫確認をしてセンターを訪問されるのがよろしいかと存じます。

 

当サイト内のすべてのコンテンツについて、その全部または一部を許可なく複製・転載・商業利用することを禁じます。

All contents copyright (C)2020-2021 KAWAGOE Imperial Palace Entertainment Institute / allrights reserved