持国天(M-ARTS リアル仏像「四天王」 廃盤)

2021(令和3)年末、駆足初詣で大和国に行くことが決定していたので、東大寺ミュージアムに移っている戒壇院・四天王に逢おうと考えていました。そのため、株式会社MORITA様のM-ARTSリアル仏像・四天王を1体ずつ観察した記事をアップしてから大和国に向かう予定だったのです。12月21日に四天王の総括をアップ、連続投稿は考えていませんでしたが出発日までは済ませようと思っていました。しかーし、ちょっと早めに休暇に入ったのですが気持ちが緩んでしまい作業が進まず、大和国遠征にあたっての下調べもほぼしないまま出発となってしまいました。

そんな状態で、以前にも触れましたが降雪・積雪による予定変更もあり、奈良駅前のホテルに宿泊したにもかかわらず東大寺・興福寺に立ち寄ることはありませんでした。その代わりというのは適切ではありませんが、参拝した神社・参詣した寺院は一箇所につき最低1時間以上、楽しくなったら2時間以上掛けちゃいましたからね。

武蔵国に帰還してからは写真の整理、関連書籍による調べ作業、純粋な遊びのネタ・・・と、いろいろと取り組んでいるうちに睦月も終わりが近付いてきました。
ストーリー展開の計画もあるので、速やかにこの四天王は決着したい所存です。

ということで、先ずは東方を守護する「持国天」から観ていきましょう。

モデルとなっているのは大和国東大寺戒壇院の持国天です。
本物よりも顔が面長で、ジャープな顔つきと格好良くデフォルメされているのはイSム持国天にも踏襲されています。

 

全体像はこんな感じです。
本物の画像と並べると相違点が見出せるのでしょうが、こうして単体で見ると〝コレこそ本物〟みたいに思ってしまいます。だって「リアル仏像」ですから。

通常、戒壇院では多宝塔を中心に四天王はそれぞれの方角から内側を向いて立っています。しかも戒壇の上に立っているので、観光客は狭い廻り廊下から見上げることになります。
インテリア仏像としての四天王は、実際の四天王と比べるとスケールは小さくなっていますが、飾る位置を変えたり、普段は見ることができない角度から楽しむことが可能です。
こうして360度、回転させても咎められることはありません。楽しいです。

 

 

顔の表情をアップで観ていきましょう。

戒壇院内多宝塔の南側、増長天と共に持国天は立っています。
四天王のうち、ひとりだけ兜を装着し、口を固く「へ」の字に結んでいます。

 

眼は大きく見開いており、眉間の皺というよりも筋肉の盛り上がりによって忿怒の表情が際立っています。
四天王は瞳に黒い石が嵌入(がんにゅう)されているといわれていますが、学術調査の際に瞳へ光を当てたところ、持国天の瞳は緑色であることが確認されたそうです。
リアル仏像・持国天は瞳を艶有りの黒色で塗られています。

 

中国風の兜を着用していますね。

 

左右から顔・頭部を観ています。
インド由来の唐代甲冑の特色、耳の位置には鳥の羽を象った装飾があり、首周りを布(革?)が覆っています。
頬を痩けさせ、二重顎ではありつつもスッキリした顔つきにされているのがはっきりと判ります。

 

 

中国風の鉄兜、飾り金具や線状の模様、鋲などが実に細やかに表現されています。
頭頂部には装飾の房が備えられています。

 

インド由来の唐代:革製の甲冑を纏っています。
部分甲を幾つも重ね・組み合わせ、結び付けて装備しています。
胸甲(きょうこう)と腹甲(ふくこう)を結び付ける飾り紐の様子が細かく再現されていますね。胸板の厚みから、筋骨隆々感はありませんな。

両腕が動物の口から出ているように見える装飾は獅噛(しかみ)と呼ばれています。

 

左腕の獅噛の様子を3方向から。

 

腕の獅噛を拡大しています。

 

 

次は、右腕の獅噛の様子を3方向から。

 

そして右腕の獅噛を拡大しています。

 

 

 

抜き身の直刀を携えています。本物の写真を参照すると、切先の形状から剣ではなく刀であることが明白です。この像は切先から剣になっていて、ちょっと撓んでいるのが気になります。

