毘沙門天 2020 Limited(イSム Standard 篁千礼氏彩色)

先日、上野の東京国立博物館を訪れた時(その往復も含む)、至る所で警察官の姿を目にしました。〝物騒な世の中よのぉ〟と思っていたら「東京2020オリンピック・パラリンピック」開会式だったそうな。TVニュース等で何となく知ってはいましたが、久し振りに江戸へ出向く機会と被るとは・・・。まぁ、悪いことはしていないので全く問題は無いのですがね。
さて〝東京2020〟というところで思い出しましたよ、箱詰めされた仏たちの山の中に埋まっていた「彼」を。

「彼」とはこちら。決して派手ではなく、華やかでありつつ気品に満ちているお姿。

                                 (画像はイSム様・公式HPより)

2020(令和2)年4月16日~29日まで受注期間が設定された、篁千礼氏による特別彩色Limitedシリーズ「毘沙門天2020Limited」のお話です。この機会を逃すと当分記事にできなかったかもしれません。彼(毘沙門天2020Limited)からのメッセージ(主張)なのかもしれません。

                       (画像はイSム様・公式HPより)

 

「毘沙門天2020Limited」はStandardサイズだけでなく、S-Classサイズも登場ということで衝撃でした。因みに「衝撃」とは言いましても〝価格的に手が届かない〟ということで、HP上の画像を眺めているだけでしたけれどね。
画像だけだと、S-Classの色合いが濃いように見えてしまいます。Standardサイズがちびっ子みたいに見えていますね、恐るべきS-Classっ。

さて、モデルとなっているのは伊豆国・願成就院に安置されている本尊・阿弥陀如来の眷属「木造毘沙門天立像」です。像内に「運慶」署名を持つ五輪塔形木札が入っており、運慶作であることが確定され、2013(平成25)年2月に国宝に指定されました。

 

当家の「毘沙門天2020Limited」は、この様な表情をしています。

イSム様・Standard「毘沙門天」に共通する〝目ぢからの強さ〟が、「毘沙門天2020Limited」でも遺憾なく発揮されています。

全体像・正面は、この様な感じです。
金・銀・銅のオリンピック・メダルカラーの組み合わせで、とても煌びやかな姿です。
偶々ですが、照明の照り返しでも〝神々しさ〟を醸し出しています。

「威風堂々」とは、まさにこのことです。

格好良過ぎるので右前から・正面から・左前からの3枚を並べてみました。
相乗効果で、超絶素敵な画像になりました。

 

360度、転回させてみます。

 

どの角度から観ても緩み・崩れを感じさせない、隙の無い盤石な姿です。

 

逞しく豊富な頭髪を二重の輪(もしくは紐)で固定し、更に綺麗に頭頂でいったんまとめて折り返す「単髻」(たんけい)という結び方です。
頭頂部に宝珠形の飾り板をあて、折り返した髷を布で結んでいます。
結んだ布の端は左右共に反りあげることで、美しさを演出していますね。

 

ちょっと引いて、頭部全体を観てみましょう。

メダル・カラー3色が、各所で絶妙のバランスをとりながら調和していますね。素晴らしい。
大きく見開いた目、膨よかな輪郭、太い首から、まるで力士のように強靱な体格をしているのが頭部(顔)からうかがえます。
落ち着いた金色で顔が塗られており、凹凸で生じた陰影が美しく、壮健さが伝わってきます。

後ろにまわって観ると、この様な感じです。

後頭部だけでも〝凜とした〟表情をしていることを感じ取ることができます。
襟甲から肩を守る部分も頑強な造りになっています。ここが銀色というのは、他の箇所の模様・彩色のバランスから〝お見事〟な選択ですね。

表側に戻って、顔の表情のアップを観てみましょう。

おーっ、迫力満点の顔面。
顔は金色で、首元はカッパー(銅色)が注されています。
鎧の襟元が銀色ですがから、本当にメダル・カラーで飾られた毘沙門天なのです。
本物は口を「ヘ」の字に固く結ばれていますが、イSム毘沙門天は「ヘ」を若干緩やかにデフォルメをしている様です(ちょっと目も大きい等)。その分、イSム毘沙門天の表情が〝穏やか〟に見え、優しく護られているかの様な気持ちになります。

