吉祥天 (イSム「掌」 細密現存仕様 200体 数量限定)

先日、発売日に先立って株式会社MORITA様・埼玉ロジスティックセンターにうかがって、「掌」の吉祥天2種類・各1体ずつを連れて帰ってきました。前回は「復元極彩色仕様・限定100体」を観察してみました。今回はその続編で「細密現存仕様・限定200体」のお話です。

TanaCOCOROシリーズ(小さい)からといって侮る事なかれ。
本物は本堂内の厨子に安置されている秘仏で重要文化財に指定されています。
造形バランスもさることながら、衣裳・装飾までもが本物に忠実な再現となっています。

彩色違いなだけで、サイズ・重量は同じ。まさに〝双子の姉妹〟ですな。

因みに本物は顔を正面として見ると、下半身から台座にかけて左側を向いています。つまり、顔が少々右側を向いているということになるのです。この特徴は掌・吉祥天では再現されていませんね。

 

またしても360度、まわってもらいましたよ。

 

参考までに、復元極彩色仕様にも、まわってもらった画像を載せておきます。
並べても、まわしても「瓜二つ」状態です。

 

頭部に戴いた宝冠には、中央に孔雀を・・・と思ったら「鳳凰」を象った飾りが付いています。宝冠に鳳凰を戴いている仏像彫刻はとても珍しく、他に作例が存在しないとのことです(前回と同様、2回目)。

 

因みに「鳳凰」として著名な造形は、

左:宇治平等院の鳳凰、右:鹿苑寺金閣の鳳凰の作例がありますね。
いずれも尾羽が垂れています。

浄瑠璃寺・吉祥天の画像が掲載されている書籍の表紙より、該当する「トリ」の部分を拡大してみました。2枚とも、それぞれ浄瑠璃寺・吉祥天の宝冠上に居る「トリ」の姿で、角度・背景に違いはありますが同じ「トリ」の画像です。

「冠羽」(かんう)が当初は存在したのか、それとも初めから無かったのかは不明です。
尾羽の跳ね上がり、そして広がり具合から「孔雀」に見えるのですが、如何でしょうか?
まぁ、「鳳凰」は想像上の動物(トリ)ですからね。
当方は〝遊び〟でやっておりますので、決して「定説」(通説)を打破しようというような気はありませんよ。

 

頭部の後方には「輪光」(りんこう)が据え付けられています。
宝冠中央には「転法輪」(てんぽうりん)が据えられ、左右にはそれぞれ数種類の花弁、桃の様に見える宝珠が配されています。

三日月眉に切れ長で涼やかな視線を発する眼です。角度が違いますが、本物と見比べてみました。〝切れ長の眼〟が本物と遜色ないでき具合になっていますね。
艶やかな黒髪が、頭頂部で髷が結われており、更に左右に肩まで垂らされています。
肌は白肉色で塗られていますが、細密現存仕様なので退色・擦れ具合をするための〝汚し〟が施されています。

比較してみましたよ。
左:イSム様公式HP/中央:当御所の吉祥天・細密現存仕様/右:本物
まぁ、〝三者三様〟ということで・・・。それぞれ〝持ち味〟がありますからね。
違うと感じても似ていたり、似ていると思っても違っていたり・・・、コレはコレでまた楽しい。

『大吉祥天女念誦法』(だいきちじょうてんにょねんじゅほう)には、「その形像は・・・(中略)・・・身白色にして十五歳の女の如く、種々の天衣を以て微妙荘厳す。」と表記されており、〝色白の15歳の乙女〟の姿であると説かれています。
どの面貌が「十五歳の女」なのか(または近いのか)を観察してみるのも楽しい遊びです。

 

首に掛けられ上半身全体に拡がる「瓔珞」(ようらく)が、金・赤・緑3色を退色させた状態で彩られています。着衣にも見える相性の良い赤と緑の組み合わせが、深味を持たせて塗られていますね。

本物の瓔珞は頭・体幹部の檜材とは別の木材で製作されているそうです。
掌・吉祥天(復元極彩色仕様・細密現存仕様)も、この瓔珞は別材で製作して装着しているそうですよ。

左右の「鰭袖」(ひれそで)が渦を巻くように膨らみをみせ、上衣とその下に重ね着している筒袖の着衣との色の違いを際立たせています。金色は白っぽくなっていますが、赤・緑がおよそ800年経過したかの様な深い色合いで塗られています。これまた凄いことです。

 

左腕は、肘を曲げて掌(てのひら)を肩の位置まで掲げ、中指・薬指を立てながら如意宝珠(にょいほうじゅ)を乗せています。

本物は宝珠、そして宝珠を持つ右手が結構汚れているのが判ります。

宝珠部分を拡大しました。
日本では宝珠が下部を球体に、上部を山なり湾曲させて頂部を先端化させた形にされることが多く見られます。
現存の吉祥天をイメージして〝汚しの塗装〟が施されています。
さすがに800年もかけて自然に形成された汚れ具合を100%忠実に再現は難しいですが、善き感じで〝時間の経過〟が表現されています。
汚しが施されていても〝如意〟と称される如く、意のままに願いが叶うという力を秘めているに違いありません。

 

3枚の衣を重ね着していますが、袖が軽やかに左右へ広がりを見せて、まさに「天衣」(てんね)の優雅・優美さを表現しています。

『大吉祥天女念誦法』に「その形像は・・・(中略)・・・右は与願の印を作す。」とあり、右手は掌(てのひら)を前に向けて下げています。
これは「与願印」(よがんいん)といい、願いを聞き届ける姿勢を表現しています。
「腰紐緒」(こしひもお)が左右へ緩やかに広がり、その下に「蔽膝」(へいしつ)と呼ばれる前掛けがあり、この蔽膝から左右に枝状の「鰭」(ひれ)が風にたなびくかの様に優雅に拡がりを見せています。

