烏倶婆誐童子(イSム「掌」300体限定 廃盤)

高野山の「八大童子」は、金剛峯寺が所蔵者となっており、普段は霊宝館に居ます。特別展などで童子8名全員が揃わないこともありますが、霊宝館で童子8名が勢揃いしている状態を目にすると、とても嬉しい気持ちになり心が満たされます。以前、高野山を訪れた時、たまたま勢揃いしていました。
残念ながら8名のうち、2名(阿耨達童子:あのくたどうじ/指徳童子:しとくどうじ)が鎌倉時代後期~南北朝期の補作で、他の6名とは作風が異なると指摘されています。
それでも既に制多伽童子・矜羯羅童子がイスム様のTanaCOCOROサイズで発売され、特に制多伽童子は断トツの人気を誇っていますね。
さて今回は八大童子の第3弾、2021(令和3)年11月に発売された「烏倶婆誐童子」(うぐばがどうじ)のお話です。

「童子」ということですが、〝ぽっちゃり〟した制多伽童子と違って〝むっちり〟しています。身体は矜羯羅童子と同じ感じがします。
頭部、頭髪と表情は迫力があり過ぎて「童子」のレベルではありませんな。

 

「烏倶婆誐童子」の全体像ですよ。
焔髪と鋭い眼「瞋目」(しんもく)が醸し出す迫力、「童子」に似付かわしくありませんな。
身体は茶褐色になっていますが、本物準拠ですよ。背景が黒色だと茶褐色であることがよく判ります。

因みに背景を白くすると、身体の色は黒っぽく見えてしまいます。
こちらはコレで重厚感が増した印象です。

 

まわってもらい、精悍な烏倶婆誐童子の姿をお楽しみいただきましょうかね。

 

やはり瞋目(しんもく)と黒光りする身体(茶褐色)の組み合わせが独得の威圧感・迫力を放っています。

 

 

 

『聖無動尊一字出生八大童子祕要法品』によれば、烏倶婆誐童子は「暴悪相」(ぼうあくそう)の表情をあらわしているといいます。イスム「烏倶婆誐童子」は見事に暴悪相を再現しています。

 

本物は「玉眼」(ぎょくがん)ですが、イスム「烏倶婆誐童子」では虹彩を赤色・黒色で瞋目(しんもく)を表現しています。

 

『聖無動尊一字出生八大童子祕要法品』では烏倶婆誐童子は「戴五股冠」とあります。
前頭部中央に五鈷杵(ごこしょ)を象った冠を被っています。

 

斜め上から「五股冠」(ごこかん)を観ています。
五鈷杵が垂髪の前に位置しています。
左右と垂髪の後方にそれぞれ焔髪が立てられています。
赤い虹彩が強く主張していますね。

 

「五股冠」(ごこかん)を接近して観ています。
冠の五鈷杵、黒だと思っていたら・・・

 

金色でしたよ。

 

光の当たり具合で黒い五鈷杵に見えてしまいますがね。

 

焔髪の様子は、こんな感じです。
頭髪も暴悪ですな。

 

上から五股冠と焔髪の状態を観ています。
焔髪の流れ方が、考え抜かれたものなのでしょう。瞋目と口角を下げて堅く結んだ不貞不貞しい表情とマッチしているのです。

 

『聖無動尊一字出生八大童子祕要法品』に烏倶婆誐童子は「身如金色」とありますが、高野山・八大童子の烏倶婆誐童子は身体が茶褐色です。イスム「烏倶婆誐童子」も高野山の作例に準じて茶褐色になっています。
『聖無動尊一字出生八大童子祕要法品』にある金色ヴァージョンの烏倶婆誐童子も、格好良さそうですね。限定100体でゴールド烏倶婆誐童子、どうですかね?

 

腹はポコッとしているのですが、腰元が引き締まっているのでムッチリはしていますが、ポッチャリではありません。
顔・表情が無いと、「童子」っぽい身体をしています。

 

胸元には緑青色の瓔珞(ようらく)が付けられています。
左肩から右腰にかけての赤っぽい条帛ですが、表側は花菱文(はなびしもん)、裏側は※形文だそうです。
銅色の臂釧(ひせん)を着けています。
下から見上げると、やっぱりムッチリしていますね。

 

後方にまわって背中を観ています。
こちら側からだと条帛に施されている黒い※形文が判りやすいですね。
腰元の布の折り返し部分、模様は不明ですが撓み揺らぎが表現されていて、本当の布を身に着けているかの様です。チラッと緑色の顔料が注されていますね。

 

右横から観ています。
かなりの福耳ですな。
横から見ると、瞋目に加えて眉の吊り上がりの陰から「暴悪相」が伝わってきます。
腹がちょっとだけ膨らんでいますが、背中・腰元が締まっているのでポッチャリではないのが判ります。
腕を観察していると、筋肉の凹凸・割れが表現されていないことで童子っぽさを主張しています。

 

左手に握っているのは「独鈷杵」(どっこしょ)です。
『聖無動尊一字出生八大童子祕要法品』では「右手執縛日曪」、つまり〝右手に縛日曪(バザラ)を執っている〟と説明されています。
差し込み式でしょうかね、個体差なのでしょう。ちょっと曲がっています。
東寺講堂の帝釈天が持っている独鈷杵はとても短いのですが、このくらいの長さは欲しいですな。でも、本物をイジってはいけませんけれどね。

 

左側から観ると、独鈷杵の曲がりが気になりません。
腕を曲げているところ、筋肉の細かい動きが表現されていません。
未だ幼いから、筋肉は未発達の状態なのです。
こうした童子っぽさの表現、考えてなされているのでしょう。