 

イSム毘沙門天の最大の魅力は〝目ぢから〟。
通常版にも共通することですが、〝玉眼の輝き〟を再現するために6回にわたる彩色の重ねをおこない、力強き眼力を再現しているそうです。
通常版ですと黒っぽい造形の中で玉眼再現彩色が際立つのですが、華やかな「毘沙門天2020Limited」であっても、玉眼再現彩色はメダル・カラーの中に在りつつも強烈な輝きを放っています。凄い。

折角なので、表情を左・右から観ています。
美しく、カッコいい。

 

では次、上半身を正面から観てみます。

左手に宝塔を、右手に戟を持っています(持ち物は後補といいます)。
平安時代の毘沙門天は、例えば山城国・鞍馬寺の毘沙門天に象徴される様に戟を腰の位置で持っていることが多いのだそうです。
そうすると願成就院の毘沙門天は、戟を持つ右手の位置は胸脇・肩の高さにあり、更に右肘を外側に張り出していることから〝戦闘態勢にある〟緊迫感を醸し出しているのだといいます。
確かに、制止している上半身の姿から滲み出る〝威圧感〟は坂東武士が好みそうな佇まいですね。

右の掌の上に乗っかっている宝塔。
輝きが違うと思いませんか?

宝塔を金箔で覆っているのですよ。
彩色ではない、金箔が放つ「煌めき」。

メダル・カラーで塗り分けられている華やかな姿の中に在って、金箔を纏った宝塔が粲然と輝いています。

 

宝塔に焦点を合わせて撮った画像ですが、ピントがぼやけてしまいました。
しかし、偶然の産物。
横顔を観ると、正面から観た時には感じなかった〝嶮しい表情〟が見て取れます。
眉の曲線もあるでしょうが、とにかく眼光が鋭く〝忿怒〟の情が垣間見えるのです。

ちょっと視点をずらしてみましたが、やはり正面から観た表情と異なり、眼前に敵が居るかの様な鋭き眼光を有しています。
また、この視点から観ると、逞しく分厚い身体、屈強な腕の太さを誇っていることが判ります。坂東武士の嗜好が具象化されているポイントですね。

 

今度は、右手でしっかりと握っている戟を観てみましょう。

武器としての槍(鑓)にも言えることですが、伝存している槍先は想像以上に「小さい」のです。
仏像が手にしている戟(槍・矛)の先端は悉く小さめになっています。
槍先は長く大きい方が格好良いのですが、歴史上の仏師たちは仏像本体が際立つ様にバランスを考慮して製作した結果、このサイズになったのでしょう。

でも、注意して観てみると・・・

三叉の戟の先端の輝きが違うっ。

又しても金箔が施されています。
「毘沙門天2020Limited」は持ち物に金箔を貼って、アクセントにしているのです。
イSム様公式HPの画像では「華やかさ」は判りますが、金箔を使用していることは実物を観ないと気付かない魅力ですね。

 

それでは次に、上半身を護っている装備について観ていきましょう。

肩甲など下甲を着し、その上に胸甲・腹甲などを重ねて金具や帯で締め付けています。
通常版だと黒っぽい全体像なので凹凸は判っても鎧が一体化しているように見えてしまいますが、「毘沙門天2020Limited」だと各パーツが色で塗り分けられたり、濃淡がつけられているので複数の甲が組み合わさっていることがよく判ります。

鎧を纏っていても、鎧の下に筋骨隆々とした身体が存在していることが判ります。
肩甲には植物でしょうか、模様が施されています。通常版では目立たない、「毘沙門天2020Limited」ならでは明確に見て取れる細やかな装飾です。

各甲を結び付ける留金の装飾も細やかです。
3色のメダル・カラーで塗り分けられたことで鎧の構成が判り易くなっています。
袖口から垣間見える籠手にも細やかな装飾が施され、丁寧な色の塗り分けがなされています。

籠手の表側・裏側には同じ装飾が施され、合わせ目や留め具の様子も判ります。

 

背中にまわって観ましょう。

首周りの襟甲は銀色、背中の大部分は赤銅色で塗られています。
前方は華やかに金・銀・銅3色で塗り分けられていますが、背面はこれでバランスがとれています。
鰭袖(ひれそで)の広がり、下に垂れている窄袖(さくしゅう)の揺らぎが〝風によるたなびき〟を表現しています。

