阿修羅(M-ARTS リアル仏像 精密現存復元仕様・廃盤)

モデルとなっているのは国宝に指定されている阿修羅像です。

本物は像高153.4㎝の脱活乾漆造の像です。

脱活乾漆造の制作手順は以下の通りです。
①まず心木で原型のもとを作り、荒縄・麻紐を巻いて土をのせやすくします。
②その上に藁を混入させた土をのせて形をととのえたら、目の細かい砂と抄繊糸(しょうせんし:和紙の繊 維)を混ぜ合わせた土を塗り付けて、細かい部分まで成形していきます。
③できあがった土製の原型に糊漆で麻布を貼り付け、これを数回繰り返します。
④ある程度、表面が固まったら、後頭部と背中の麻布を切り取って取り外し、像内部の土と原型としていた 心木を取り出します。
⑤こうして内部が空洞となったところに、新たな心木を入れ、これを空洞内で動かないように像の外側より 釘を打ち付けます。
⑥後頭部と背中の麻布を縫い付けて穴を封じ、天然の水溶性粘り成分が含まれているニレの樹皮の粉を用い た木屎漆(こくそうるし)を塗り重ねていき、整形をします。
⑦石を細かく砕いた砥の粉(とのこ)と漆を混ぜ合わせた錆漆(さびうるし)を像の全体に塗り付けて、こ の表面を茎を煮て乾燥させた砥草(とくさ)で研磨し整えます。
⑧最後に仕上げとして彩色を施します。

チャレンジされる方、いらっしゃいましたならご参考にしてください。

さて、M-ARTS阿修羅の造形を見ていきましょう。

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顔が3つ、腕6本のいわゆる「三面六臂」の姿が特徴です。
上半身が裸で、左肩から条帛が、背後の肩には天衣が掛けられています(右肩のところから欠損)。
首にかけた瓔珞、上腕部に装着された臂釧、手首に巻かれた腕釧がしっかりと再現されています。
下半身には裳をまとい、足には板金剛を履いています。

本物の阿修羅とは、奈良県興福寺の「興福寺国宝館」で常時、逢うことができます。

1959(昭和34)年、興福寺食堂跡に建てられた耐火式宝物収蔵庫「興福寺国宝館」ですが、耐震改修のために2017(平成29)年の一年間休館し、2018(平成30)年の元日からリニューアル・オープンしました。
20年ほど前に国宝館を訪れた時に観た、ガラスケースの中に無造作に並べられていた阿修羅の印象が強く残っていたのですが(時期により展示の仕方は変化していったようです)、2009(平成21)年に開催された東京国立博物館における伝説の「国宝阿修羅展」で全方向からの拝観可能展示は衝撃的でした(「丹青社」様HPにこの展示の写真が掲載されています/https://www.tanseisha.co.jp/works/detail/52037)。耐震改修後の国宝館は昨年(2019)訪れました。さすがに全方向展示ではありませんでしたが、文化財保護の為に淡いライトがあてられて複数の影ができるように、八部衆がスタイリッシュな空間で展示されていました(五部浄だけケース内での展示)。是非、足をお運びください。

M-ARTS阿修羅の姿を、角度を変えながら見ていきます。

 

 

特徴的な「三面」をそれぞれ見ていきます。

〝右の顔→左の顔→正面の顔〟の順で成長し、仏道に入ったことを物語っていると言います。
右の顔は「修羅界」にあった時、戦闘に明け暮れた幼年期の、自らの過失を受容できず、反抗的な心情をあらわしているのだそうです。
左の顔は「人間界」にいた少年期、それまでの自らの過失に気付いて苦悩・懺悔する思春期の心情をあらわしているのだそうです。
正面の顔は「天界」にあった青年期、懺悔の念を深めつつも仏門に身を投じ、苦悩から脱却していく心情をあらわしているのだそうです。深く眉をひそめながらも口髭がたくわえられ、成長していることも伝わってきます。

先ずは正面の顔です。

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眉をひそめた物憂げな表情でありつつも前を見つめており、当惑・哀愁・慈悲・・・と観る人によって受け止め方が多様な、印象的表情が魅力です。現物は下瞼が特に厚く造られ、涙をためた潤んだ瞳を表現しているかのようです。
M-ARTS阿修羅は退色具合も彩色で再現しているので、少々肉付きが良く見えてしまいます。眉がしっかり描かれていて、顔面も額と鼻の頭の退色状態以外はほぼ均等塗りとなっているので、本物よりもスッキリした顔立ちとなっています。

耳は正面から見ると、正面の顔のもの一対です。左右の顔の耳は、正面の顔側には無く、後頭部の方には付けられています。それでも全く違和感を感じることがない造形になっているのは本物準拠です。左右の顔は、正面の顔よりもややサイズ・ダウンをし、僅かに正面よりも高めに配されています。

阿修羅・左側の顔を見ていきましょう。

本物は、左眉のあたりから唇の右側にかけて大きなヒビ割れがありますが、M-ARTS阿修羅ではそうした割れは再現されていません。
また、本物は額から左頬まで彩色の剥落が顕著ですが、M-ARTS阿修羅はその雰囲気を出す彩色を施していますが、あまりしつこくならないようにバランスに配慮がなされています。
目・鼻・口の配置バランスは本物同様なのにもかかわらず、顔の大部分が均一の色合いの影響で、冷たい表情というよりも〝綺麗なお姉さん〟の様になっています。描かれた眉の形が、その印象を強くしています。

