居合刀特注 制作時復元仕様 溜塗打刀(明智拵)

此方は「武装商店」様HPで未発表、現存する「溜塗打刀」(明智拵)を可能な限り再現した一振りになります。

武装商店・店主様との特注に関する世間話の中で、
「明智拵に興味あります?」と投げ掛けられたので、
「あります。造るんだったら買います。」と即答しました。
「職方とサイズを本歌に合わせて造るっていう話があるんですよ」と店主様。
「柄巻は革でお願いしますね」と特注ではマストなお願いをしました。
詳細は忘れてしまいましたが、柄巻用の萌葱色の柄革を別件の特注用で預かってもらっていた物を、その特注の話が無くなったので新造・明智拵用にしていただきました。
具体的な打ち合わせは、これくらいだったと思います。
いつもの様に「制作に関しては、すべてお任せしますので、お仕事のし易いように造ってください。」と全面委任でした。
あとは、納品されるまで楽しく待っていました。
武装商店・店主様より職人さんからの丁寧な経過報告および意向確認をいただきましたが、作業の続行をお願いしました。特注をお願いしてから1年弱ほどの時間を要しましたが、手間の掛かる特注は1年以上という認識でいるので全く気になりませんでした。

では、納品していただいた明智拵を見ていきましょう。

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鞘が単なる朱塗りに見えますが、本歌の塗り方をほぼ再現した結果、この色合いになったそうです。

本歌の鞘塗りは、もともと皮巻きの上に朱塗りを施したものであることから、当時の色に近づける意図で朱色を塗った後に透き漆色(飴色)を3度重ねてくださったそうです。
結果として〝朱塗りが少々くすんだ感じにしかならなかった〟という経過報告をいただいたのですが、そこまで手を掛けていただき、また緑(萌葱)と赤(朱)の組み合わせはなかなか美しいものと感じましたので〝問題ありません〟とお伝えしました。

 

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柄の差し表の画像はは、本歌に倣って柄頭は水牛角製のもので、柄革を巻き掛けた天正拵です。

 

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差し裏の様子です。本歌に準拠した片手巻きです。

 

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本歌に準じて柄の中央を細くした両立鼓としており、柄下地も本歌同様に親粒の入っている一枚皮を黒染し、巻鮫としています。

目貫は黒染の松皮菱目貫。
市販の明智拵は銀色の物ですが、黒染にすることで全体の色合いの調和に一役買っています。
縁金具も目貫と合わせて黒染めになっています。

 

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鍔も本歌に倣って鉄製の錆び付けが施された「瓢箪図透かし鍔」を装着しています。

職人さんからの経過報告で送られてきた画像です。
鍔の加工について、鍔全体に赤銅メッキを掛けるやり方ではなく〝覆輪部分にのみメッキ掛けをしたことで色味が均一にできなかった〟とのことでした。職人さんの方では統一感をイメージされた様なのですが、箇所によって仕上がりが異なるのは如何にも本物っぽさが出ていて風情もあり素敵でしたので、この仕上がりを善しと返答しました。

 

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鎺も本歌準拠で桔梗紋を表裏に入れていただきました。
職人さんから〝本歌は切羽1枚ですが・・・〟とご指摘をいただきました。その上で、現在に至るどこかで無くなった可能性もあるのでそこは再現せずに、通常通り両側に据えたとのことでした。
そこまで細かいところは気にならなかったですし、制作に関しては完全にお任せとしていたのですが、とても丁寧に配慮していただきながらの仕上げをしていただきました。

 

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刀身は、樋が掻かれていない「樋無し」刀身で、刃文は緩やかな「湾れ」です。

 

「武装商店」様HPに掲載されている市販「明智拵」と、武装商店様からいただいた画像で今回の特注品の概観を比較します。
特注・明智拵は本歌に準拠していますので居合刀としては短め、柄も太く短めになっています。あと特注・明智拵の鞘には返角が装着されています。

特注・明智拵の下緒は、持ち込んだ柄革の萌葱色と同じ色合いの物が無かったので、少々濃いめのモスグリーンの革の下緒をつけていただきました。微妙な色違いが、逆にオシャレ感をアップさせています。

市販「明智拵」の刀身には棒樋が入っており、崩れ忠広写し小乱れ刃文となっています。

これも武装商店様からいただいた画像です。
特注・明智拵の柄が通常居合刀と比較すると極太であることが判ります。

 

次に、以前紹介したNPS様企画品「明智拵」と今回の特注・明智拵を並べてみました。

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今回の特注・明智拵がごっつい反面、NPS・明智拵が細身で長いので、とても対照的です。市販・明智拵があれば3種の比較ができたのでしょうが、所有しておりませんので残念ながらそれは叶いません。

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柄前の比較です。NPS・明智拵が標準的な柄の長さで、鍔が厚目ですね。
前の写真から特注・明智拵は立鼓が強めであるとはお判りいただけたと存じますが、NPS・明智拵の立鼓がかなり強めであることが、この画像から判ります。

 

そして最後に、この画像をご覧ください。

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上が昨日(6/1)紹介の特注・圧し切り、下が本日(6/2)紹介の特注・明智拵です。
2振りとも、居合刀としては短めの刀になります。
織田信長・明智光秀(ではないかも知れませんが)の推定される身長(同時代の平均身長)を考慮すると、これが丁度良い長さになるのでしょう。

旧暦・新暦ということは抜きにして6月1日に織田信長に所縁のある圧し切り(写し)を、6月2日に明智光秀?に所縁のある明智拵(写し)を紹介しました。
このように今回は〝居合刀で「本能寺の変」〟という遊びで楽しめました。

ちなみに「本能寺の変」にご興味をお持ちの方は、渡邊大門氏の『本能寺の変に謎はあるのか?  史料から読み解く、光秀・謀反の真相』(晶文社 2009)をご一読されることをお勧め致します。一般の方にもわかり易く諸説の分析をし、〝正しく史料を用いた歴史の考え方〟を説かれています。大河ドラマでいわゆる〝明智関連本〟が、トンデモ説も含めてたくさん刊行されていますけれども、渡邊氏の著書を読まれると事件に関する情報整理がスムーズにできます。

 

 

 

 

 

 

 

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