籠手の上に窄袖・鰭袖が重ねられている様子です。
この視点からだと、腹部が〝お腹ぽっこり〟に見えますが、脇から腰にかけての括れが強めになっているので、逆にガッシリとした腰回りになっています。

右腕の袖口を拡大してみました。
襞、裙の結び目などが細やかに表現されています。
脇下から腰にかけて、臀部から腰にかけて、やはり括れが強めにとってあります。

後ろ側からみると、鰭袖の広がりはかなり大きめ。カッパーの色合いを変えていますね。
背中から腰に掛けては締め金具・帯による絞りがなされ、これが括れをつくっていることになります。

 

次に下半身の様子を観ていきましょう。

下半身は3枚程の甲が重ねられています。
前垂には金色でパルメット(植物)文様が施されています。これは〝繁栄のシンボル〟ナツメヤシを意匠化したものだといいます。
大腿部を覆う鎧には市松(いちまつ)模様が施されています。

 

市松模様は、有職故実(ゆうそくこじつ)の観点からは「石畳」(いしだたみ)や「霰」(あられ)などと呼ばれています。
2020東京オリンピック競技大会のエンブレムには野老朝雄(ところあさお)氏による「組市松紋」が採用されていることなどを踏まえて、下半身の表甲に銀・銅色の市松模様が載せられているのでしょう。マスコット・キャラクター「ミライトワ」「ソメイティ」とお揃いですね。

因みに、S-Classの「毘沙門天2020Limited」は甲冑の縁(へり)に「月桂樹」を遇っているのだそうです(公式HPの画像にあります)。そういうことは、Standardでも実現していただきたかった・・・。

 

正面から観ても判らない、願成就院・毘沙門天の腰の括れです。
銅色を中心として、濃淡をつけながら単調な塗りにならぬよう工夫されていますね。

腰・臀部を覆う下半身を護る鎧の様子です。腰が大きく左に捻っています。
メタリックな塗りですから、金属っぽさが見事に表現されていますね。

 

市松模様が施された表甲、縦に襞の入った下甲、更にその下にもう一枚、計3枚の甲が重ねられ、下半身を護っています。
膝元で銀色に膨らみを見せる袴の裾が脛甲の中に入れられ、その上から赤みがかった銅色の衣が垂れ下がっています。

右足を一歩踏み出した状態で、二疋の暴れる邪鬼をズシリと踏み付けています。

装飾を伴う脛甲もメダル・カラーの濃淡を用いて、鮮やかに塗り分けられています。

後方にたなびく衣は、柔らかな膨らみを見せながら躍動感を表現していますね。

 

踏み付けられている邪鬼は、毘沙門天本体と同時期の製作という見解が示されているのたそうです。邪鬼の顔と手足の一部は後補だそうです。

毘沙門天も力尽くで踏ん張っているという訳ではなく、毘沙門天自身の重量で邪鬼が押さえ込まれているので、極めて自然な体勢で安定した立ち方をしています。

 

円形の光背を外して、「毘沙門天2020Limited」の後ろ姿の全体をご覧いただきましょうか。

前から観た姿とは異なり、3色のメダル・カラーで塗り分けられてはいるものの、「地味」な印象を受けます。

 

下から見上げた、「毘沙門天2020Limited」の上半身の様子です。

〝ゴチャゴチャした騒々しさ〟は全くなく、3色のメダルカラーがそれぞれの主張をしつつも全体で調和が見事にとれています。「美しさ」って、こういう状態を指す表現なのですね。

下から見上げた姿を、3方向から撮って並べてみました。
小さい画像ですが、格好良さが伝わることと存じます。

円形の光背を外して、下から見上げた画像です。
コレはコレでまたカッコいい。

 

                                 (画像はイSム様・公式HPより)

オリンピックに合わせての限定品なのでプレートには「ver. victory」の文字が刻まれています。
「あらゆる戦いを勝利へと導く戦勝の神」として信仰された毘沙門天にピッタリなプレートになっていますね。

・・・「東京でのオリンピック」だったから生まれた毘沙門天・特別Ver.ですよね?

 

 

 

 

 

 

 

 

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