 

右側から観ると・・・曲がっていることに気付いてしまいます。
左側の画僧だと「何、見てんだよっ」という目でこちらを見ていますね。

 

『聖無動尊一字出生八大童子祕要法品』だと「左手作拳印」と説明されています。
左手は拳を握って左腰に当てています。
胸元から腕にかけて、まったく筋の表現が無いので〝童子の身体〟の印象が強くなっています。

 

下半身を前方から観ています。
臍(へそ)のすぐ下で腰布が結ばれ、下に垂らされています。
腰布は表裏共に無文と考えられていますが鮮やかな朱色と、黒っぽい緑色の様です。
裳は暗い紅色の下地に、亀甲繋文(きっこうつなぎもん)を施し、八弁花丸文(はちべんかまるもん)を乗せています。

 

大腿部の箇所を拡大してみました。
八弁花丸文が強めに表現するものか、と思いきや、しっかりと下地の亀甲繋文が容赦なく刻み込まれています。
この画像だと裳の縁(へり)が縦に見えていますが、ここには花菱蔓唐草文(はなびしつるからくさもん)がきめ細やかに表現されています。

 

腰布の後ろ側です。
上部が赤く、下部が黒っぽい緑となっています。
前から見ると腹がポコっと出ているのに、腰は括れているのです。
単なる童子ではありませんな。
条帛の裾が垂れていますが、先端部分が開いています。このチョットした造形の有無によって像全体の印象が変わってきますからね。

 

膝をあげている左斜めから観ています。
複数の着衣の様子・・・素晴らしいですね。
本物はこの表現を木で、イスム「烏倶婆誐童子」はポリストーンでパーツ組み合わせをして表現しているのです。
組み合わせてから塗っているのか?パーツを塗ってから組み合わせているのか?
どちらなのかは判りませんが、この仕上がりが見事ですね。

 

チョイと視線を下ろし、左脛の上部が見える様にしています。
腰布と結び目、そしてその下に着用している裳のたなびく様子です。
裳の模様の下地となっている亀甲繋文(きっこうつなぎもん)、裳の動きで生じた曲面の上でもしっかりと規則正しく表現されています。

 

更に視線を下ろし、足元まで見える様にしています。
筋肉の隆起はありませんが、上半身に見えた童子感が伝わってきませんね。
半身(はんみ)に構えているということもあるでしょうが、膝下が成人のものといっても違和感はありません。
この視点から観た、亀甲繋文が施された裳の流れ方がとても美しいです。格好良いのです。

 

背景を白くして、裳の流れ方に集中してみた画像です。
裳の全体が暗い感じになってしまいましたが、それでも亀甲繋文が丁寧に施されていることが判ります。
膝下の身体部分も凜々しく、そして力強く立っているような印象です。
やはり下半身に童子感は希薄です。

 

単なる〝ボコボコ〟させている訳ではないのですよ。
布の動きで生じた襞(ひだ)・皺(しわ)の形状に合わせ、緻密に亀甲繋文が表現されています。驚愕の型彫りが背景にある訳ですが、それでも絶句してしまいまする。
更にその上に所々ですが八弁花丸文(はちべんかまるもん)を乗せているのです。

 

ちょっとだけ後ろにまわりこんで、裳の様子を観察しています。
この模様の重ね、ここまでハッキリと浮き出るように型を製作するのって大変なのだろうなと推測してしまいます。
模様に襞・皺の表現もありますからね、大きな原型に緻密な彫りを施して縮小しているのか?3Dデータで強めの彫りをしているのか?・・・とにかく凄いですな。
この画像で気が付いたのですが、裳の縁(へり)に花節蔓唐草文が、しっかりと彫り込まれています。ここまで再現されてしまうと、軽率に「仏像フィギュア」と括ることはできませんよ。

 

烏倶婆誐童子の斜め右後方から観ています。
裳の中央に3本の大きな弧が表現されていますが、この凹凸に合わせて亀甲繋文・八弁花丸文が表されています。凄いですなぁ。

 

背景の色を変えると、彩色の感じ方が異なるので。
同じに見える方もおいででしょうが、印象が違うと感じていただける方もおいでかと存じます。
光の当たり方もあるでしょうが、凸部分のラインがが白っぽく浮き出て見えるので、〝動いている布〟の雰囲気が伝わってきます。
これだけでも〝素敵な画〟になっています。

 

台座の上に、足を開いて立っています。
八大童子のうち、3体が発売されていますが、台座の形状がみな異なっています。
もし機会があれば、台座の違いについて調べてみようと思っています。機会があればですがね。

 

 

 

下から見上げ、暴悪相と法力を持つ独鈷杵(縛日曪)が納まっている画像です。

格好良いので掲載しています。
戦闘力、高そうですねっ。

 

 

 

 

 

2021(令和3)年時点で発売されていた、八大童子のうちの3体を並べてみました。
因みに制多伽童子は3版です。

矜羯羅童子の観察でも触れましたが制多伽童子・3版、小さいです。
烏倶婆誐童子と制多伽童子は肩の位置がほぼ同じ高さなので、髪型の違いで身長差が生じている感じです。

 

以前にも指摘しましたが8体を並べた時(八大童子が揃った時)、ちぐはぐな感じにならないように、身長の比率をだいたいで構わないので合わせていただきたいですよね。

 

 

 

 

 

 

また烏倶婆誐童子を下から見上げています。

表情の〝強さ〟ということもありますが、こうして単体で見るとTanaCOCOROサイズとは思えない程の圧(あつ)を放っていますね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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