金剛力士像・阿形(M-ARTS リアル仏像 緻密現存仕様 茨木Ver.)

此方は鎌倉時代、檜材の寄木造で制作された、国宝「金剛力士像(阿形)」をモデルとした「M-ARTS リアル仏像 金剛力士像」です。

 

・・・しかも、茨木彰氏の総合監修による2008(平成20)年のリアル仏像ワールド第2弾「仁王(金剛力士像)」の造形に、茨木彰氏が彩色を施された限定品です。
株式会社MORITA様の旧本社(現・埼玉ロジスティックセンター)にうかがい、当時の本社ショールーム兼応接室に展示されていた、明らかに通常品と異なる仕上がりの「展示品」であった〝茨木Ver.のリアル仏像たちと出逢い、そして連れて帰った物です。
今回は「阿形」像ですが、セット販売でしたので「吽形」像については、また後日に紹介する予定です。

 

顔の正面に合わせた全体像です。
734(天平6)年に創建された西金堂が、1182(養和2)年に再建されるにあたり造像された物をモデルとし、本物よりも筋肉の張り具合が強調されています。鎌倉時代における武士の気風に合致する様な力強さを主張する佇まいの像です。

転回させて、筋骨隆々の具合を堪能していただきましょう。

 

 

観る角度が完全に一致はしていませんが、

 ・上半身の筋肉が強めに張っており、特に広背筋が本物よりも大きめに表現
 ・脚の開きが少々大きめ
 ・本物の左足先欠損を補っている
 ・裳裾の形態が本物と少々異なっている
などと一見でデフォルメがなされているのが判ります。

 

西金堂内に安置されていた、本尊脇侍である一対の仁王像のうち、口を開けた「阿形」の顔面アップ画像です。
本物は実際の人体構造に比べて〝短い首〟と、顔面の中央に集約する目・鼻・口の不自然さが指摘されています。「リアル・金剛力士」では激しく盛り上がっている筋肉の形状と目・鼻・口の位置のバランスを整えているので違和感はありません。
阿形の肉身部彩色は朱色だったそうですが、ほとんど剥落している状態を彩色にて表現しています。

顔の右側から観た頭部の様子です。
「リアル・金剛力士 茨木Ver.」では本物に見える〝彩色が剥落して黒っぽくなった〟様子の再現を重視し、「イSム金剛力士Standard」よりもだいぶ剥落表現が強めの彩色になっています。因みに金剛力士Standardは全体的に白っぽく、剥落部分は茶色っぽく彩色がなされています。

顔の左側から観た頭部の様子です。
本来の朱色であった肌はほぼ剥落した様に彩色がなされています。
退色した赤味が残っている所がありつつ、赤味を失った箇所は白っぽい顔料が残っている様に塗られ、白い顔料が剥がれている所も顔料が残存している箇所と下地の漆地が出ている箇所とがリアルに再現されています。流石は〝茨木塗〟です。

本物の目には玉眼が用いられています。
「リアル・金剛力士(阿形)茨木Ver.」では瞳孔を黒く、虹彩をオレンジ味のあるゴールドで彩色しています。
「リアル・金剛力士」では目の形は本物に準拠していますが、大きさと角度に加え、目と鼻のあいだの筋肉の隆起を調整することで本物で指摘されている不自然さが解消されています。

 

顔の左側から観た頭部から肩にかけての様子です。
忿怒の形相が横顔からみても自然に表現されています。
首から肩にかけて太い血管が浮き出ているのが目に付きます。
かなり筋トレに励んだ成果の如く、肩の僧帽筋の盛り上がりが強く表現されています。

顔の左側から観た頭部から肩にかけてを、ちょっと引いて観た様子です。
頭部は前後の矧木で形成されているそうです(・・・継ぎ目がわかりませんが)。
力強く握った拳を、頭部左側にくる様にしています。
造形では成立していますが、実際にはなかなか難しい姿勢で、更にこの筋骨隆々の具合で肩の可動域がここまで上げられるとは思いません。
それでも筋肉の付き方や伸び方は自然な表現になっていますし、筋や血管の部分的な浮き上がりも普通な表現に見えます。

そのまま視線を下ろし、胸から腹部にかけての様子です。
本来の人体構造を踏まえれば、明らかに実態とは異なる箇所が幾つか指摘されています。
本物だと脇腹の腹斜筋・広背筋が大きく盛り上がっている造形で、実際の人体では見られるものではありません。
「リアル・金剛力士」では、特に脇腹部分の筋肉はスッキリと省略して自然な人体の印象を大事にしています。こうして腰の括れを入れることで、本物のコピーではないけれども〝本物っぽさ〟が表現されているのです。こうしたデフォルメもかなり計算されているので、全体像のバランスが整っているのです。

