居合刀紹介 鳳凰頭衛府太刀

此方は「鳳凰頭衛府太刀」(ほうおうかしらえふたち)です。

那須乃木神社の公式認定「乃木大将の儀礼刀」、東郷神社の創建五十周年記念「東郷元帥の指揮刀」を監修された研師の故・山田研山氏の手による商品名「鳳凰の飾剣」で、受注生産だったことから流通数は少数のため、なかなかお目に掛かることは無い様です。

 

鞘を払うと、通常の居合刀よりも若干細身・短めの鎬刀身となっています。
こうした刀身ですが、柄部分の装飾金具により持ってみると重量を感じます。

 

古代朝廷における儀礼祭祀の際、衛府の武官たちが佩用した儀仗用の唐太刀(衛府太刀)の雰囲気を醸し出す、鳳凰頭の柄頭金具です。

 

柄頭として装着されている鳳凰文金具が柄全体の半分を覆っています。
この太刀を佩いた衛府所属の武官たちが整然と立ち並んでいる姿はさぞや壮観だったことでしょう。

 

白鮫皮が巻かれた柄で、親粒が柄の中央部に位置するように巻鮫となっています。
俵鋲(俵金具)が表裏にそれぞれ3つずつ据えられています。

 

柄を上から、差し裏から、下から観た画像です。右端は親粒の拡大画像です。

 

巻鮫の合わせ目は柄の上部、鳳凰文金具と縁金具に挟まれたところで確認できます。
縁金具と鮫皮の合わせ目がちょっとズレていますが、巻鮫は難しいのでこの程度は誤差の範疇です。

 

この衛府太刀の目玉は、この独特な形状をした真鍮地の「分銅鍔」(唐鍔とも)です。
このガッチリとした分銅鍔の全体と柄・鞘に装着されている縁金具には揃いの唐草文様が彫り込まれ、華やかさが演出されています。
分銅鍔は一時期、居合刀(太刀)用に販売されたことがありました。しかしながら鍔だけで10万~15万円の価格がしたため、あまり売れ行きは芳しくなかった様です。この分銅鍔を装備した太刀も極稀に市場に流出するくらいで、世間的には認知度は低かったように感じます。問屋さんの倉庫に在庫があれば特注に組み込んでもらうことはできるのでしょうが、鍔単体の価格としては高額過ぎるので躊躇してしまいます。

 

分銅鍔を真横から観た画像です。
分銅鍔には通常の縁金具は使用できませんので、柄下地・鞘の鯉口を分銅鍔専用の縁金具に合わせて加工(形状調整)をしなければなりません。こうした手間が価格に反映されてしまいます。とは言え〝雅な装い〟はこの分銅鍔ならではのものですから、致し方ありません。

 

いろいろな角度から分銅鍔を観た画像です。やはり分銅鍔は横から観た姿が素敵です。

 

 

鞘から柄を観た画像です。こうして観ると〝華麗な柄〟であることがよく判ります。

 

 

鞘に装着されている足金物(一の足・二の足)の様子です。金具に金具を重ねているところが珍しい模造刀の太刀です。
金具にはそれぞれ分銅鍔・縁金具と揃いの唐草文様が彫り込まれています。

 

ちなみに、鞘の鯉口金具は分銅鍔の形状に合わせて、この様になっています。
彎曲した金具に合わせて鯉口も調整されているのが判ります。

 

太刀緒が巻かれている箇所から鞘尻を観た画像です。

 

鞘は金茶梨子地塗りで、

 

真鍮地に唐草文様を彫り込んだ金具の上に責金物(柏葉)が重ねられ、鞘尻にも合わせた唐草文様入りの金具を石突金物と合体させています。

 

この衛府太刀の鞘は〝金具を重ねる〟という、通常太刀ではおこなわない独特の装いが特徴ですね。

 

 

この画像から、刀身は薄刃であることが判ります。でも手元はズシリと重さを感じるのです。
細身の刀身に、緩やかな刃文です。

 

金色・無地の鎺もこの細身の刀身に合わせて製作された様で、通常よりも小振りの物が装着されています。

 

この模造・衛府太刀を観て〝こんな細身で大丈夫か?〟と心配になってしまいますが、儀礼祭祀の最中、宮中に賊が乱入することはまずありませんし、京内のパトロールで不穏な者共と遭遇しても太刀を抜く前に矢を放つでしょうから、こんな細身でも大丈夫でしょう。また、上級貴族たちが怯える怨霊相手なら、太さは関係ありませんからね。

 

 

 

・・・ということで、この衛府太刀と他の太刀を比較してみました。

上段:今回紹介の「鳳凰頭衛府太刀」
中段:武装商店様企画品「長覆輪太刀 膝丸」(二尺三寸五分)
下段:7/28紹介の「鍛人製金具装備 大型三鈷杵目貫 朱鞘 鵜首太刀」

腰反りが体現されている「膝丸」は通常居合刀よりも若干細身の鎬刀身で〝本物っぽい太刀刀身〟になっています。「膝丸」と比べると「鳳凰頭衛府太刀」は短い刀身であるとともにだいぶ細身の刀身であることが見て取れます。

下段の鵜首太刀と比べると、衛府太刀は一撃で断ち斬られてしまいそうです(私物なのでやりませんよ)。
この三振の比較画像は、上段・中段の太刀が細身で心許ないということを物語るものではなく、衛府太刀や膝丸が〝通常の太刀〟(少々細身)で鵜首太刀が〝常軌を逸している〟豪毅な太刀であるということを感じてもらうものでした。

ちなみに、「鳳凰頭衛府太刀」を佩いている歴史上人物の肖像画としては近世の上層武家の事例が幾つかあったように記憶しています。時間に余裕ができたら、探してみます。

 

 

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