 

右手で柄をしっかりと握り締めています。
柄頭には球体で花弁状を象った装飾が被せられ、上古刀に見える倒卵形鐔(とうらんがたつば)が付けられている様です。

 

紐・金具で結び付けられている甲、巻き付けたり重ねたりした甲が帯で縛られ固定されている様子がよく判ります。日本の甲冑とはだいぶ構成が異なっていますね。

 

左手で刀身(剣身)を上から押さえています。
後方からグルッと下半身を護っている2枚の革甲が、前方に合わせ目がきていることで、足の動きに応じて甲が広がりを見せています。
邪鬼を踏んでいる形状にもよるのですが、下半身の革甲の変化のある造形によって柔らかい印象を与えつつ、単なる直立不動とは違い〝踏ん張りながらバランスをとっている〟様子が見事に表現されています。

 

上半身を後方から観ています。
兜で後頭部までが覆われ、後頭部から肩にいたるまでを革布を垂らして護っています。
前方から見るよりも、背中から見た方が腰の括れ(絞り込み)が強いことが判ります。

 

革甲の組み合わせ方、そして結び付け方の様子が判ります。
腰の括れ(絞り込み)を強くすることで、下半身の足の開き具合から安定感を与えます。
総合的なバランス・調和を考慮しながら、各パーツがが造られているのですな。

 

腰の括れ(絞り込み)は平面的ではなく立体的なものとなっており、実際の人体であるかの様なシルエットが描かれています。
捻った帯の腰元に、前方へ垂らした裾を挟み込んでいます。
細く絞られた腰、臀部の緩やかなカーブ、邪鬼を踏む左足の動きに応じた開きを表すライン・・・まるで生きながら立っている姿が見事に表現されています

 

視点を変え、後ろ側から少々見上げる様に観ています。
引き締まった腰の括れ、隠れていますがガッシリとした臀部・大腿部がうかがい知れます。
〝生きている持国天の立ち姿〟ということがお判りいただけると存じます。

 

腰に巻かれている帯の襞(ひだ)・皺(しわ)・捻り(ひねり)、腰から垂らしている布の揺らめき、そして下甲・表甲が共に横に境目が設けられて足の動きに応じて広がりを見せているところが極めて自然なのです。これは、ポリストーンで造られた像なのにですよ。

 

腰に廻している帯、横に垂らしている布が本物の布製に見えてきます。左足で弱の頭を踏み付けています。その動きに応じて革甲ということで柔らかく広がっています。下甲も表甲も下地があり、境目が開き過ぎないようになっていますね。

 

右の斜め後方から観ています。やはり背中から腰にかけて絞り込まれていますね。それでいて臀部への膨らみを描く曲線が自然な流れになっています。

 

右足は軸足としてほぼ真っ直ぐに伸ばされていますので、左側に比べて動きは控えめになっています。

 

四天王のうち、持国天と増長天は、それぞれ片方の足で邪鬼の頭部を荒々しく踏み躙っており、武器を手にして忿怒の表情をしている動的な状態を示しています。
邪鬼の表情から、単に踏まれているのではないですね。確実に〝踏み躙られている〟状態です。

 

邪鬼が苦渋に満ちた顔をしていますが、持国天は力むこと無く、自然な両脚の状態に見えます。

 

左膝から邪鬼の横っ面を踏んでいる足先の様子です。
この足の真っ直ぐな状態が〝華麗〟に見え、美しささえ感じてしまいます。

 

角度を変えながら見ていますが、どこから見ても持国天の足の形状は美しく整えられています。これって本物を製作した仏師たちの複数の観察眼によって計算され尽くした造形なのでしょう。先達の業績とは素晴らしいものですな。

 

斜め左後方から見ても、

 

斜め右前方から見ても、安定感しかありませんね。
脛当、沓の飾り・模様の様子もしっかりと形づくられています。

 

 

踏み躙られている邪鬼。
なかなかガッチリした身体の邪鬼ですが、この体勢・この表情にした仏師のセンス、素晴らしいですね。

 

 

下から見上げると、凄い威圧感・風格が出ていますな。

 

M-ARTSリアル仏像・四天王のうち、持国天の観察はこれにて終了です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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