胸板の様子です。
首から左胸板に向かう太い血管3本の表現、大胸筋の真ん中にできている3つの段、鳩尾の突起部分は本物に準じています。

右側から胸板と腹部についてを観た画像です。
鳩尾の下で腹筋との境界にある丸い突起部分は省略されています。これが無くなったことで腹回りがスッキリと見えます。
腹直筋は本物にほぼ準じている造形ですが、脇腹はスッキリとさせ、広背筋を少々大きめにしつつ腰の括れを調整し、筋肉はついているけれども〝締まっている美しさ〟を演出しています。

右脇に視点を据えた画像です。
胸から腹回りを若干スッキリさせ、広背筋と腰の括れで胴体のバランスを調整し、腕の角度と筋肉の付き具合は本物に準じています。
本物の写真と比較すれば相違点が幾つも出てくるのですが、この画像から本物と同じ造形であるというイメージが伝わってきます。
色合いも絶妙なデフォルメで表現されており、制作当時の姿を想像することができます。

上半身の様子に注目した画像です。
本物よりも筋肉は部分的に太い造形となっていますが、まったく違和感が無い、美しい仕上がりとなっています。

 

今度は背面に視点を移してみましょう。

本物の後頭部は彩色がほとんど剥落しており下地の漆が出ています。
「リアル・金剛力士」もほぼその状態に準じています。
本物は僧帽筋のところにヒビ割れがあり、塑土を盛った箇所ではないかと考えられます。また棘下筋が肩甲骨を覆っているように被さり、背中から腰に掛けてはまるで腹筋の様に割れています。
この部分については「リアル・金剛力士」は本物とは異なり、僧帽筋・棘下筋・広背筋が自然な形になるようなデフォルメを施してあります。

もう少し視線を下に移してみましょう。

本物の背中には、まるで板の如き平らな筋肉が6枚を貼り付けているかの様ですが、「リアル・金剛力士」はその不自然さを払拭し、広背筋を人体の形に近づけながら幅を持たせ、腰元をギュッと締めて括れを造り上げています。
左腕の上げ方、右腕の下への流し方は本物に準じています。

更に視線を下ろし、臀部から背中を見上げた画像です。
本物の背中・脇腹は、通常の人体には存在しない筋肉の塊がボコボコと付いているのですが、「リアル・金剛力士」はそれらに固執することをせず、筋肉質ながらも腰回りを絞り込むことで美しくバランスのとれた背面のシルエットを形成しています。

腰裳の折り返しと、下に降ろした右腕の動きに合わせたかの様な腰裳のたなびき具合が統一感を醸し出しています。

臍前の腰裳折り返し部分です。縁の部分は金色で、深い緑色の下地に模様が施されています。

捻り上げられた左腰と、そこを覆っている腰裳の様子です。
上半身は前後の矧木で、下半身は左右の矧木で組み合わせられており、この腰の部分で上下に重ねられているのだそうです。

腰裳を正面から観た画像です。

膝周辺に赤味の顔料が残っています。
浮き出た血管が、力強く踏ん張っていることを伝える演出になっています。
腰裳の裏側(焦げ茶色の部分)の周縁部には鳳凰と唐草文が交互に配されています。

腰裳を背面から観た画像です。

本物の腰裳は、彩色と截金で文様を表現しています。
腰裳の表側(茶色い部分)には鳳凰を中心に据えた宝相華の団花文が、周縁部には雲龍文が施されています。

強い風が吹いている設定で、金剛力士・阿形の裳裾は右側へとたなびいています。

右足首から甲までの血管で力が入っている様子が表現され、踏ん張りながらも脚の指は五本とも揃えられています。
本物の臑には塑土が盛られ、筋肉に張り具合が表現されています。

ちらも踏ん張っている左足の様子です。
本物は左足の甲から指先までが欠損しています。
「リアル・金剛力士」ではこの欠損部分を補っています。

 

興福寺型の金剛力士像は、筋肉の付き具合が実際の人体とは異なる上、彩色の剥落状況がそれぞれの部位によって異なることから、再現するのは相当難儀だったと考えられます。
〝デフォルメ有り〟とは謂え、この像を製品化されたことは称賛に値すると感じます。
次は「吽形」を観ていきますね。

 

 

 

 

 

 

 

 

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