迦陵頻伽 笛/笙(イSム「掌」)

先日の方広寺・鐘楼の天井画として描かれている「迦陵頻伽」(かりょうびんが)の画像を見ながら文章を打ち込んでいた時、
「ボクたち、ココにいるよっ」
という主張を感じました。そちらを向くと居るんですよ、イSム「迦陵頻伽 笛/笙」が。

2017(平成29)年7月に、イSム様より重要文化財「文殊騎獅像」の透かし光背に付属していた物を独立・造型して発売されました。
東京国立博物館が所蔵する「木造騎獅文殊菩薩及脇侍像」のうち、文殊菩薩の両脇に位置している、向かって左側の龍笛を吹く迦陵頻伽、向かって右側の笙を吹く迦陵頻伽がモデルとなっています。

文殊菩薩が乗っている獅子の頭部に「法眼康円作也」の墨書があり、現在は文殊菩薩像とは別になっている大東急記念文庫等所蔵の文書に見える記載と合わせると、1273(文永10)年に康円(こうえん)によって制作されたことが判ります。
興福寺の経玄(けいげん)が発願(ほつがん)し、運慶の孫と考えられる康円が制作、制作から12年経った1285(弘安8)年に創建された興福寺勧学院(かんがくいん)の本尊とされたそうです。

 

「木造騎獅文殊菩薩及脇侍像」は東京国立博物館・本館の常設展示に登場することがあります。記憶にあるのは2017(平成29)年の興福寺中金堂再建記念特別展「運慶」で平成館・特別展示室に出座したことですね。常駐ではないので東京国立博物館HPを小忠実にチェックして、再会・初対面できる機会をうかがいましょう。「撮影禁止」が表示されている文化財もありますが、この文殊菩薩騎獅像は撮影が許可されています。機会があれば様々な視点からアプローチしたいですね。

 

「東京国立博物館 画像検索」(https://webarchives.tnm.jp/imgsearch/)より
  画像番号: E0006432
  部分:   光背
  撮影部位: 正面
  列品番号: C-1854-6
  指定:   重文
  撮影目的: e国宝
  撮影日: 2010-03-16

蓮華唐草の透彫光背の画像を掲載させていただきました。
文殊菩薩のちょうど上腕の辺りに迦陵頻伽が舞っているのが見えます。

 

さて、イSム「迦陵頻伽」の姿を観ていきましょうか。

 

一体ずつ360度まわしていきますね。
まずは左の笛を吹いている迦陵頻伽を。

 

次いで、右の笙を吹いている迦陵頻伽を。

そもそも、光背の一部ですから〝横から観る〟という想定が無い彫像です。
特に真横から観ると、何なのかが判断できない物となっています。
逆の観点からすれば、(光背からの分離可否は不明ですが)光背との接着部分がバランス良く成形されています。

迦陵頻伽は、極楽浄土に棲息する人頭鳥身(じんとうちょうしん)の姿の鳥です。
上半身は翼をもつ菩薩形、下半身は鳥の姿をとっています。顔は美しい女性として描かれることが多いといいます。声が極めて美しく、その妙声を以て法を説くと謂われています。
両手で花器を捧げたり、楽器を演奏する姿の作例が多い様です。

 

それでは個別に観察していきます。「迦陵頻伽 笛」から。

造型は文殊菩薩像光背のものと、ほぼ同じ姿をしています。
本物は右側の羽に赤い顔料の残痕が目立っていたり、金色の顔料が剥落していたり・・・という状態ですが、イSム迦陵頻伽・笛は身体が金、羽が紫・緑っぽい色合いで調整されています。
本物の〝笛を吹いている迦陵頻伽〟は、康円によって制作された物なのだそうです。
因みに、左側の翼は後世の補作だということです。指摘されなければ判りませんね。

〝笛を吹く直前の顔〟だと謂います。
口を尖らせ、頬が少し凹ませて、笛に口が接する直前の表情なのだそうです。
本物の画像を見ても、その表情を見取るのは難しいと感じますね。
イSム迦陵頻伽・笛だと〝愉しげ〟に笑みを浮かべながら笛を吹こうとしている表情です。

長めの笛を左手でしっかりと、右手は親指・中指・薬指で挟んで持っています。

判り辛いのですが、本物は右耳の下半分が欠損しており、イSム迦陵頻伽・笛も同じ様に右耳の下半分が無い状態で再現されています。鬢髪の流れであまり違和感が無くなっていますけれどね。左耳と比較すると、欠損状態が判ります。
また、両翼が、良い感じの広がりを見せていますね。

腰から尾羽の間に掛かっている衣に模様が施されています。
羽や衣の顔料残痕具合を再現すると〝汚く〟なってしまうので、彩色をデフォルメしているのでしょうが、こうした〝ちょっとした細やかな再現〟は嬉しいですな。