本物の、与願印を示す右手の様子です。結構、上に向けられた右前腕部が黒ずんでいます。それに対して右手の掌は白さをキープできていますね。何故、こうなったんでしょうかね。興味があります。

 

下半身は「裳」(も)と呼ばれる、今で言うところの〝巻きスカート〟を着しています。
前出の通り、腰紐緒の拡がりを基準に蔽膝の鰭がそれぞれ左右にたなびきながら拡がっています。
こうした手間を要する装飾を、昔(いにしえ)の職人は木材を使って見事に造り上げています。本物は木で、掌・吉祥天はポリストーンで、柔らかな衣・布の躍動感を表現しています。凄い。

「鰭端」(ひれはし)と呼ばれる裙(すそ)が渦巻状に波打ち、そこから異国情緒溢れる沓のつま先部分(黒い彩色箇所)が顔を出しています。

 

一見、見落としてしまいがちな場所ですが、復元極彩色仕様でも見ることができましたが蓮の葉を重ねた「蓮華座」(れんげざ)が、一枚一枚丁寧に色分けをして塗られています。
価格面(TanaCOCOROシリーズという意味)ということもありますが、こうした細やかさがイSム造形が〝他の追随を許していない〟要因でしょうな。

蓮華座の下の板台座の縁にも、細やかな彫刻が成されています。

 

背面にまわってみましょう。

黒髪には経年によるくすみが塗りで再現されています。芸が細かいですね。
顔の両側へ長く垂れ下げられた髪の毛は、更に引き上げられて結われています。
こうして肩のところは毛先ではなく、丸くまとまった髪の毛の表現になっているのです。

 

後頭部を見てみると、金色の細い「輪光」(りんこう)が首の付け根に装着されています。
肩には、小さなマントの様なスカーフ状の布を掛けています。
模様は、本物の彩色残痕状態が極めて傷んでいるので、簡略化されています。
こうした部分的簡略化は致したかありませんけれども、この画像の様に模様となっている溝に、せめて沿った彩色をしてもらいたいです。他の箇所の造形が素晴らしく丁寧であっても、〝見えないから・・・〟〝目立たない場所だから・・・〟ということが伝わってくる〝雑な筆入れ〟はカンベンしていただきたいものです。

 

背中から腰にかけての部分です。
胸の周りを鮮やかに飾り付けている瓔珞は、首ではなく肩全体で前方の重量を支えつつ、背中の方にも伸びていて、大腿部の横から前方と繋がっている様です。

腰帯の上に見える膨らみや、鰭袖の広がり具合からも吉祥天の膨よかさをうかがい知ることができます。また赤い衣の退色具合が、実際に800年を経過したかの様で素晴らしいですね。
腰帯の配色・造形は、本物と比較するとかなり省略されています。まぁ、TanaCOCOROシリーズですからね(購入した側の見解です)。
ただ復元極彩色仕様でも指摘しましたが、花を表現する模様の塗りが、これまで見てきたイSム像の中では〝雑な塗り〟(帯の白いところに赤色がはみ出している/黄色のところに黒がはみ出している)になっています。もし塗っている側に「TanaCOCOROシリーズだから・・・」という気があるのであれば、考え直していただきたいところですな。

 

臀部から大腿部にかけての様子です。
上衣の裙に当たる箇所の花弁模様も、だいぶ省略されています。
復元極彩色仕様では白く塗られている部分も、退色した設定で黒っぽく塗られています。本物だと黄色系の彩色が施されているのですが、本物コピーを求めている訳ではないので〝善し〟とすることができます。

茶色く塗られた「長袂衣」(ちょうけつえ)にも、細やかですが〝花弁を伴う植物模様〟が施されています。本物と比較してだいぶ簡略化されていますが、TanaCOCOROシリーズとしてはよく再現されていると感じます。

 

前方には腰紐緒・蔽膝の鰭、それに加えて鰭端が派手に波打っていますが、後方も本物に準拠して着衣の躍動感を保ってた表現になっています。

 

 

前回採り上げたイSム様TanaCOCOROシリーズ「吉祥天 復元極彩色仕様」、そして今回採り上げた同「吉祥天 細密現存仕様」の2種は、「浄瑠璃寺×イスム プロジェクト」第一弾ということで2021(令和3)年7月(実際は8月)に数量限定で発売されました。
山城国・浄瑠璃寺様では「勧進」を募っています。
イSム様は、
 「吉祥天」2種(2021年8月発売)
に続き、
 三重塔内に安置された〝東の本尊〟「薬師如来坐像」(2021年12月予定/100体)
 本堂に安置された〝西の本尊〟「阿弥陀如来坐像」(中尊 2022年3月予定/100体)
の製品化が進められ、その販売収益の一部を浄瑠璃寺へ勧進し〝文化継承事業に貢献〟していかれるそうです。

 

時間がかかっても構わないので、浄瑠璃寺様が所蔵する他の仏像群も製品化の対象としていただいたく存じます。
さすがに池は造りませんが、東方薬師瑠璃光浄土と西方阿弥陀浄土にはさまれた「浄瑠璃寺」式の浄土を再現する遊びができることを楽しみにしております。

 

世情が安定したら、年内にでも浄瑠璃寺には訪れたいと考えています。
もしかすると、今年と同じく〝駆足初詣〟になるかもしれませんが、それはそれで楽しみ。
その時は、山門途中の土産物屋で気に入った「吉祥天」を購入しようと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

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