 

阿修羅・右側の顔を見ていきましょう。

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右の顔は、3つの顔の中で最も若年の表情で、眉間に強めの縦皺が寄せられています。
鋭い眼差しで心に鬱積しているものを発しているようです。下唇を噛みしめているところから、状況を受け入れ難き悔恨の念を含んだ反発の表情と解釈されています。
本物は、左目頭から唇の横までと、右目尻から耳にかけてもヒビ割れがあります。また顔全体のほとんどの彩色が剥落しています。M-ARTS阿修羅は剥落・退色具合を彩色でやんわりと表現していますが、輪郭部分なので、印象が違ってしまいます。
左の顔で見た様に目・鼻・口の配置バランスは本物と同じなのですが、ちょっとだけ頬肉がふっくらしています。〝小さな子のふくれっ面〟という印象です。

 

髷は、三つの顔からそれぞれまとめ上げられ、2回巻いて頂部から左右に3束ずつ毛先を垂らしています。これは「垂髻」(すいけい)と呼ばれる、高さをつけた結び方です。

 

 

後頭部は、この様になっています。

 

次に、M-ARTS阿修羅の腕の角度について見ていきましょう。

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本物の写真を見ると、腕の角度が左右対称ではないことは明らかです。
一見、対称に感じられている方も多いでしょうが、M-ARTS阿修羅でもこのポイントはしっかりと再現されています。

右側の腕3本の出方と角度です。

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左側の腕3本の出方と角度です。

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前方の正面から、視点を変えながら腕の角度を見ていきます。

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合掌をしている両手を基準に見ると、後方・左右の腕の角度が違っています(左腕が下がっています)。

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特に後方・上腕部の出方、肘の位置と前腕部の角度が対称ではありません。現在はありませんが、持ち物の兼ね合いからと考えられています。

掌を天に向けている腕は、この角度で見ると肘までの上腕部の長さと肘から先の角度が対称になっていないことが判ります。後方の腕は、この角度だと対称っぽく見えます。手首の先の角度で持ち物の握り方で違っています。合掌している前方の腕は、正中線から僅かに外れているのが判ります。

 

次は、背面からの姿です。

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上方の腕の肩からの出方、後方の腕の肘から前腕部の角度、胴体と合掌している腕でつくられる三角形の大きさ・・・と、この角度から見ると判明する〝左右対称ではないところ〟がお判りいだだけると思います。
さすがに本物を、この様にグルグル回すわけにはいきませんが、M-ARTS(現イSム)様は企画の段階で徹底的な現物観察と研究をなされ、製造・商品化に進まれたことでしょう。

阿修羅像の特徴の1つ「六臂」ですが、先にも述べましたように本物は写真でみても明らかに3対の腕の角度が異なっています。
現在、幾つものメーカーが阿修羅フィギュアを製作・販売していますが、この腕の出方と角度(更に長さ・太さも)が研究されていないと、単純な左右対称になってしまい、見る者に違和感を与えてしまいます。
このポイントをM-ARTS阿修羅は考慮しており、本物の写真と見比べても〝本物そっくり〟という印象を与える造形になっています。阿修羅像の製作において最も大変だったポイントではないかと推測します。

 

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縁が金で彩られている緑色の「条帛」は、しつこくならないよう緑色の風合いを残した彩色になっています。よく観察すると、花柄が施されている模様も再現されています。

肩に羽織られている「天衣」について。
本物の天衣は剥落・退色が著しい状態なので、それを忠実に再現すると「商品」として美しくなくなってしまうので、程好きデフォルメが施されています。

天衣は、残念ながら肩に羽織っている部分しか伝存しておらず、前方にどの様な形態で垂れ下がっていたのかが判りません。この点でM-ARTS阿修羅は、本物に準じています。

 

下半身に纏っている「裳」の金の縁取りが鮮やかに再現されています。裳は腰元で折り返されています。動きのある折り返し部分の退色具合は、本物に準じた彩色がなされています。

本物は退色が著しいのですが、M-ARTS阿修羅では白をベースとした彩色にやんわりと汚しを入れ、その中に宝相華が丁寧に再現されています。背面も同様の表現になっています。

足元を見てみましょう。長い指が目立つ足にサンダルを履いています。
このサンダルは「板金剛」といいます。

 

ここまで見てきましたように、本物の彩色剥落・退色を忠実に再現というよりも、飾ることを意識してデフォルメしながらも見る人・手に取る人へ〝本物と同じだ〟と思わせる配色とバランスのとれた造形がなされていることがお判りいただけたかと存じます。

M-ARTS阿修羅が発売された時は、価格といいデザインといい、食玩等を除外すれば〝手が届く阿修羅像〟ということで衝撃でした。世間で販売されていた阿修羅木像だと10万円は超えていましたし、顔や腕の太さ・角度にどうも違和感があって、とても購入したいという気にはならなかったのを覚えています。

M-ARTS阿修羅には、別彩色のバージョンが幾つか存在します。そちらについては今後、紹介をしていきますので、暫くお待ちください。

 

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