あと〝ポッコリお腹〟がとてもチャーミング。
このポッチャリ感があることで、和らぎ・癒やしの効果を見る者に与えるのですよねぇ。

身体のくねりと羽の広がり方が、美しい一体化した曲線を描いています。
背中から生えている翼と、腰から跳ね上がっている尾羽が重なっているのではなく、それぞれが薄く独立した翼になっています。
羽は1枚1枚丁寧かつ立体的に表現され、本当に飛んでいるかの様な状態になっています。

大腿部の鱗が彫り込まれています。
垂れている尾羽が風にたなびいている様、飛んでいる様な足の動きも本物に忠実な再現となっています。

肩に掛けられた衣には、赤味がかった彩色が施されています。
背中から翼が生えているところには衣を掛け、奇妙な生々しさが和らげられています。
本物では、この構図を見ることはできませんからね。

こうして背面を観てみると、翼・羽の描写がとてもしっかり・ガッシリとしていることが判ります。〝雅な〟浮遊をするためには力強い翼が必要なのですな。
腰回りの衣は足の色合いと合わせて緑系で彩られています。

 

 

ここからは「迦陵頻伽 笙」を観ていきましょう。

造型は文殊菩薩像光背のものと、ほぼ同じ姿をしています。
本物は両翼と着衣に赤い顔料の残痕が目立っており、身体の金色の顔料が剥がれたり・・・という状態ですが、イSム迦陵頻伽・笙は身体が金、羽が紫・緑っぽい色合いで調整されています。笛と同じなので、2体並べると調和が取れています。

本物の〝笙を吹いている迦陵頻伽〟は、巧妙に制作されていますが、後世の補作なのだそうです。正面から見ると気にならない、でも斜めや側面から見た時にこの後世の補作は「不格好」なのだそうです。専門家の指摘は難しいですなぁ。

笛と同じく、笙を吹く迦陵頻伽も美しい女性ではない「童子」の顔をしています。
笛の童子が〝愉しげ〟な表情であったのに比べ、笙の童子の表情は乏しい印象があります。

角度を変えて観てみました。
やはり、表情は乏しい感じ・・・。

更に角度を変えて観ました。おっ、口元が緩んでいるっ。
笙を吹くために両手で笙を温めている状態ですな。

笛の童子と同様に、チャーム・ポイントの〝ポッコリお腹〟は共通しています。
後世の補作も調和を意識して、このポッチャリ感を表現したのでしょう。安らぎまする。

笙の形状から、どうしても顔の前に位置してしまいますので正面からだと表情が判りにくくなってしまいます。左右に広がる両翼は、バランス良く弧を描いていると感じます。

下から見上げて観ました。
左右対称の翼の広がりが綺麗に見えます。
ポッチャリした腹の膨らみが中心となり、腰元の衣の揺らぎ、跳ね上がった尾羽の形状がそれぞれ笙を吹く童子の躍動感を見事に表現していますね。

おもしろいので、重量感を主張する腹の膨らみをアップで。

本物は「羽は規則的に並び単調」なのだそうです。羽の形もハッキリとしていないことも指摘されています。
イSム迦陵頻伽・笙は、あまり本物に向けられた指摘・評価が気になる様な造形にはなっていないように感じます。

笛の童子と同様に、背中から生えている翼と、腰から跳ね上がっている尾羽が重なっているのではなく、それぞれが薄く独立した翼になっています。

笛の童子と同じく、大腿部の鱗が彫り込まれています。
垂れている尾羽が風にたなびいている様、飛んでいる様な足の動きも本物に忠実な再現となっています。

後ろにまわってみました。
肩の布は緑っぽく、腰回りの布は赤味がかった彩色が施されています。
後ろから観ると、左右の翼が前方に反っているのが判ります。

腰回りの布と跳ね上がった尾羽、垂れ下がった尾羽が、いずれも躍動感あふれる形になっています。こちらも本当に飛んでいるかの様です。

 

表情が見える様に、笙を吹く童子の角度を変えて、並べてみました。
こうして観てみると、笙を吹く童子の〝総合的バランス〟が低めというのが何となく感じてしまいます。専門家の言うこと・指摘は説得力がありますな。

 

イSム「迦陵頻伽 笛/笙」は、2020(令和2)年12月に「在庫無くなり次第販売終了」のアナウンスがなされました。未だ販売終了とはなっていない様です。
軽やかな音色を奏でながら優雅に宙を舞う2体は、1セットのみならず2セット、3セット・・・と仲間を増やしてあげて、遊ばせておくと楽しくなること間違いありません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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